【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

綺羅 メキ

文字の大きさ
上 下
396 / 2,140

ー空間ー61

しおりを挟む
 
 ギャバナに在籍している十一名の勇者のうちの一人、マコトの用向きは彼の上司である第二王子からの夕食のお誘いであった。
 呼ばれたのはわたし。リリア姫と使節団の一行は日を改めて正式に招待するという。
 こちらとしても、ちょっと言いたいことがあったので応じることにした。
 で、宿舎のみんなにことわりを入れてから、早速ついて行く。
 案内されたのは先日、豪遊したあのレストランだった。
 王子の賓客ということもあってわざわざ出迎えにきたオーナー。
 わたしの顔を見るなりギョとなるも、気にしない。

 レストランでも一番高いグレードの個室へと案内される。
 そこで待っていたのは、黒髪黒目の東洋人っぽい見た目の長身の青年。
 細目にて、にこにこと微笑みが顔に張りついているけれども、その奥はちっとも笑っていない。こちらを値踏みするかのような鋭い視線が潜んでいる。
 彼こそが大国の第二王子ライト・ル・ギャバナ。
 個人的な印象は法の合間をぬって荒稼ぎしているブラック企業の若社長か、マフィアのやり手幹部といったところ。ちょいと堅気には見えない。
 初対面時に、そんな本音がついお口からポロリしてしまったら、マコトが大爆笑。
 そしてライト王子は特に機嫌を損ねるでもなく、「彼にもまえに似たようなことを言われたことがある」とニヤリと笑みを浮かべた。

 この国の第一王子と第二王子は表面上は対立している風を装って、裏ではがっちりと手を組んでいる。
 つまり長男で後継者であるイリウム・ル・ギャバナを、裏で次男のライト王子が支える格好。とどのつまり、ゆくゆくは国の暗部のすべてを握るのが、目の前の王子さま。
 そんな彼がわたしに興味を持ったのは、部下から「なんかヤバイ女がいる」との報告を受けたから。
 リスターナが先に起こした戦争のこともあるし、またぞろ騒動を起こされてはたまらないとの判断から、こちらの動向を見極めようと考えたようだ。
 飛び地にある寂れた小国との戦なんて、大国にとっては得るものが何もないしね。
 で、すぐに自ら出張ってくるあたりが、なんとも恐ろしい。
 城の奥にてふんぞりかえり、余裕ぶって手下にでもまかせてくれていたら、いくらでも誤魔化しようがあるのに。
 間近で接した感覚だと、「こりゃあダメだ」といった印象。
 経験値や生きてきた世界がちがいすぎる。権謀術数が渦まく宮廷の中をすいすい泳いできたライト王子は、いうなれば数多の修羅場をくぐり抜けてきた野生のシャチ。
 対してぬるま湯生活にて、のらりくらりと適当に生きてきたわたしは、安全な水槽にかこわれた養殖のアユ。
 こちとら全身凶器につき、面と向かってのどつき合いならば楽勝だけれども、逆に考えればそれ以外に勝てるところが微塵もない。
 リリアちゃんとかもそうなんだけど、王族は王族であるがゆえに、一般人とはちがう何かを持っている。そしてそいつは即席でどうこうなるようなモノじゃなくって、血と歴史の重みがあわさり醸造される特別なモノ。
 こいつを前にしたら、免疫のない者ならば、すぐさま自主的に頭を下げる。
 本能的に格のちがいを思い知らされるから。
 おそらくはマコトくんも、ライト王子に何かを感じて心酔したからこそ、彼の下で手足となって働いているのだろう。

 勧められるままに席へとつき、しばし静かにコース料理と向き合う。
 ちらりと見れば意外にもマコトはテーブルマナーが完璧であった。
 だらしない髪の毛のくせに生意気な。
 そうこうしているうちに、はやデザートの段階になって、ようやくおしゃべりタイム。
 そこで第一声にてわたしが口にしたのは、あることに関するクレームである。

「おたくの姫ちゃん、いい加減になんとかしてよ。初日の嫌がらせからこっち、どんどんヒドくなっているんだけど」

 姫ちゃんとは、ギャバナの第二姫メローナ・ル・ギャバナのこと。
 なにやら外交デビューを果たしてブイブイいわせている、うちのリリアちゃんに対抗心と嫉妬の炎がメラメラらしくって、いろいろ仕掛けてきているのだ。
 飲み物に下剤投入から始まり、各種地味な嫌がらせが続いたと思ったら、ついにはゴロツキを雇っての乱暴狼藉。
 もっともそのすべてを未然にこっそりと処理してしまっているので、リリアちゃんやリスターナの随行員たちは誰も気づいていないはず。
 飲食に混入されていた毒の類は、グランディアたちがペカーと怪光線を当てて、変質魔法で処理。
 直接的な武力行使については、オービタルやセレニティたちがサクっとプチプチ。
 で、今日は単独で出かけたわたしにお鉢が回ってきたと。
 指折り数えて、受けた嫌がらせを列挙していったら、ライト王子が額に手を当て苦悶の表情。

「まさか……、メローナのやつがそんな愚かな真似をしていようとは。てっきり交渉の席を邪魔するものとばかり考えて、そちらの対応に目がいっていたのだが」

 ライト王子さま、どうやら想定していたより妹の行動の次元が低くて、かえってまたぐらをすり抜けられたようだ。

「女の嫉妬、おっかねー」ビビるばかりのマコトくん。これはこれで役に立ちそうにもない。
 男と女ではその辺の思考回路がちがうから、それもしょうがないか。
 だからとりあえずいちおうの釘を刺すだけに、わたしは留めておく。 

「まぁ、そんなわけで、日に日に行状がちょいと過激になってるの。それであらかじめ断っておくけど、もしもリリアちゃんに直接的な危害が及びそうになったら、こっちも本気を出すから」

 ヤバイ連中を引き連れているヤバイ女が本気をだす。
 これに表情を硬くした王子とマコト。
 とはいえ相手は大国にて、勇者がいっぱい。
 対するこちらは弱小国に女勇者が一人。
 言葉だけだといまいち信憑性に欠けそうなので、ここはもうひと押ししておこうと思う。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

処理中です...