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ー海上ー57

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「だから……お前の方が言葉巧みというのか、俺はお前に勝てねぇの」
「そうなんですか!? 和也にしては意外だなぁ、他の人の人なら和也の言葉に負け無しって感じですからねぇ」
「まぁ、裕実以外には負ける気がしねぇよ」

 そう和也と裕実が会話を盛り上げている中、望の方は一人黙々とご飯を食べていた。

「望さん。 どうしたんですか?    その……やっぱり……雄介さんより僕達では役不足ですかね?」
「あ、いや、そんなことはねぇよ。 お前達が居てくれてるだけで有難いと思ってるからさ」

 そう望は隣に座っている裕実に笑顔を向ける。

「本当みたいで良かったですよ」
「今、俺に笑顔を向けながら、本音の方を伺ってたな」
「僕達はそれも仕事ですからね」

 裕実の方は笑顔で返すのだが望はため息を吐く。

「呆れないで下さいよー」
「呆れるに決まってるだろ? プライベートにまで仕事の事、持ち出すなってーの……」
「じゃあ、望、元気出せよ。 裕実は今の本音を聞き出したいだけなんだからさ」
「いやさ、雄介はいつもの事だけど、今日は昔の友達の命日なんだよな。 小学校、いや幼稚園の時から高校までは一緒だった友達のな」
「……へ?    そうだったのか!? そんな話聞いた事ねぇぞ」
「当たり前だ。 今までお前等には言った事がなかったからな」
「命日ってことは、その望さんの友達は死んでしまったっていう事ですか?」

 そう裕実の方はストレートに聞くのだが和也の方は裕実に向かい顔を手を交互に振っている。 多分それは「それは聞いちゃダメだろー」というサインだろう。 だが望の方はそういうのは全然平気なのか口を開くのだ。

「まぁな。 俺が死なせちまったような感じなんだけどよ」

 その望の意外な言葉に目をパチクリとさでていた。

「望さんが!? え? どうしてですか?」
「今はさぁ、医者として、出来るようにはなったんだけど……。 アイツが死んでしまった当時はまだ、俺が研修終わったばっかでさ。 でも、まぁ、アイツがいたから今があるっていうのかな? アイツが居てくれたおかげでやっぱ患者さんの事死なせちゃいけねぇって思って、それなりに勉強してきたんだしな。 確かに今もまだまだだけど。 俺はアイツ以来、自分が担当した患者さんは死なせてねぇよ」
「確かに……」

 そう納得しているのは和也だ。
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