1 / 73
第1部 魔族配下編 第1章
魔王に屈する
しおりを挟む
絶体絶命の状況だった。
世界平和の為に魔王討伐を目指し遂に対峙したのだが、魔王の圧倒的な力に仲間はみな倒れ、残りは俺だけになってしまった。
魔王は余裕の笑みを浮かべている。
「どうした?勇者よ。まさかこの程度で終わるわけではあるまい?」
(さすがは魔王。強さがケタ違いだ)
城に乗り込んでからここに来るまでに幹部を1人倒していた。手強かったが相手が回復手段を持ってないことが幸いして、
どうにか勝つことができた。
しかし魔王は幹部とは比べ物にならないぐらい強い。
補助魔法で防御力を上げてもらっても中傷を負うため回復が追いつかず、ヒーラーが倒れ、
そこからソーサラーとタンクも倒れた。
「ぐっ……」
齒を噛みしめる事しか出来なかった。
このまま立ち向かっても勝ち目が無いのは明らかだが、死ぬのはどうしても嫌だった。
(仲間には申し訳ないが……ここで死なないようにするには)
そこら辺にいるモンスターなら逃げれるかもしれない。
しかし相手は魔王。俺たち冒険者の最終討伐目標だ。
(逃げれたとしても、俺はただのソードマンだから
魔法を使えない。魔王じゃなくても他のヤツにヤラれる……)
必死に頭を回転させていると魔王が舌打ちをした。
そして俺の眼前に移動し鋭い爪を振り上げる。
「つまらん。終わりにしてやる」
「ま、待て!今から捨て身の技を見せてやる!」
「ほう?」
捨て身の技という言葉に興味を示したようで魔王の動きが止まる。
|(イチかバチか‼)
俺は大きく息を吸い込むと床に平伏した。
「配下にしてください!」
「……………………は?」
魔王の呆れ返った声が響く。誰だって今戦っている相手が「配下にしてくれ」なんて言ったらそうなるだろう。
俺は構わず床に頭を打ちつけた。
「…………それがキサマの捨て身とやらか?」
「お願いします!」
「断る。油断させて我の首を取るつもりであろう?」
「いいえ!そんな事しません!」
「信用ならん。失せよ」
魔王は赤い目をギラリと光らせると再び爪を振り上げる。
俺は震えながら魔王を見た。
「な、何でもします!掃除でも洗濯でも!」
「…………何故そこまで生に執着する?今までこのような状況に陥った勇者を多々見てきたが、
潔く散るか尻尾巻いて帰るかのどちらかだ。
お前のようなヤツは初めてよ」
魔王はそう言いながら腕を下ろした。だが、まだ爪は出したままで鋭い目つきで俺を睨んでいる。
「し、死にたくないんです……」
自分でも呆れているがこれは紛れもない本心だ。
死んでも教会に送り返されて復活するのはわかっている。
それでも死ぬのが怖い。
なら、今まで全滅しなかったのかと言われると違う。
何度かあったが、俺はたいてい2番目に倒れており、
最後まで残ったのは今回が初めてだからだ。
(最後に残るのってこんなにも怖かったのか……)
震えながら次の言葉を待つ。
魔王は呆れたようにため息をつくと口を開いた。
「……よくそれで勇者を名乗っておるな。
いや、元・勇者か」
「え……」
思わず顔を上げると魔王がニヤリと口角を上げる。いつの間にか爪が引っ込んでいた。
「面白い。人間を置いた事は無いからな。キサマの執着心を見せてもらおうか。
ただし、少しでも怪しい動きを見せれば消す!」
「は、はい!ありがとうございます!」
(みんな、すまん……)
こうして俺は魔王の配下としての第2の人生を歩む事になった。
世界平和の為に魔王討伐を目指し遂に対峙したのだが、魔王の圧倒的な力に仲間はみな倒れ、残りは俺だけになってしまった。
魔王は余裕の笑みを浮かべている。
「どうした?勇者よ。まさかこの程度で終わるわけではあるまい?」
(さすがは魔王。強さがケタ違いだ)
城に乗り込んでからここに来るまでに幹部を1人倒していた。手強かったが相手が回復手段を持ってないことが幸いして、
