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ー天災ー142

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 そうは答えたものの望の方は動かない。

「ほな、俺、先に風呂に入っておるし、後から来て」

 と気持ち寂しげに言っているようにも思える。

 ライフラインの方も少しずつ復旧してきたおかげで今ではお風呂にまで入れるようにはなったのだが、急に一緒に入るなんてなかなか出来ないもんである。

 雄介がお風呂に行ってしまった後、一人部屋に残される望。

 今まで騒がしかった部屋が嘘のように今は時計の秒針と雄介がシャワーを出したのであろう。 水音だけが聞こえてくる位だ。

 確かにこの部屋にはシャワーはある。 だが浴槽なんかは大人が一人入れるか? 入れないか? 位の狭さしかなかった。

 そこに大人が二人の入れるのであろうか?

 いつもはここでお風呂に入る時には個々で入っていたのだから、そこまでは分からない。

 だが、さっきの雄介の問いに「うん」と言ってしまったのだから今は雄介がいるお風呂に行かなきゃならないだろう。

「ま、雄介とは今日が最後だしな」

 と部屋で一人呟くと望は雄介がいるお風呂場へと向かう。

 ちょっとした脱衣所はあるのだが、そこだってかなり狭い。

 そこでとりあえず望は洋服を脱ぎ始めるのだが、まだ少し恥ずかしいようだ。

 確かに数日前に雄介とは久しぶりに体を重ねた。 だけど、その時は殆ど暗闇で月明かりだけが頼りだった。 しかも、あまり服だって脱いでいなかったようにも思える。

 だけど今回は違う。

 部屋よりは照明は暗いものの見えない程度ではない。 それに服もまったくもって着ていない状態だ。 流石にそれは恥ずかしいと思っているのか望はまた暫く脱衣所で考えてしまっているようだ。

 半透明のガラスの向こう側には雄介がいる。

 すると向こうも望の存在に気付いたのであろうか?

「望……そこに居んの?」

 その雄介言葉にビクリと体を反応させる望。

 人間っていうのは、いきなり思ってもいないところで声を掛けられるとビックリするもんだ。

「あ、ああ、おう……いる」
「ほなら、早く風呂に入って来てな」
「あ、ああ……おう、分かった」

 どうしてこうも雄介は違うのであろうか? 自分の裸を人に見せるっていう事は恥ずかしいと思わないのであろうか? と思う所でもある。

 望は意を決したかのように大きく息を吐くと服を脱ぎ終えドアノブへと手を掛けて中に入ると、

「やっと、来てくれたんか?」

 そう雄介は浴槽の縁に両腕を着いて望の事を見上げる姿が目に入る。
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