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ー波乱ー10

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「だから、これから見付ければいいんじゃねぇのか?」

 和也の方は「んー」と唸りながら頭を抱えてしまっている。

 フッと気付くと望も和也もいつのまにか食堂の方に辿り着いてしまっていた。

 望は一応、後ろに付いて来ていた颯斗に声を掛ける。

「お昼はここで食べるんですよ」
「ここで、ですか」

 そう颯斗が確かめるかのように答えた後に、どうやら裕実が後ろから来たようだ。

 颯斗も後ろから誰か来ている気配に気付いたのであろうか。 後ろを振り向くと、

「君が本宮さんか」

 と言う颯斗の言葉に和也、望、裕実の三人は颯斗の事を目を丸くしながら見上げる。

 だってそうだろう。 和也と望に関しては前に颯斗が入院していた時の患者さんであってスーパーで会っている人物なのだから、和也と望の名前は分かったとしてもまさか裕実の事まで知っているとは思っていなかったからだ。

 そう驚いた表情で望達が颯斗の事を見上げていると颯斗は完全に裕実の方に体を向けて、

「本宮さん……今日からこの病院で働く事になった新城颯斗です。 これから、宜しくお願いしますね」

 と颯斗はそう紳士的に裕実の話掛け右手まで差し出している。

 だがいきなり声を掛けられた裕実の方はどうしたらいいのかと迷っているようだ。 裕実はフッと和也の方に視線を向けると和也も望も何故だかいい顔はしていないようにも思える。 しかも顔を手を交互に振っていた。

 そんな二人の行動に裕実は颯斗の顔と和也達の顔を交互に見つめるしかなかったようだ。

 それに気付いた颯斗は、

「まぁ、そういう事だというのが分かりましたよ。 別に僕の方は気にしてませんけどね。 貴方方がそういう行動をなさるのでしたら、僕の方にも考えがありますし」
「行動って……ただ、俺達の方は新城先生の行動に警戒してるだけだろ? 和也に気があるって分かってるんだったら尚更なんだからな」
「でも、僕の方は決意させていただきましたから、止めるという事はしませんからね」

 そして颯斗の方は一人食堂の方へと入って行く。

 食堂の前に残された三人。

「あの人って、もしかして、スキーの時に望さんが言っていた方ですか?」
「流石に分かったか」
「望さんや和也さんの行動を見ていれば分かりますよ。 それに、名前の方も頭の隅にありましたからね」
「そっか……」
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