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ー海上ー96

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 それから三十分もした位だろうか? 裕実達は裕二の車で船が出港した港へと到着する。

 すると裕実の瞳に見慣れた人物が飛び込んできたようだ。

「雄介さん!」
「裕実かぁ? やっぱあの船の事故のニュース見たって事か?」
「はい! 病棟にあるテレビでたまたま見たんですけどね」

 裕実は雄介と話をしながら雄介の事を見上げてみると、

「まさか、その格好って……雄介さん達はあの船の方に向かうのですか?」
「ああ、まぁな……転覆事故やったら海保の方なんやと思うねんけど……今回は火災も発生しておるみたいやしな。 せやから、俺等もその現場に行かなきゃいけないやけどな」
「そうだったんですか? じゃあ、望さんと和也の所に行くんですか?」
「ああ、今からな」
「絶対に望さんと和也の事助けて下さいねっ!」
「当たり前やんか……こういう時の為に俺等は毎日のように訓練しとるんやしな……。 よしっ!」

 雄介は裕実と話しながら海の方に向かう準備をしていたのか準備の方を終えると気合いを入れる。

「ほな、行ってくるな……まぁ、確かに和也達の事心配やろうけど、心配せんで待っておってな!」

 そう雄介は裕実の方に笑顔を向けるとヘリコプターへと乗り込んで行ってしまう。



 それから望達が意識を手放してからどれくらい時間が経ったのであろうか。

 太陽が何かに反射してきっと和也の瞳を照らしたらしく和也はゆっくりとなのだが瞳を開けたようだ。

「ここは……!?」

 そう口にし和也は確認するかのように辺りを見渡す。

 そして、やっとの事で半身を起こすと自分の隣に望の姿がある事に気付く。

 和也は望の手首を掴んで生きている事を確認すると望の体を揺すり始める。

「望? 望!」

 和也の声に対して望はゆっくりとだが瞳を開ける。

「……ん? 和也……どうしたんだ?」
「どうしたんだ? じゃねぇよ……って言うけど、俺の方もどうしたんだ? っていう状況なんだけどな」

 望の方も半身を起こすと周りを見渡す。

「ここって、船の中だよなぁ?」
「ああ。 ってか、俺達ってどれだけ意識飛ばしてたんだろうな?」

 和也はいつも仕事でも使っている愛用の腕時計を見ると、さっき爆発事故が起きてからゆうに一時間は超えていたようだ。

「一時間かぁ、相当ダメージがあったって事だよな? 後は日頃の疲れもあったのかな? ま、ちょっと腕は痛いんだけどさ、まぁ、後は平気みたいだしよ」
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