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第3章

裏に引きこもる

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 王座の間は俺と魔王の2人だけになり、静まり返る。
外からかすかに交戦の音が聞こえる程度だ。
 魔王は俺の正面に立つと見下ろしてくるが、不思議なことに威圧や恐怖は感じなかった。

 「どちらにもつかないと言っていたな?
テナシテの所に行け」

 「テナシテさんの所にですか?」

 てっきり1人でやり過ごすことになると思っていたので、ビックリして魔王の言葉を繰り返す。
すると今までの雰囲気はどこへやら、魔王は赤い目を鋭くすると声を低くして睨んできた。

 「2度も言わせるな。とっとと行け!」

 「へ――ギャアアァーー⁉」

 直後、背中に強い衝撃がはしる。そのまま勢いよく飛ばされ、
座の後ろにあるドアをすり抜けて裏の石畳に叩きつけられた。

 「痛ってぇ……。いつもより強くボコられた。しかも頭じゃなくて背中かよ」

 ボコられた背中をさすりながら起き上がった。まだジンジンと鈍痛がしているし、
叩きつけられた時に四肢を打ちつけたのも地味に痛い。
 
 「でも、頭だったら痛いだけじゃ済まなかったよな。
なら、背中で正解か」

 魔王にも意図があったのだろう。
でなければ、いつも通り頭をボコっていたはずだ。

 「俺を追い出したかったんだよな。参加しないヤツなんて邪魔なだけだし」

 眼前には見慣れた3棟の横並びの建物。王座の間のドアからここまでは歩いて20歩程なのでけっこう飛ばされたようだ。
 ふと、空を見上げる。裏には屋根のような覆うものがないので、丸見えだからだ。
雲一つない青色に赤いワイバーンのようなモンスターが門の方に何体も飛び去っていった。
  
 「あまり見たことないけどドラゴン種だよな?従えてるのか?」 

 例の魔王の言うことしか聞かないモンスターかもしれない。数も多いみたいだし、接戦になりそうだ。
 剣撃や魔法音、入り交じる声がさっきよりも大きくなり近づいてきている。どうやら人間側が優勢らしい。

 「魔族やモンスターの方が数多そうなのに。
あ、でも特に下級魔族は隙の大きい攻撃が多いから期待はできないか」

 前に1度だけ下級魔族の訓練に参加させられたことがあった。
そこで行われた俺とデュークさんの実戦が活かされていなければ、人間側にとっては脅威ではないだろう。 

 「って、ボーッとしている場合じゃないな」

 急ぎ足で真ん中の建物に入る。中はいつもと変わらずひっそりと静まり返っていて、無音だ。
まっすぐテナシテさんの部屋にいこうとして、気になることがてきたので足を止めた。

 「オネットはどうしてるんだ?」

 テナシテさんの部屋へ行くまでに部屋が2つあり、
その1つにオネットが住んでいる。
 さっそくドアを何度かノックしたが反応がない。
ソっと開けてみると、床のあちこちに散らばった手のひらサイズのぬいぐるみたちと
例の何をモチーフにしたのかわからない一際大きいぬいぐるみ。
しかし肝心のオネットがいなかった。

 (参加しているのか?)

 見落としたかもしれないので今度は注意深く見回してみるが、やっぱりいない、

 「戦うのは苦手って言ってたけど、今回のは別なのか?」

 全面戦争なので、もしかしたらオネットの意志で参加したのかもしれない。

 (前の魔王がどうしてたかは知らないけど、今の魔王は個人に口出すことないみたいだからな。
「教会送り」のノルマがあったんなら、なくなって助かってるはずだし)

 答えの確かめようがないのでそう思うことにする。
 モヤモヤしたままテナシテさんの部屋の前に立った。
6回ノックするといつものようにドアが開いたので、そのまま中に入る。

 「お、お邪魔しまーす」

 声かけると本棚と対面していたテナシテさんが振り返り、
影のある笑みをうかべた。

 「お待ちしていました、モトユウさん」
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