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ー空間ー216

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「そんな事言ってる場合じゃねぇって言ってんだろうが! それが元で他の病気になっても知らねぇぞ! 実際にそういう事っていうのはあり得るんだからなっ!」

 雄介は望の言葉にため息を吐くと立ち上がって残りのコーヒーを飲み干し、

「ほなら、望のコーヒーは後からな。 ほな、着替えてくるし」
「ああ……」

 そう言うと雄介は一旦コンロの火を消すのだ。

 そして望は椅子へと寄り掛かり腕を組む。

 雄介リビングを出ようとした直後こうボソボソと口にする望。

「あ……病院までの車に運転、俺がするからさ」

 あまりにも小さくて聞き取りにくかったのだが、しっかりと雄介の耳には届いていたようで雄介の方も小さな声で、

「ああ」

 と答えてから二階へと上がるのだ。

 その間、望はこの静かな空間で雨音を聞きながら雄介が準備できるのを待っていた。

 今日は雨。 今の望の心のようだ。 雨というのは逆に羨ましいと思う。 沢山沢山人目を気にせずに泣けるのだから。 悲しい事があったって男性というのはそうそう泣く事なんて出来ない。 だから望は雨が羨ましいと思ったのであろう。

 望がそうボッーと待っていると数分後には雄介が戻ってくる。

「ほなら、望も着替えて来ぃな」

 雄介は洋服に着替えて来たようで、また、さっきの場所に腰を下ろしていた。

「ああ、そうだな」

 望は雄介の言葉に返事をすると二階にある雄介の部屋へと向かう。

 しかし恋人同士でもある雄介と望。 しかも二人は男同士だ。 それなのにも関わらず二人は一緒に着替えに行かなかったのであろうか。

 多分、雄介は望が誰かと一緒に着替えるのを嫌っているのを知っていたからなのかもしれない。

 雄介はもうそんな望の性格を知っていたからこそ今回は一人で着替えに行ったのであろう。 それに、もう、それだけ望の事を知ってきたのだから望が嫌がる事はしないようにした方がいいと思ったのかもしれない。
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