【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

綺羅 メキ

文字の大きさ
上 下
593 / 2,140

ー雪山ー22

しおりを挟む
 
 挨拶がわりにルーシーがショットガンをズドンと一発。
 が、これはかわされた。
 銃口が火を噴いたとたんに、奴の体が足下の影に落ちるかのようにして消えた。
 そして付近の木陰から、ふたたび不快なにやけ面が出現。

「いきなりひどいじゃないか。ボクは同じ勇者として」

 そこでまたもやズドンとルーシー。
 まさかの問答無用の二連発に、カズヒコがあわてて影に潜る。
 発射された弾は木の幹をズタボロにして、そのまま倒壊させた。
 今度は渡り廊下の柱の影からカズヒコ出現。
 と、またしてもルーシー発射。もちろんカズヒコ逃げる。大理石っぽい柱が粉砕。
 以降、しばしモグラたたきゲームのような展開が続く。
 影からあらわれるたびに銃撃にさらされる外道勇者。
 途中で弾が切れたショットガンを、無造作に空中に投げ捨てたルーシー。
 すかさず入れ替わりに新たな武器が出現、ひたすら攻撃。
 その際にチラリと見えたのは小さなお人形の手。
 どうやら亜空間の向こうにてルーシーの分体が武器を準備しており、その都度手渡しをしているようだ。これもいちおうは武器召喚?

「ちょ、ちょっと待て。せめて名乗りぐらい」

 聞く耳もたぬとルーシー、ひたすら攻撃。
 カズヒコひたすら回避。
 わたし、その戦闘風景をぼんやり見学。
 ルーシーはショットガンからマグナム、ライフル、マシンガンなど、次々に武器を変更。どうやらいい機会だから、色々と試してみるつもりのようだ。 
 でも、ガトリング砲をぶっ放し始めたあたりで、ちょっと飽きてきた。銃撃ってわりと単調だから。

「はふぅ」

 わたしが大あくびをしたところで、ようやくルーシーの手が止まる。

「使い心地はまずまずですが、まだまだ威力や照準が甘いか。今後はノットガルドの魔導技術も加えての開発が必要のようですね」

 存分に試射を堪能したルーシー、不満気にそんな感想を口にする。
 対して射撃の生きた的にされ続けた勇者カズヒコは汗まみれにて、ぜえぜえと肩で息をしながら、こちらを睨んでいる。
 彼のギフトはテイマー、そしてスキルは影魔法。
 その情報は事前にリリアちゃんからもたらされていたのだが、とりあえず影魔法ってのがどんなものなのかはよくわかった。あとアレもきっちり魔力を消耗するみたいで、連発すると疲れるということも理解した。

「ねえ、ルーシー。影魔法ってのも亜空間の一種なのかな」
「似てますけど別物ですね。亜空間は完全に独立した別個の世界を創り出す能力。それに比べて影魔法はいわば紙の表と裏を行き来する能力にて、地面に穴を掘って潜っているようなもの。はっきりいって亜空間の劣化版も劣化版、完全なバチモンですね」

 影魔法、ルーシー人形に酷評される。
 これにこめかみをブチリとしたのはカズヒコ。
 スキルとはその人が持つ素養や願望の発露。これをバカにされるということは、すなわち当人をバカにするということ。
 怒らない方がどうかしている。
 当然のごとく勇者はキレた。

「このボクをこけにしやがって! もう許さんぞ」

 カズヒコが叫ぶなり、周囲の複数の影からのそりと姿をあらわしたのは、黒い大きなオオカミたち。
 ルーシーによれば、これは草原や森に生息しているガロンというモンスター。
 動きが俊敏にして性格は獰猛。モフモフな見た目に反して毛は剛毛にて体も頑強。並みの剣では刃もろくすっぽ通らない。群れで襲われたら、辺境の町なんてかなり危ないらしい。
 そんなのがゾロゾロと五十頭近くも出現。
 ここにきてカズヒコくんのテイマーとしての能力が、遺憾なく発揮されたようだ。

「いまさらあやまっても遅いからな。こいつらに生きながら喰われるがいい」

 自分の勝ちを確信したカズヒコがいやらしい笑みを浮かべる。ここにきて真正の下種野郎が本性をあらわす。
 そんな奴に向かってわたしは左右の中指をおっ立てての、ダブル・ファック・ユー。
 からの、中指マシンガンの二刀流の乱れ撃ちにて、周囲を席巻。
 自らモンスターを相手に戦うのは初めてだったから、ちょっと心配だったけど、弾丸は問題なくガロンたちの体にズブズブとめり込み、容赦なく内部を蹂躙して、貫通。
 意気揚々と召喚した自慢のモンスターたちを、あっという間に殲滅されて、勇者カズヒコが「へっ?」という間抜けな声をあげた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

処理中です...