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第2章
無力感を覚える
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どこかの町にいた。全体的に白みがかった景色を除けばいたって普通の町で、
広場や露店は人で溢れかえっており、とても賑やかだ。
(でも見覚えがあるような)
人の波に流されないようにしながら散策を始める。
しかしすぐに胸の奥が締めつけられてきた。嫌な感じだ。
(何かおかしい気がする。なんだ?)
警戒しながら進んでいると、あることに気づく。町の人たちは俺が見えていないかのように会話しながら歩いていた。
何度か肩がぶつかりそうになったのに表情さえ変えないのだ。
(もしかして俺は認識されていないのか⁉)
思わず自分の体を見るが透き通ってはいない。地面を踏んでいる感覚もある。さらに近くにあった建物に寄って
壁面に触れてみたが、ゴツゴツとした硬い感触が手に伝わった。
「感覚はあるのに。……す、すみません‼」
まさかと思い大声を出してみたが誰も止まらない、振り返らない。
1人ぐらい反応があるのではないかと期待していたが、
見事に裏切られた。
寒い場所にいるわけではないのに全身が冷たくなってくる。
(何が起こってるんだ?透明化する魔法をかけられた?
それとも薬でも飲まされたのか?)
混乱しながらも考えを張り巡らせた。俺に対してそんなことをしても利益がある人物なんていないだろう。
そのとき、遠くで爆発音がして火柱が上がった。町の入口付近のようだ。
余韻が終わらないうちにまた爆発音が響き、
さっきよりも距離が近く、振動で地面が揺れる。
「敵の襲撃だー‼逃げろー‼」
誰かの一声によって町の人たちは慌てふためきながら奥の方へ走っていく。
俺は急いで道からはずれ、様子をうかがうことにした。
「襲撃……モンスターか?それとも魔族?」
入口にいた人たちが走ってきてだんだん悲鳴も大きくなる。
さらに爆発音の他に金属がぶつかり合うも聞こえ始めた。襲撃者と冒険者が激突したようだ。
しかし疑問が1つ思い浮かぶ。
(モンスターだったら鳴き声なり雄叫びが聞こえるはずだし、
魔族でも何かしら声は出すよな)
聞こえるのは爆発音や町の人の悲鳴だけで、襲撃者らしい声は聞こえてこない。
1人でやっているのならその可能性もあるが、魔法と武器を器用に扱える人は少ない。
(あまりやりたくないけど、直接確かめに行くか)
念のため人にぶつからないように気をつけながら慎重に進んでいくと、
崩れた建物のガレキでおこされた土ボコリに影が3つうつった。
人型であるのは間違いない。
土ボコリが晴れて俺は目を疑った。
「サルド⁉アリーシャ⁉フロー⁉」
(じゃあここは夢の町か!このままだと破壊される!)
どうやら破壊される前の町にいたようだ。
構わず飛び出して3人と対峙する。
(やっぱり目に光がねぇ。それに武器も違ったままだ)
しかし俺に気づいていないのか、ザルドたちは町の人たちに目を向けると飛びかかっていった。
背後で悲鳴と鈍い音が響く。
本来なら助けに行くべきなのだのだろうが、一瞬の出来事に俺は立ち尽くすことしかできなかった。
(い、今、体をすり抜けた?俺は死んでいるのか⁉)
だが、俺の状態は変わっていない。
その間にも町の人たちの悲鳴は止まらず、建物の崩れる音が響く。
「みんな、やめろよ!敵地じゃないんだ!」
せめてもの抵抗として叫んでも効果はなく、3人は町を破壊していく。
(俺の声が届いていない。止められない!)