どうにか勝つことができた。
しかし魔王は幹部とは比べ物にならないぐらい強い。
補助魔法で防御力を上げてもらっても中傷を負うため回復が追いつかず、ヒーラーが倒れ、
そこからソーサラーとタンクも倒れた。
「ぐっ……」
齒を噛みしめる事しか出来なかった。
このまま立ち向かっても勝ち目が無いのは明らかだが、死ぬのはどうしても嫌だった。
(仲間には申し訳ないが……ここで死なないようにするには)
そこら辺にいるモンスターなら逃げれるかもしれない。
しかし相手は魔王。俺たち冒険者の最終討伐目標だ。
(逃げれたとしても、俺はただのソードマンだから
魔法を使えない。魔王じゃなくても他のヤツにヤラれる……)
必死に頭を回転させていると魔王が舌打ちをした。
そして俺の眼前に移動し鋭い爪を振り上げる。
「つまらん。終わりにしてやる」
「ま、待て!今から捨て身の技を見せてやる!」
「ほう?」
捨て身の技という言葉に興味を示したようで魔王の動きが止まる。
|(イチかバチか‼)
俺は大きく息を吸い込むと床に平伏した。
「配下にしてください!」
「……………………は?」
魔王の呆れ返った声が響く。誰だって今戦っている相手が「配下にしてくれ」なんて言ったらそうなるだろう。
俺は構わず床に頭を打ちつけた。
「…………それがキサマの捨て身とやらか?」
「お願いします!」
「断る。油断させて我の首を取るつもりであろう?」
「いいえ!そんな事しません!」
「信用ならん。失せよ」
魔王は赤い目をギラリと光らせると再び爪を振り上げる。
俺は震えながら魔王を見た。
「な、何でもします!掃除でも洗濯でも!」
「…………何故そこまで生に執着する?今までこのような状況に陥った勇者を多々見てきたが、
潔く散るか尻尾巻いて帰るかのどちらかだ。
お前のようなヤツは初めてよ」
魔王はそう言いながら腕を下ろした。だが、まだ爪は出したままで鋭い目つきで俺を睨んでいる。
「し、死にたくないんです……」
自分でも呆れているがこれは紛れもない本心だ。
死んでも教会に送り返されて復活するのはわかっている。
それでも死ぬのが怖い。
なら、今まで全滅しなかったのかと言われると違う。
何度かあったが、俺はたいてい2番目に倒れており、
最後まで残ったのは今回が初めてだからだ。
(最後に残るのってこんなにも怖かったのか……)
震えながら次の言葉を待つ。
魔王は呆れたようにため息をつくと口を開いた。
「……よくそれで勇者を名乗っておるな。
いや、元・勇者か」
「え……」
思わず顔を上げると魔王がニヤリと口角を上げる。いつの間にか爪が引っ込んでいた。
「面白い。人間を置いた事は無いからな。キサマの執着心を見せてもらおうか。
ただし、少しでも怪しい動きを見せれば消す!」
「は、はい!ありがとうございます!」
(みんな、すまん……)
こうして俺は魔王の配下としての第2の人生を歩む事になった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!
るっち
ファンタジー
土砂降りの雨のなか、万年Fランクの落ちこぼれ冒険者である俺は、冒険者達にコキ使われた挙句、魔物への囮にされて危うく死に掛けた……しかも、そのことを冒険者ギルドの職員に報告しても鼻で笑われただけだった。終いには恋人であるはずの幼馴染にまで捨てられる始末……悔しくて、悔しくて、悲しくて……そんな時、空から宝石のような何かが脳天を直撃! なんの石かは分からないけど綺麗だから御守りに。そしたら何故かなんでもできる気がしてきた! あとはその石のチカラを使い、今まで俺を見下し蔑んできた奴らをギャフンッと言わせて、落ちこぼれ冒険者から脱却してみせる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる