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ー海上ー49

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「あんな部屋見せられたら、脳内ピンク色ーって感じになるしな」

 もうこれ以上、和也と話していても同じ事の繰り返しだと思った望は後部座席の方で腕を組んで何も言わないようにしてしまったようだ。

 それと同時に車のドアを叩く音が聴こえてきて車内にその音が響く。 きっと裕実が来たのであろう。

「和也! ドア開けてくれませんか?」

 そうガラスの向こう側から篭った声で裕実独特の言葉遣いが聴こえてくる。

 和也は裕実の姿を確認すると顔の方は緩みドアの鍵を開けるのだ。

「和也ー!」

 裕実の方はドアが開いた瞬間に和也の首へと腕を回し和也の事を抱き締める。

「おかえり裕実……疲れただろ?」

 和也も裕実に返事するかのように裕実の唇へと唇を重ねる。

 二人共、望がいる存在を忘れているのか、どうやら和也と裕実は完全に二人だけの世界に入ってしまったようだ。

 望はそんな二人の姿にイライラが募ってきたのかムッとしていた顔を更にムッとさせ足までも組んで貧乏揺すりまで始める。

「和也? 今日は望さんの所に行くんですよね? 急にどうしたんですか?」

 まだ裕実には望の存在が見えてないようだ。 いや、きっと裕実には和也の存在しか見えていないのかもしれない。

「あー、いやな……今日は俺等休みだったからさ、望と二人でちょっとだけ山の方にドライブに行ってたんだよ。 で、朝、望の家に迎えに行ったら」

 そこまで言うと和也の方は急にクスクスとしながら言葉の方を止めてしまうのだが裕実の方は完全に和也から視線を逸らして後部座席の方に視線を向けていた。

「もー! もー! 和也さん! 望さんがいるんだったら、先に言っておいて下さいよー! 僕達、望さんの前でめちゃくちゃ恥ずかしい事してたじゃないですかー!」

 裕実の方はそこまで言うと顔を真っ赤にして助手席の方に腰を下ろす。

「あ、そうか……さっき、お前にメールした時……確かに望の家に行くとは言ったけど、望が居るとは言ってなかったんだっけ? それにしても、裕実って本当に顔を真っ赤にする姿可愛いよな? ……って痛ってー!」

 和也が最後まで言葉言わないうちに裕実は和也の耳を引っ張り小さな声で、

「和也! 今の望さんの気持ち分からないんですか!? 僕にベタベタするのは僕的には構わないのですが、今日は望さんには雄介さんがいないんですよっ!」
「……ったく、分かったよ」
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