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ー天災ー130

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「望はこう、仕事、仕事って言うて、どうにか誤魔化そうとしとるみたいやけど、俺は、俺には……そんなの無理なんやって。 ホンマに俺は望の事好きや……せやから、そうやって仕事って言うて誤魔化されるのはホンマに胸が苦しくなってくるんやけどなぁ」

 望にはきっと雄介の本当に切ない表情が瞳に写っているだろう。

「俺達の事……ホンマに仕事って理由だけで誤魔化されてええんやろうか?」

 雄介は望の手首を離すと柵へと寄り掛かって今度は月の方へと視線を向ける。

 そして項垂れるように腰を落とす雄介。

 そんな雄介に望は小さな声で、

「……俺だって、俺だって……仕事って思いながらじゃねぇと、無理なんだからな」
「……の……ぞむ……?」

 その言葉と同時に雄介の方は望の顔を見上げるのだが、望の方も顔を俯けているのか表情は読み取れない。

 でも今の言葉で十分に望の思いも伝わってきたような気がする。

「だからこう……仕事って思わないと雄介の事が出てきちまうっていうのか」

 そう言うと、今度、望は雄介の方へと顔を向き直し、

「本当に本当に俺はお前の事好きだから……だから、仕事って思わないと耐えられない自分がいるんだよっ! だから、今まで仕事って言って、自分に言い聞かせてきたんだからなっ! だから……だから……普通の会話でも……その……そう言っちまうだけで。 どんなに悩んだって、直ぐに出てくるのはお前の笑顔だ……それだけ、俺はお前の事想ってるって事だろ?」

 そう雄介に向かい真剣な眼差しで言う望。 だが望だってその真剣な中に切ない思いが入っていたのかもしれない。

「……そう……やったんやな……」

 望の想いを聞いて少し雄介は安心したかのような笑みを見せると立ち上がって望の体を抱きしめる。

「俺だって、ある意味、限界や。 望に関して色々とな。 何でやろ? こんなにも望の事愛おしいって思うようになってもうたしな。 確かに最初に望の事を好きになったのは俺なんやけど。 こうも、いや、ホンマに本気で……望の事が好きになってしもうたような気がする。 あ、いや、確かに遊びとかっていう訳やなくてな、本気の本気でこう人を好きになるっていう事が今までになかったような……って感じなんかな? そりゃ、俺には今まで恋愛体験っていうのはあったんやけど」

 そこまで言うと雄介は頬を赤らめさせながら語る。

「だけど、ホンマに本当に本気で好きになったのは望が初めてのような気がするしな」

 今まで雄介の話を聞いていた望だったのだが、笑顔で雄介の事を見上げると、

「俺は、お前が初めてだ。 あ、いや……俺だって、恋愛経験はあったけど、本気で人を好きになったのは初めてっていうのか……それに前の時には女性だったんだから、カウントには入らねぇだろ?」

 その発言に雄介は目をパチクリとさせる。

 何か望は気に触ったのか今度は怒ったような表情を見せると雄介の両頬をつねり出すのだ。

「今はとりあえず、そこじゃねぇ!」
「あー! ちょ、痛いってっ! 分かった……分かった、ちょ、ホンマ痛いねんから、勘弁って」

 そう言われて望だってそこは子供じゃない、だから直ぐに雄介の頬から手を離すのだった。
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