「やめてくれよ……」
近くにいるザルドの腕を掴もうとしたが、すり抜けた。
俺はただ、町が破壊され人々が惨殺されていく様子を見ていることしかできず、
徐々に視界が真っ白になっていった。
思いきり目を開けると小さいヒビの入った天井が視界に映った。
でもいつもより遠く見える気がするし、背中も痛い。
手元を見て原因がわかった。ベッドが壊れていたのだ。
年期の入った木材が散乱している。
「ついに壊れたのか。まあ、いつこうなっても――」
「起きたか~?モトユウちゃん」
聞き慣れすぎた声の方を向くとデュークさんが壁に寄りかかって俺を見ていた。
「デュークさん⁉って、その肉!」
「ヒハハハッ!1食分もらってるぜ~」
デュークさんはそう言って笑うと肉にかぶりついた。
勝手に肉を食べていることは置いておくとして、聞きたいことがありすぎて混乱してくる。
(えっと、なんでデュークさんがここにいるのかと、
町の襲撃についてと。それから――)
「ところでモトユウちゃん、
今、朝・昼・夜のいつだと思う~?」
「え、朝じゃ……」
いきなりの質問にそう答えようとして窓を見た俺は唖然とする。
真っ暗だったのだ。
(確か訓練は夕方まであって、それからへネラルさんと話して。
ギリギリ夜になるかならないかぐらいだったから……夜中か⁉)
「夜中ですか?」
「惜しいー。正解は夜」
「夜……?」
(そんなに眠ってなかったのか?)
しかしそうだとすれば明らかに日の感覚がおかしい。
いつもザルドたちの夢を見ていたのは夜から朝にかけてだ。
今回に限って夕方から夜という短い区間で見れたとは思えない。
必死に考え込んでいるとデュークさんが俺の前に立つ。
「あのな~、モトユウちゃんは丸1日眠ってたんだよ」
「1日⁉」
「そ、もう気持ちがいいぐらいグッスリとな~。
っても最初に気づいたのはヘネちゃん。
揺すっても起きないからってダッシュで俺のとこに来た」
(ダッシュ⁉あのへネラルさんが⁉)
イメージがわかない状況だけに思わず頬が緩んでしまうが、それどころではない。
軽く頬をつねっている俺に構わずデュークさんは話を続ける。
「で、そっから魔法とか呪いがかけられてないか確認してもらったけど特に異常ナシ。
命に別状もみられないから、起きるまで待っとこうって話になったワケ~」
「な、なるほど。じゃあデュークさんはずっと――」
言いかけて止める。俺の近くにいたということだ。大丈夫だとは思いたいが、疑心は晴れてくれない。
俺の言いたいことに気づいたのか、デュークさんはヘラヘラ笑いながら顔を近づけてくる。
「なんだよ~、俺はずっと壁に寄りかかってたぜ?だからまだな~んもしてない」
「まだってことは何かする気ではあったんですよね⁉」
「ヒハハッ!明日の朝になっても起きなかったら
してたかもなー」
(あ、あぶねぇ!今日のうちに起きてよかった!)
心の中で安心しながらさり気なく距離をとったが、
急に真面目な顔つきになったデュークさんにあっさり詰められる。
「それにしてもどんな夢見てたんだよー、モトユウちゃん。
ずいぶんうなされてたぜ?」
「そんなにですか?」
「おう。苦しそうだったから、いい夢ではないとは思ってるけどなー」
俺の夢のことを知っているのはテナシテさんだけだ。
デュークさんに話しても言いふらさないとは思うが、それに対する少しの不安と、
さらに迷惑をかけるという申し訳無さがある。
(それに話したところで解決するわけでもないし)
黙り込んでしまった俺を見て
デュークさんは少しだけ首を傾げた。
「割りとジョーダンにならない話?」
「いえ。そうでも、ない……」
だんだん語尾が小さくなって最後の方は自分でも聞き取れなかった。
どうにかはぐらかそうと思ったが、これだけ聞いてきてくれているのだから話さないと後味が悪いし、
腹いせに何をされるのかわからない。
(話そう。ついでに俺の考えも伝えとくか)
話を聞き終えたデュークさんは真面目な顔つきのままドアの方へ行こうとする。
「マーさんとこ行ってくるわ」
「そ、そこまでしなくても⁉ただの夢ですし!」
「どう考えても「ただの」じゃないだろ。
それにモトユウちゃんも何かの暗示だと思ってんだよな?
なら、ますますマーさんに言っとかないといけない」
(あ、語尾が伸びなくなった……)
まだ説得をしようと思っていたが諦めた。
機嫌を損ねないように慎重に言葉を選ぶ。
「なんで……」
「マーさんが前に言ってたんだよ。嫌な予感がするってな。
モトユウちゃんの勘も放ってはおけないから、
行ってくる」
「で、でも――」
「あ、そうそう。これがケリ着いたら
木材取りに行こうな~」
今までの真面目さはどこかへ行き、いつもの無邪気な笑みを浮かべると
デュークさんは部屋を出ていってしまった。
広場や露店は人で溢れかえっており、とても賑やかだ。
(でも見覚えがあるような)
人の波に流されないようにしながら散策を始める。
しかしすぐに胸の奥が締めつけられてきた。嫌な感じだ。
(何かおかしい気がする。なんだ?)
