【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー崩落ー15

「ま、いいや……とりあえずさ、せっかく雄介が俺達の為に夕飯作ってくれたんだから行こうぜ」

　和也が裕実に向かってそう言うとソファから立ち上がって雄介が待っているテーブルの方へと向かう。

　いつもは雄介と和也がいると騒がしいっていう位にうるさいのに今日の食卓は何故か静かだ。

　和也の方は普段嘘を吐くようなタイプではない。　そう望の事を話していればいつかボロが出てしまうんではないかと思っているからあまり今日は喋らないようにしているのかもしれない。

　一方、雄介の方は望が食卓に居ないというだけで、いつものように元気がないだけなんだろう。

　裕実は元からそんなに自分から何かを話すタイプではなく、いつもだったら和也と雄介の会話を微笑みながら聞いている感じなのだから裕実から何か話を振る事なんかないからだ。

　だが和也がこの空気に耐えられなくなってしまったのか、それとも嘘を吐いている事に我慢出来なくなってしまったのか大きなため息を吐くと和也は雄介に向かい急に頭を下げて、

「やっぱり、ゴメン！　俺にはこの状況が耐えられねぇわぁ」

　いきなり和也が雄介に向かいそう告げたのだが、雄介からしてみたら何がなんだか分からない状況だ。　そんな和也に目を丸くして和也の事を見つめる雄介。　だが、そんな和也に気付いたのは話を知っている裕実だ。

「和也！　流石にそれはマズいですよー！」
「いいんだ……裕実。　嘘に耐えられなくなった俺が悪いんだからさ。　なんか雄介の顔見てたら我慢出来なくなっちまったしな。　もし、俺が雄介の立場だったら望の事心配するよな？　って思ってな。　こんなにすぐ側にいるのに恋人に会えないのはどんなに寂しいか？　っていうのも分かるしさ。　それに、雄介と望の場合にはそんなに会える時間が少ないのに会えないっていうのは寂しいだろ？」
「でも……」
「いいんだ。　俺と望はただの親友。　だけど、雄介と望は恋人なんだからさ。　それに親友より大事なのは恋人だろ？　それなら、別に俺と望が後で喧嘩になってもいいんだしさ」

　和也は一瞬切なそうな表情をしたのだが、今度は雄介の方に顔を向けると笑顔になって話をしようとした直後、裕実が和也の手を押さえて、裕実が雄介の方に顔を向ける。

「ごめんなさい。　雄介さん。　僕達、嘘吐いてました。　望さん、インフルエンザだったんです。　だから、僕達がここまで送って来たんですけど……それには訳がありまして、インフルエンザだった望さんは雄介さんにそれを移したくなくて、望さんは自ら雄介さんに会わないように帰って来て直ぐに二階にある客間の方に行ったんですよ」

　その裕実の言葉に雄介はひと息吐くと、

「なんや、そういう事やったんか……。　お前等がずっとこそこそしておった理由っていうのはさ。　確かにそれだけ、こそこそしておったら普段あんまり気になんない俺でも気になっておったしな。　ま、望の性格からしたらそうなんやろな？　移したくはないから嘘まで吐いて俺に接触したくはないって思うんやろな？　ほな、そういう事やったら、俺と望は接触せぇへん方がええのか？」