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第2章
第39録 決意
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自分の両手を見つめたまま黙り込んでしまったエリスにベルゼブブは呆れきった表情で口を開く。
「お人好しめ。なら聞き方を変える。お前は戦争を終わらせたいか?」
「終わらせたい……けど……」
「何だよ!?まだ不安なことがあんのか!?」
「両親との約束を破ることになるから……」
「約束?そういや前にチラッと言ってたな。詳しく聞かせろ」
掴みかかりそうになったベルゼブブだが、イカナ村での一新後のエリスとアザゼルの会話を思い出して踏み止まった。
てっきり怒鳴られると思っていたエリスは安心して息を吐くとポツリポツリと話し始める。
「両親と離れることが決まってからいろいろ教えてもらったんだけど、その時に約束をしたの。『困っている人がいたらできるだけ助ける、
騒ぎを起こさない、争いに魔法を使わない』って」
「そういうことかよ。だからお前、やたらと優柔不断だったのか」
「うん……。言ってなくてごめん」
申し訳無さそうに言うエリスをベルゼブブは鼻で笑った。
「ケッ、今更だろ。
で、約束とやらを守るんなら、お前は必然的に戦争に参加できねぇわけだ」
「そうなるけど……勝敗が決まるまで私は追われ続けることになるし」
「破っちまえよ」
「私が破ると思う?」
「お前、本当にめんどくせぇな。約束を破るのは嫌だ。
で、どうせ追われ続けるのも嫌だって言い出すんだろ?」
再び黙り込んでしまったエリスを見て、ベルゼブブは腕を組む。
「図星かよ。他の答えを言えねぇんなら、約束を破るしかねぇだろ。
破っちまえ!」
「………………」
反論すら思い浮かばない様子でエリスはさらに俯く。
するとベルゼブブが追いうちをかけるように顔を近づけた。
「お前にとって生きることと約束を守ること、どっちが大事だ?」
「生きること」
「すぐに答えられるんなら破っちまえ。それに破ったからって怒られるわけじゃねぇんだろ?」
「あ、確かに……」
エリスは知らず知らずのうちに自分の行動に制限をかけてしまっていたことに気づき、ゆっくり顔を上げる。
その目に迷いはなかった。
「エベロスに行く」
「フン、世話の焼ける。
オレ様に何度もため息つかせやがって」
「ごめん……」
「今更だろ」
ベルゼブブはそっけなく言うと、気まずそうに目をそらすエリスを見下ろす。しかしすぐに思い出したように声を漏らすとわずかに目尻を緩めた。
「以前、薬屋が封印魔法かけるとか言ってたが、もしそうするんならオレ様がかけてやる」
「え?」
予想外の提案にエリスは言葉を失うが、ベルゼブブは気にせずに話を続ける。
「薬屋は自分に封印魔法をかけている。お前に同じ魔法をかけるなら1回自分のを解かなきゃかけられねぇはずだ。
今のアイツの魔力は並だからな」
「それとあなたがかけるのと、どう関係があるの?」
「オレ様がかけてやればいつでも解除できる」
エリスはベルゼブブがロイトを気遣っているのではと考えたが、口に出すと怒りを増幅させそうなのて触れないでおくことにした。
「ロイトさんがかけても、あなたが解けるんじゃないの?」
「お前な……」
間髪入れずに尋ねられてベルゼブブがワナワナと肩を震わせる。
「いいか!?他のヤツがかけた魔法を解くにはちょっとしたテクニックが必要なんだ!自分の魔法を解除するようにやってもまず解けねぇ!」
「そうなんだ……」
エリスは自分の魔法は解除したことはあるが、他人のはやったことがなかった。以前、ジョルジュから拘束魔法をかけられたことを思い出して尋ねる。
「じゃあ拘束魔法を解いた時は?」
「ちょっとしたテクニック使ったんだよ!第一、自分の魔力が魔法をかけたヤツより高くないと解けないからな!」
「もし封印魔法かけることになった時はよろしくお願いします……」
また不機嫌になっているベルゼブブを見上げながらエリスは丁寧に頼んだ。
それで少しだけ気を良くしたベルゼブブは大きく鼻で息を吐いてから口を開く。
「あと、1つ引っかかってることがあるんだが」
「何?」
「何でエベロスが今のお前の手配書を持ってるんだ」
「スパイから渡されたとか?」
エリスの意見を聞いてもベルゼブブは眉をひそめたまま表情を変えない。
「爽やかヤロウとクソガキしか知らねぇはずだ。アイツラがわざわざ敵対しているエベロスに教えるはずもねぇし」
「じゃあ誰が……」
「部下1号だろうな」
「え?裏切ったの?」
アザゼルの名前が出ると思っていなかったエリスは少し顔を青くしてベルゼブブに詰め寄った。だが、ベルゼブブは取り乱すことなく話を続ける。
「それはねぇよ。
前にアイツ言ってただろ?不公平は嫌いだって。だからエベロスにも知らせたんだ。
それに悪いことじゃなかっただろ。アイツが手配書
渡してたおかげでお前はエベロスに行くって決意したんだからよ」
「そうね……」
