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ー波乱ー44

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「望ん事嫌いになったんとはちゃうからな。 好きやからこそ、俺が完全に治ってから、望ん事抱きたいって思うとるんやからな」
「ああ……分かってる」

 そう望は暗い口調で言うと、まだ、中途半端に熱い体に服をまとっていくのだ。

「望……?」

 雄介は何かを言おうとしたのが分かったのか望は、

「分かってるからさ」

 とだけ口にしていた。

 だが雄介はその望の態度が気に入らなかったのか、いつもより低いトーンで声を荒らげる雄介。

「何が分かっとんねん! 分かってないやんか! ホンマはやな……俺やって望ん事抱きたいって思うとるんやぞ! せやけど、今は足が思うように動かんし、望の事気持ちよくさせて上げるって事もできへんし……そのもどかしい気持ち分かってるくれへんのかな?  さっき、望に求められた時やって、俺の方はどんだけ嬉しかったっていうのも分かってへんやろ!?」

 雄介は今の自分の気持ちを独り言のように望に向かって言い放つと頭から布団の中へと入って行ってしまう。

 望はそんな雄介の言葉にひと息吐くと腕を組んで今雄介が言っていた言葉を考え始める。

 今の望にはもうそんなに雄介に対して恥ずかしい気持ちとかは無くなってきたようだ。 いや寧ろ今の雄介の状況を考えたからこそ望は今の自分を雄介に曝け出し始めたのかもしれない。

 いつもの望だったら、この場で逃げていただろう。 だが今回に関しては、

「雄介……」

 そう言うと望は雄介が潜ってしまった布団の中に入って雄介の顔の近くまで顔を近付ける望。

「俺も雄介の事が好きだ……だから、離れたくねぇんだよ。 だから、俺も雄介が治るまで応援するし、それまで、お預けにするつもりだ。 だからさ、添い寝くらいはさえてくれねぇか?」

 今まで言った事のないような言葉を口にする望。 だからこそ、ちゃんと雄介にはそれが伝わったのかもしれない。

 雄介は真っ暗な布団の中で微笑み望の頰をそっと優しく撫でるのだ。

 その雄介の行動にくすぐったさを感じたまま望はまるで猫のように雄介の手へと擦り寄る。

「雄介……頑張って早くよくなってくれよ」
「大丈夫やって、望の為に早く良くなるし」
「ああ、そうだな」

 望はそう言うと雄介の後頭部に手を添えて雄介の温かい唇へと唇を重ねるのだ。
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