「第2章開始」エレ レジストル〜生き残り少女の冒険録〜

望月かれん

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第2章

第40録 着々と

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 翌朝、朝食をとりながらエリスはロイトにこれからのことを打ち明けた。
 ロイトは口に入れたチーズパイを飲み込むとゆっくりと口を開く。

 「じゃあ、お手伝いさんはおしまいってことだね?」

 「はい。すみません、わがままばかりで……」

 「気にすることじゃないよ。僕から言い出したし。
思ってたよりも早くてビックリしたけど」

 笑顔で答えるロイトを見てエリスは申し訳無さそうに体を丸めた。
その姿勢のままおずおずと口を開く。

 「あの、ドワーフさんからヤケドと切り傷と痛み止めの薬を頼まれたんです。
私が作ると約束してしまって……」

 「そうだったの?持って行ってもらったばかりなのにねぇ。まぁ、多く持っておきたいんだろう。
 とりあえず今ある在庫を持って行ってもらうね。足りない分は後で僕が作って持って行くから」

 「ありがとうございます。すみません、手間をかけさせてしまって。
  本当はロイトさんに習いながら作りたかったんです。この辺りのことを全く知らないので」

 エリスの言葉を聞くと、ロイトは意外そうに眉を上げてからニッコリと笑う。

 「いざこざが終わってエスの身の安全が確保できたらまた来てよ。その時に一緒に作ろう」 

 「はい……!」

 ようやくエリスに笑顔が見えた。
 ロイトから預かった薬を革袋に入れると席を立つが、直後、ベルゼブブが耳打ちした。

 「おい」

 「何?」

 「外にぜ」

 エリスから笑みが消える。誰かは言わなくても充分伝わっていた。
 様子を伺っているのか中に入ろうとはしてこない。以前と同じように店から出たところで声をかけるつもりのようだ。

 「2人?」

 「ああ。本気らしいな」

 「もしかして追手?」

 エリス達の会話を静かに聞いていたロイトが不安そうに尋ねた。

 「はい。外にいるみたいで」

 「そう。魔法のぶつかり合いにはならないと思うけど、このままエスを出す訳にはいかないね。はぁ……」

 ロイトは俯いて茶髪を軽くかき乱すとため息を吐いた。そのまま立ち上がると下を向いたまま話を続ける。

 「調合室の棚を左にずらすと秘密の裏口があるんだ。そこから外に出てドワーフの集落に向かって」

 「ですが、ロイトさんが……」

 「薬の説明して足止めするだけだよ?まさか初対面で横暴な態度とらないでしょ?」

 「片方がとるかもしれません。気が短いみたいですので」

 「そう。まぁ大丈夫でしょ。足止めはあまり期待しないでね」

 どこか棘のある口調のロイトに気圧されながらもエリスは身の回りを整理すると頭を下げる。 
 
 「お、覚えておきます。
 本当にお世話になりました!どうかお気をつけて!」

 「ありがとう。エスもね?」



 裏口から抜け出たエリスは駆け足、ベルゼブブは空中を走ってドワーフの集落へ向かっていた。
ふとエリスが口を開く。

 「ロイトさん、大丈夫よね?」

 「魔法のぶつかり合いにはならねぇって言ってただろ。心配すんじゃねぇよ」

 「う、うん。
 でも何だか怒っていたみたいだから」

 「それはオレ様も思った。アレだろ。魔力の高いヤツ追いかけてる連中に呆れてんじゃねぇのか?」

 「やっぱりロイトさんも追いかけられたことがあるのかしら」

 ロイトは生まれつき魔力の高い家出身だと言っており、
好奇の目で見られるのが嫌で自分に封印魔法もかけている。

 「おそらくな。オレ様の知ったこっちゃねぇけど。
 魔法、かけるか?」

 「かけなくていい」

 「何をそこまで意地張ってやがる。
連中は魔道具使ってるぜ?」

 「え?」

 目を見開いて返したエリスにベルゼブブはわざとらしく盛大なため息を吐いた。
 
 「おかしいと思わなかったのかよ!?なんでお前が薬屋にいるのがバレたと思ってんだ。
人間は魔力感知できねぇんだから魔道具使った以外に考えられねぇだろ!?鈍すぎるぞ、お前!!」

 「ご、ごめんなさい。でも封印魔法はかけない」

 「オレ様の話聞いてたか!?」

 少なくとも封印魔法をかければ魔道具の感知からは逃れられる。
しかしそれすらエリスは拒否しているのだ。

 「うん。近い内にアレキサンドルとぶつかることはわかっているのだから、
その時に解除の時間なんてとっていられないでしょう?」

 「確かにそうだがよ。5秒あれば終わるぜ」 

 「それでもかけない」

 「はぁ……そうかよ。意地っ張りめ。せいぜいぶつかった時にどう動くか考えておくんだな。
 それと、走るより飛び歩けよ。空中だったら障害物ないぜ。魔力の使用両も少ないからな。
アイツラとぶつかるまでに充分温存できる」

 エリスはベルゼブブの言葉を聞くと立ち止まって目を閉じ、意識を集中させる。
すぐに体が空に浮いたのを確認すると、真剣な顔つきで再び走り始めた。
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