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第2章
魔族の種類を知る
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魔王城から南東の岩場に向かっていた。地面にヒビが入っていたり岩石が転がっていたりして足場が悪いことと、
このような場所に来るのは初めてなこともあり慎重に進む。
デュークさんはというと、足場を全く気にせずに遊び半分で片足で飛びながら進んだり、岩石を飛び越えたりしている。
とても楽しそうだ。お出かけ感覚なのかもしれない。
(慣れてる感じがするけど来たことあるのか?)
そう考えながらモヤモヤしていることを尋ねてみる。
「デュークさん、歩きながらでいいので質問が――」
「な~に?」
いきなり立ち止まったかと思うと、1回瞬きした時には俺の真正面に立っていた。
(歩きながらでいいって言ったんだけど⁉そして近ぇ!)
「さ、さっきの少年って危険なんですか?」
いつも通り距離をとりながら言うと、デュークさんは真剣な顔つきになる。
「残念ながらな。一見、真面目で礼儀正しいが上辺だけだ」
「今日初めて会ったんですよね?なんで断定できるんですか?」
「俺の眼が危険判定したから」
デュークさんは自分の右目を指さした。特殊な目――魔眼か真眼でも持っているらしい。
魔眼や真眼と呼ばれる眼はトラップを感知したり、相手の能力を見たりすることのできる便利なものだ。
生まれつき持っている人もいるらしいが極々稀で、魔法で一時的に能力を使用するのが一般的になっている。
ただし、負担が大きいため頻繁には使えないそうだ。
「モトユウちゃん、魔族にも種類があるって聞いたことある?」
「いえ……」
(種類?姿じゃなくて?)
首を傾げてみたもののデュークさんは表情を変えずに話を続ける。
「そりゃそうか。ドーワ族とかエル族みたいに特徴があるわけじゃないし。魔族で一括りにされて終わりだよな」
「は、はぁ……」
「少数だが、魔族にも特殊なヤツらがいる。魔族のなんとか族みたいな感じでな」
(なんとか族って……他に言い方なかったのか?)
でもいきなり言われても頭の中に疑問符がいくつも浮かぶだけなので、
なんとか族でよかったのかもしれない。
「じゃあ少年は……」
「そう。特殊なヤツだ。
暴食族。敵味方関係なく食って強くなる困り者でな、
俺達も手を焼いてる」
(手を焼く?)
「外見じゃわからないから。かと言ってアイツラも賢いから人気のない
場所に誘い込んで捕食する。暴食族に食われると「墓地送り」が効かねぇんだ。それでかなり犠牲が出ていてな。
僅かな対策ではあるが、幹部のみマーさんから魔眼を与えてもらってんの。
だが、魔眼のグレードは低くてな。集団だといるのはわかるんだが特定しづらい」
つまり、内輪揉めの状態。人間との戦いだけでなく内部にも目を向けておかないといけないのなら、
侵略する余裕がないのも頷ける。
「暴食族は魔王に殺されるまでやりたい放題ってことですか?」
「いや、アイツラは「墓地送り」が適用されないからブッタ斬れば死ぬ。
マーさんと俺らで潰して回ってるワケ。でもほとんどは隠れ住んでるからな。
訓練に出てきたときは俺もビックリした」
「デュークさん達が魔眼を持ってることは知ってるんですよね?」
「さあな。訓練にノコノコ出てくるぐらいだから知らないのかもな。
出てきた理由はモトユウちゃんの噂を聞いたからだろう」
唾をのみこむ。この話題になってから語尾が1度も伸びていない。かなり真剣な話だ。
そして今までの話をきくに、少年が指導を頼んだ目的は――
「俺を食うため……」
「ああ。モトユウちゃんの心配通り、何もしなければ食われるぜ」
「明日約束しちゃったんですけど……」
「さすがに初日から食わないとは思いたいが、
こればっかりは俺もわからないな」
「デュークさんにずっと見ててもらうってのは駄目ですか?」
そう言うとデュークさんは珍しく眉を下げると少し唸ってから口を開く。
「俺は大丈夫だが、相手がどう出るか。ずっと見張られっ放しじゃイライラが溜まるだろうな。
いっそのこと明日潰すか?そしたらもう何も心配しなくていいぜ」
「で、でもそんないきなり――」
途中で首に手を当てられた。気絶させるつもりではないようだが、力を入れて皮膚にくい込ませてくる。