警戒しながら進んでいると、あることに気づく。町の人たちは俺が見えていないかのように会話しながら歩いていた。
何度か肩がぶつかりそうになったのに表情さえ変えないのだ。
(もしかして俺は認識されていないのか⁉)
思わず自分の体を見るが透き通ってはいない。地面を踏んでいる感覚もある。さらに近くにあった建物に寄って
壁面に触れてみたが、ゴツゴツとした硬い感触が手に伝わった。
「感覚はあるのに。……す、すみません‼」
まさかと思い大声を出してみたが誰も止まらない、振り返らない。
1人ぐらい反応があるのではないかと期待していたが、
見事に裏切られた。
寒い場所にいるわけではないのに全身が冷たくなってくる。
(何が起こってるんだ?透明化する魔法をかけられた?
それとも薬でも飲まされたのか?)
混乱しながらも考えを張り巡らせた。俺に対してそんなことをしても利益がある人物なんていないだろう。
そのとき、遠くで爆発音がして火柱が上がった。町の入口付近のようだ。
余韻が終わらないうちにまた爆発音が響き、
さっきよりも距離が近く、振動で地面が揺れる。
「敵の襲撃だー‼逃げろー‼」
誰かの一声によって町の人たちは慌てふためきながら奥の方へ走っていく。
俺は急いで道からはずれ、様子をうかがうことにした。
「襲撃……モンスターか?それとも魔族?」
入口にいた人たちが走ってきてだんだん悲鳴も大きくなる。
さらに爆発音の他に金属がぶつかり合うも聞こえ始めた。襲撃者と冒険者が激突したようだ。
しかし疑問が1つ思い浮かぶ。
(モンスターだったら鳴き声なり雄叫びが聞こえるはずだし、
魔族でも何かしら声は出すよな)
聞こえるのは爆発音や町の人の悲鳴だけで、襲撃者らしい声は聞こえてこない。
1人でやっているのならその可能性もあるが、魔法と武器を器用に扱える人は少ない。
(あまりやりたくないけど、直接確かめに行くか)
念のため人にぶつからないように気をつけながら慎重に進んでいくと、
崩れた建物のガレキでおこされた土ボコリに影が3つうつった。
人型であるのは間違いない。
土ボコリが晴れて俺は目を疑った。
「サルド⁉アリーシャ⁉フロー⁉」
(じゃあここは夢の町か!このままだと破壊される!)
どうやら破壊される前の町にいたようだ。
構わず飛び出して3人と対峙する。
(やっぱり目に光がねぇ。それに武器も違ったままだ)
しかし俺に気づいていないのか、ザルドたちは町の人たちに目を向けると飛びかかっていった。
背後で悲鳴と鈍い音が響く。
本来なら助けに行くべきなのだのだろうが、一瞬の出来事に俺は立ち尽くすことしかできなかった。
(い、今、体をすり抜けた?俺は死んでいるのか⁉)
だが、俺の状態は変わっていない。
その間にも町の人たちの悲鳴は止まらず、建物の崩れる音が響く。
「みんな、やめろよ!敵地じゃないんだ!」
せめてもの抵抗として叫んでも効果はなく、3人は町を破壊していく。
(俺の声が届いていない。止められない!)
