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ー雪山ー204

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「……ったく、俺達が居るじゃねぇか……交代でやって、手を暖炉で暖めたらいいだろ?」
「あ、ああ……そうだったな……ありがとう」

 きっと望には雄介を助けるという事しか頭にはなかったのであろう。 そう雄介しか見ていなかったのだから、きっと和也や裕実の存在を忘れていたのかもしれない。

 やはりこういう時でも望は冷静でいるようで冷静ではないのかもしれない。

 和也と裕実は頭から毛布を被って床へと座る。

「裕実……先に寝ていいぜ。 四時位になったら起こすからさ。 そうそう! さっきな、望と決めたんだ。 交代で寝ようってな」
「分かりました」

 裕実はそう答えると床へと丸くなって目を瞑る。

「望も交代……」
「ああ……」

 望は雄介から離れると暖炉の前で手を暖める。

 和也の方も望がさっきしていたように桶の中に入っている雪の中に手を突っ込むのだ。

「ぅ……くっ! さ、流石に雪の中に手を突っ込むのは冷たいよな……よく、望はこんな中に手を突っ込もうとしたよな?」
「え? あ、ま、まぁな」

 その和也の言葉に顔を赤くする望。 そう『雄介の為だから……』と心の中ではそう思っていたからなのであろう。

 和也は直ぐに雄介の額へと手を乗せ望のように雄介の額を冷やし始める。

「……で、和也……さっきの話は?」

 そう望は二人が寝てしまったという事で思い出したのであろう。 そう聞いてきたのだから。

 和也はその望の言葉にひと息吐くと、

「ああ、それか? アイツはさ……高校の時、一緒のクラスだったんだよ……で、俺はその時にアイツに言い寄られてたって言うのかな? ま、俺の方は当然。 無視決め込んでたんだけどさ。 俺的には、しつこくて嫌だったし、男に興味もなかったしな。 だから、こっちから何かを頼むのは嫌だったっていうのかな? ほら、頼み事したら、お返しみたいなのはないのか? って言われそうじゃん」
「そういう事だったのかー。 何? そいつはお前と一緒で男役の方だったのか?」
「多分、そうなんだろうな……身長も雄介位あるし、見た目的には女役ではなかったからな……俺の方も当然、男役の方がいいわけだから、言い寄られるのマジ嫌だったしさ」
「確かにそうなのかもな」

 望はその和也の話にクスクスとしている。

「なー! だから、俺がアイツの事嫌いだっていう意味が分かっただろ?」
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