「後で部下1号に会ったら聞いといてやる。
まぁ、お前が聞いてもいいけどな」
「考えておく。もう休むわ」
エリスは安堵して大きく息を吐くと、明日に備えていつも
よりも早めに眠りについた。
「お人好しめ。なら聞き方を変える。お前は戦争を終わらせたいか?」
「終わらせたい……けど……」
「何だよ!?まだ不安なことがあんのか!?」
「両親との約束を破ることになるから……」
「約束?そういや前にチラッと言ってたな。詳しく聞かせろ」
掴みかかりそうになったベルゼブブだが、イカナ村での一新後のエリスとアザゼルの会話を思い出して踏み止まった。
てっきり怒鳴られると思っていたエリスは安心して息を吐くとポツリポツリと話し始める。
「両親と離れることが決まってからいろいろ教えてもらったんだけど、その時に約束をしたの。『困っている人がいたらできるだけ助ける、
騒ぎを起こさない、争いに魔法を使わない』って」
「そういうことかよ。だからお前、やたらと優柔不断だったのか」
「うん……。言ってなくてごめん」
申し訳無さそうに言うエリスをベルゼブブは鼻で笑った。
「ケッ、今更だろ。
で、約束とやらを守るんなら、お前は必然的に戦争に参加できねぇわけだ」
「そうなるけど……勝敗が決まるまで私は追われ続けることになるし」
「破っちまえよ」
「私が破ると思う?」
「お前、本当にめんどくせぇな。約束を破るのは嫌だ。
で、どうせ追われ続けるのも嫌だって言い出すんだろ?」
再び黙り込んでしまったエリスを見て、ベルゼブブは腕を組む。
「図星かよ。他の答えを言えねぇんなら、約束を破るしかねぇだろ。
破っちまえ!」
「………………」
反論すら思い浮かばない様子でエリスはさらに俯く。
するとベルゼブブが追いうちをかけるように顔を近づけた。
「お前にとって生きることと約束を守ること、どっちが大事だ?」
「生きること」
「すぐに答えられるんなら破っちまえ。それに破ったからって怒られるわけじゃねぇんだろ?」
「あ、確かに……」
エリスは知らず知らずのうちに自分の行動に制限をかけてしまっていたことに気づき、ゆっくり顔を上げる。
その目に迷いはなかった。
「エベロスに行く」
「フン、世話の焼ける。
オレ様に何度もため息つかせやがって」
「ごめん……」
「今更だろ」
ベルゼブブはそっけなく言うと、気まずそうに目をそらすエリスを見下ろす。しかしすぐに思い出したように声を漏らすとわずかに目尻を緩めた。
「以前、薬屋が封印魔法かけるとか言ってたが、もしそうするんならオレ様がかけてやる」
「え?」
予想外の提案にエリスは言葉を失うが、ベルゼブブは気にせずに話を続ける。
「薬屋は自分に封印魔法をかけている。お前に同じ魔法をかけるなら1回自分のを解かなきゃかけられねぇはずだ。
今のアイツの魔力は並だからな」
「それとあなたがかけるのと、どう関係があるの?」
「オレ様がかけてやればいつでも解除できる」
エリスはベルゼブブがロイトを気遣っているのではと考えたが、口に出すと怒りを増幅させそうなのて触れないでおくことにした。
「ロイトさんがかけても、あなたが解けるんじゃないの?」
「お前な……」
間髪入れずに尋ねられてベルゼブブがワナワナと肩を震わせる。
「いいか!?他のヤツがかけた魔法を解くにはちょっとしたテクニックが必要なんだ!自分の魔法を解除するようにやってもまず解けねぇ!」
「そうなんだ……」
エリスは自分の魔法は解除したことはあるが、他人のはやったことがなかった。以前、ジョルジュから拘束魔法をかけられたことを思い出して尋ねる。
「じゃあ拘束魔法を解いた時は?」
「ちょっとしたテクニック使ったんだよ!第一、自分の魔力が魔法をかけたヤツより高くないと解けないからな!」
「もし封印魔法かけることになった時はよろしくお願いします……」
また不機嫌になっているベルゼブブを見上げながらエリスは丁寧に頼んだ。
それで少しだけ気を良くしたベルゼブブは大きく鼻で息を吐いてから口を開く。
「あと、1つ引っかかってることがあるんだが」
「何?」
「何でエベロスが今のお前の手配書を持ってるんだ」
「スパイから渡されたとか?」
エリスの意見を聞いてもベルゼブブは眉をひそめたまま表情を変えない。
「爽やかヤロウとクソガキしか知らねぇはずだ。アイツラがわざわざ敵対しているエベロスに教えるはずもねぇし」
「じゃあ誰が……」
「部下1号だろうな」
「え?裏切ったの?」
アザゼルの名前が出ると思っていなかったエリスは少し顔を青くしてベルゼブブに詰め寄った。だが、ベルゼブブは取り乱すことなく話を続ける。
「それはねぇよ。
前にアイツ言ってただろ?不公平は嫌いだって。だからエベロスにも知らせたんだ。
それに悪いことじゃなかっただろ。アイツが手配書
渡してたおかげでお前はエベロスに行くって決意したんだからよ」
「そうね……」
「後で部下1号に会ったら聞いといてやる。
まぁ、お前が聞いてもいいけどな」
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