「やめてくれよ……」
近くにいるザルドの腕を掴もうとしたが、すり抜けた。
俺はただ、町が破壊され人々が惨殺されていく様子を見ていることしかできず、
徐々に視界が真っ白になっていった。
思いきり目を開けると小さいヒビの入った天井が視界に映った。
でもいつもより遠く見える気がするし、背中も痛い。
手元を見て原因がわかった。ベッドが壊れていたのだ。
年期の入った木材が散乱している。
「ついに壊れたのか。まあ、いつこうなっても――」
「起きたか~?モトユウちゃん」
聞き慣れすぎた声の方を向くとデュークさんが壁に寄りかかって俺を見ていた。
「デュークさん⁉って、その肉!」
「ヒハハハッ!1食分もらってるぜ~」
デュークさんはそう言って笑うと肉にかぶりついた。
勝手に肉を食べていることは置いておくとして、聞きたいことがありすぎて混乱してくる。
(えっと、なんでデュークさんがここにいるのかと、
町の襲撃についてと。それから――)
「ところでモトユウちゃん、
今、朝・昼・夜のいつだと思う~?」
「え、朝じゃ……」
いきなりの質問にそう答えようとして窓を見た俺は唖然とする。
真っ暗だったのだ。
(確か訓練は夕方まであって、それからへネラルさんと話して。
ギリギリ夜になるかならないかぐらいだったから……夜中か⁉)
「夜中ですか?」
「惜しいー。正解は夜」
「夜……?」
(そんなに眠ってなかったのか?)
しかしそうだとすれば明らかに日の感覚がおかしい。
いつもザルドたちの夢を見ていたのは夜から朝にかけてだ。
今回に限って夕方から夜という短い区間で見れたとは思えない。
必死に考え込んでいるとデュークさんが俺の前に立つ。
「あのな~、モトユウちゃんは丸1日眠ってたんだよ」
「1日⁉」
「そ、もう気持ちがいいぐらいグッスリとな~。
っても最初に気づいたのはヘネちゃん。
揺すっても起きないからってダッシュで俺のとこに来た」
(ダッシュ⁉あのへネラルさんが⁉)
イメージがわかない状況だけに思わず頬が緩んでしまうが、それどころではない。
軽く頬をつねっている俺に構わずデュークさんは話を続ける。
「で、そっから魔法とか呪いがかけられてないか確認してもらったけど特に異常ナシ。
命に別状もみられないから、起きるまで待っとこうって話になったワケ~」
「な、なるほど。じゃあデュークさんはずっと――」
言いかけて止める。俺の近くにいたということだ。大丈夫だとは思いたいが、疑心は晴れてくれない。
俺の言いたいことに気づいたのか、デュークさんはヘラヘラ笑いながら顔を近づけてくる。
「なんだよ~、俺はずっと壁に寄りかかってたぜ?だからまだな~んもしてない」
「まだってことは何かする気ではあったんですよね⁉」
「ヒハハッ!明日の朝になっても起きなかったら
してたかもなー」
(あ、あぶねぇ!今日のうちに起きてよかった!)
心の中で安心しながらさり気なく距離をとったが、
急に真面目な顔つきになったデュークさんにあっさり詰められる。
「それにしてもどんな夢見てたんだよー、モトユウちゃん。
ずいぶんうなされてたぜ?」
「そんなにですか?」
「おう。苦しそうだったから、いい夢ではないとは思ってるけどなー」
俺の夢のことを知っているのはテナシテさんだけだ。
デュークさんに話しても言いふらさないとは思うが、それに対する少しの不安と、
さらに迷惑をかけるという申し訳無さがある。
(それに話したところで解決するわけでもないし)
黙り込んでしまった俺を見て
デュークさんは少しだけ首を傾げた。
「割りとジョーダンにならない話?」
「いえ。そうでも、ない……」
だんだん語尾が小さくなって最後の方は自分でも聞き取れなかった。
どうにかはぐらかそうと思ったが、これだけ聞いてきてくれているのだから話さないと後味が悪いし、
腹いせに何をされるのかわからない。
(話そう。ついでに俺の考えも伝えとくか)
話を聞き終えたデュークさんは真面目な顔つきのままドアの方へ行こうとする。
「マーさんとこ行ってくるわ」
「そ、そこまでしなくても⁉ただの夢ですし!」
「どう考えても「ただの」じゃないだろ。
それにモトユウちゃんも何かの暗示だと思ってんだよな?
なら、ますますマーさんに言っとかないといけない」
(あ、語尾が伸びなくなった……)
まだ説得をしようと思っていたが諦めた。
機嫌を損ねないように慎重に言葉を選ぶ。
「なんで……」
「マーさんが前に言ってたんだよ。嫌な予感がするってな。
モトユウちゃんの勘も放ってはおけないから、
行ってくる」
「で、でも――」
「あ、そうそう。これがケリ着いたら
木材取りに行こうな~」
今までの真面目さはどこかへ行き、いつもの無邪気な笑みを浮かべると
デュークさんは部屋を出ていってしまった。
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