「ホント面白いな、モトユウちゃん。アイツに食われてもいいワケ?」
「た、食べられたくないです!」
「なら、とっととケリつけようぜ。明日、頃合いを見て潰すぞ」
(目がマジだ)
困り者なのだから消しておくのは当然なのだろうが、気圧されて何度も頷くことしかできなかった。
デュークさんは俺の首から手を離すといつもの無邪気な笑顔を見せる。
「よぉ~し、じゃあゴーレム探しますかー」
「あのー、ついでに聞いときたいんですけど」
「ン?」
「オネットやフォルスさんも特殊ですよね?」
「ああ」
てっきり、はぐらかされるか脅されるかと思っていたのに
デュークさんはあっさりと肯定した。
「もちろん暴食族じゃないぜ。気になるんなら本人に聞きな。
どちらかが答えると思うからさ」
デュークさんは小さく息をつくと、右手を水平にして額に当てて遠くを見るような仕草をとる。
「それにしてもモンスター出てこないなー?」
「確かにそうですね……」
話し始めてから少しは時間が過ぎているのに、どこの岩場にも生息しているロックスパイダーすら見ていない。
と、いうより岩場に来てからモンスターに遭遇していなかった。
目的のプラティヌゴーレムは擬態しているらしいので動き回っていないだろうが、
この岩場に1種類だけしか生息しているわけではないと思う。
不思議に思いながら進んでいると、前方にてっぺんが尖った岩があり、所々に白い岩が混ざっている。
鉱石とは違うようだ。周りを見ると同じものが10個以上はある。
(少し悪寒がする。もしかしてこれがゴーレム?)
「デュークさん、この岩変じゃないですか?」
「お、やっぱりー?モトユウちゃんもそう思う?」
「はい」
俺の答えを聞くとデュークさんは隣に立って岩をマジマジと見つめる。
違和感があるのは同じようだ。
「じゃあ、叩くッ!」
デュークさんは1度大きく後ろに下がるとダッシュして岩にキックした。
しかし岩は壊れずにデュークさんを跳ね返す。
素早く受け身をとったデュークさんは俺の襟首を掴んで再び後ろに下がった。
「ぐぇッ⁉」
「離れるぞ、モトユウちゃん!」
移動している間にも地面はグラグラと大きく揺れていて、体勢を立て直した時には
教会ほどあるプラティヌゴーレムが俺達を見下ろしていた。
このような場所に来るのは初めてなこともあり慎重に進む。
デュークさんはというと、足場を全く気にせずに遊び半分で片足で飛びながら進んだり、岩石を飛び越えたりしている。
とても楽しそうだ。お出かけ感覚なのかもしれない。
(慣れてる感じがするけど来たことあるのか?)
そう考えながらモヤモヤしていることを尋ねてみる。
「デュークさん、歩きながらでいいので質問が――」
「な~に?」
いきなり立ち止まったかと思うと、1回瞬きした時には俺の真正面に立っていた。
(歩きながらでいいって言ったんだけど⁉そして近ぇ!)
「さ、さっきの少年って危険なんですか?」
いつも通り距離をとりながら言うと、デュークさんは真剣な顔つきになる。
「残念ながらな。一見、真面目で礼儀正しいが上辺だけだ」
「今日初めて会ったんですよね?なんで断定できるんですか?」
「俺の眼が危険判定したから」
デュークさんは自分の右目を指さした。特殊な目――魔眼か真眼でも持っているらしい。
魔眼や真眼と呼ばれる眼はトラップを感知したり、相手の能力を見たりすることのできる便利なものだ。
生まれつき持っている人もいるらしいが極々稀で、魔法で一時的に能力を使用するのが一般的になっている。
ただし、負担が大きいため頻繁には使えないそうだ。
「モトユウちゃん、魔族にも種類があるって聞いたことある?」
「いえ……」
(種類?姿じゃなくて?)
首を傾げてみたもののデュークさんは表情を変えずに話を続ける。
「そりゃそうか。ドーワ族とかエル族みたいに特徴があるわけじゃないし。魔族で一括りにされて終わりだよな」
「は、はぁ……」
「少数だが、魔族にも特殊なヤツらがいる。魔族のなんとか族みたいな感じでな」
(なんとか族って……他に言い方なかったのか?)
でもいきなり言われても頭の中に疑問符がいくつも浮かぶだけなので、
なんとか族でよかったのかもしれない。
「じゃあ少年は……」
「そう。特殊なヤツだ。
暴食族。敵味方関係なく食って強くなる困り者でな、
俺達も手を焼いてる」
(手を焼く?)
