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ー空間ー210

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 望は寒かったのであろうか?

 昨日、雄介は確か望の体を仰向けの状態で寝かせた筈だったのだが、今は体を丸め雄介の方向に体を向けて足までも曲げて、まるで猫のように寝てしまっているのだから。

 しかし、この三日間、過ぎるのが早かった気がする。

 望と一緒にいられる日は今日で最後だ。

 また明日からは恋人がいない生活が始まる。

 確かに恋人がいない日々を過ごすのは慣れた筈だったが、この三日間で、その気持ちがまた戻って来てしまったようにも思える。

 どうして神様はこの二人にこんなにも試練を与えるのであろうか? 恋人達というのは本当は幸せになって欲しいと思っていると思うのに。

 例え男同士でも恋愛感情はある。 それに男女カップル以上に恋人になる前には沢山の試練があるというのに。

 男女関係でもカップルになる前は悩む所なのかもしれないのだが、同性同士の場合にはそれ以上に悩む事になる。 『相手は本当に同性を好きでいてくれるんであろうか?』『将来の事は?』『相手の本当の気持ちは?』と、悩みは事というのは尽きないのに、どうしてこんなにも試練があるというのであろうか。

 殆どの場合には同性を好きになっても玉砕覚悟で告白するしかない。 それでもカップルになれば相手の事を深く想い、想われ付き合っって行けば行く程、絆というのは深くなるのかもしれない。

 雄介はフッと望の寝顔を見つめる。

 今はすごく可愛い顔して寝ている望。 まさか雄介が本当に好きになった人が恋人になるとは思ってなかった事だ。

 とりあえず今日は望との居れる最後の日。 もう望とゆっくりとしている時間が殆どない状態だ。

 しかも自分達がしている仕事というのは互いに忙しい仕事。 雄介はレスキュー隊員、望は医者と本当に土日や連休なんてない不定期休みの仕事をしている。 ただ二人がしている仕事というのは共に人を助ける仕事でもある。 そこには誇りを持って仕事をしているのだからそれはそれでいいと思っているのであろう。 もし、そう思っていないのであれば仕事なんかとっくに辞めて二人でいる事を望んでいるのだから。

 だからプライベートの方が下になってしまうのは仕方がない。 寧ろ、お互いの仕事の事を分かっているのだから仕事の方が上なのであろう。

 雄介はひと息吐くと一階へと向かうのだ。
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