「外見じゃわからないから。かと言ってアイツラも賢いから人気のない
場所に誘い込んで捕食する。暴食族に食われると「墓地送り」が効かねぇんだ。それでかなり犠牲が出ていてな。
僅かな対策ではあるが、幹部のみマーさんから魔眼を与えてもらってんの。
だが、魔眼のグレードは低くてな。集団だといるのはわかるんだが特定しづらい」
つまり、内輪揉めの状態。人間との戦いだけでなく内部にも目を向けておかないといけないのなら、
侵略する余裕がないのも頷ける。
「暴食族は魔王に殺されるまでやりたい放題ってことですか?」
「いや、アイツラは「墓地送り」が適用されないからブッタ斬れば死ぬ。
マーさんと俺らで潰して回ってるワケ。でもほとんどは隠れ住んでるからな。
訓練に出てきたときは俺もビックリした」
「デュークさん達が魔眼を持ってることは知ってるんですよね?」
「さあな。訓練にノコノコ出てくるぐらいだから知らないのかもな。
出てきた理由はモトユウちゃんの噂を聞いたからだろう」
唾をのみこむ。この話題になってから語尾が1度も伸びていない。かなり真剣な話だ。
そして今までの話をきくに、少年が指導を頼んだ目的は――
「俺を食うため……」
「ああ。モトユウちゃんの心配通り、何もしなければ食われるぜ」
「明日約束しちゃったんですけど……」
「さすがに初日から食わないとは思いたいが、
こればっかりは俺もわからないな」
「デュークさんにずっと見ててもらうってのは駄目ですか?」
そう言うとデュークさんは珍しく眉を下げると少し唸ってから口を開く。
「俺は大丈夫だが、相手がどう出るか。ずっと見張られっ放しじゃイライラが溜まるだろうな。
いっそのこと明日潰すか?そしたらもう何も心配しなくていいぜ」
「で、でもそんないきなり――」
途中で首に手を当てられた。気絶させるつもりではないようだが、力を入れて皮膚にくい込ませてくる。
「ホント面白いな、モトユウちゃん。アイツに食われてもいいワケ?」
「た、食べられたくないです!」
「なら、とっととケリつけようぜ。明日、頃合いを見て潰すぞ」
(目がマジだ)
困り者なのだから消しておくのは当然なのだろうが、気圧されて何度も頷くことしかできなかった。
デュークさんは俺の首から手を離すといつもの無邪気な笑顔を見せる。
「よぉ~し、じゃあゴーレム探しますかー」
「あのー、ついでに聞いときたいんですけど」
「ン?」
「オネットやフォルスさんも特殊ですよね?」
「ああ」
てっきり、はぐらかされるか脅されるかと思っていたのに
デュークさんはあっさりと肯定した。
「もちろん暴食族じゃないぜ。気になるんなら本人に聞きな。
どちらかが答えると思うからさ」
デュークさんは小さく息をつくと、右手を水平にして額に当てて遠くを見るような仕草をとる。
「それにしてもモンスター出てこないなー?」
「確かにそうですね……」
話し始めてから少しは時間が過ぎているのに、どこの岩場にも生息しているロックスパイダーすら見ていない。
と、いうより岩場に来てからモンスターに遭遇していなかった。
目的のプラティヌゴーレムは擬態しているらしいので動き回っていないだろうが、
この岩場に1種類だけしか生息しているわけではないと思う。
不思議に思いながら進んでいると、前方にてっぺんが尖った岩があり、所々に白い岩が混ざっている。
鉱石とは違うようだ。周りを見ると同じものが10個以上はある。
(少し悪寒がする。もしかしてこれがゴーレム?)
「デュークさん、この岩変じゃないですか?」
「お、やっぱりー?モトユウちゃんもそう思う?」
「はい」
俺の答えを聞くとデュークさんは隣に立って岩をマジマジと見つめる。
違和感があるのは同じようだ。
「じゃあ、叩くッ!」
デュークさんは1度大きく後ろに下がるとダッシュして岩にキックした。
しかし岩は壊れずにデュークさんを跳ね返す。
素早く受け身をとったデュークさんは俺の襟首を掴んで再び後ろに下がった。
「ぐぇッ⁉」
「離れるぞ、モトユウちゃん!」
移動している間にも地面はグラグラと大きく揺れていて、体勢を立て直した時には
教会ほどあるプラティヌゴーレムが俺達を見下ろしていた。
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