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番外編
『 』
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花など1輪も咲かない、殺風景なこの場所で、ハラハラと花弁が飛んでは消える。
ワタシは腕の中で崩れていく主人を、ただ見送ることしか出来ない。
きっと何も残らない。
__存在が、無へ還ろうとしている。
(当然、ワタシも例外ではないだろう)
本来宿るはずのないモノに宿ったこの命。
ワタシが消えることは、死とは違う。
だけど
キミにとっては死ぬことより残酷な、
キミが最も恐れたことで、
ワタシが生まれた理由でもある。
白状すると、たった一つだけ約束をしてしまったんだよ。
でも、それすら放棄しようとしてる。
約束も時が経ち過ぎれば「呪い」と一緒だ。
おかげで情は湧くし、優先順位も入れ替わった。
嗚呼、ワタシのご主人……
この『露命』は
いつかの約束も破り、キミの願いも見捨てて、ワタシのエゴを通す。
遠い、遠い、ある昼下がり。
無垢な幼い人間の子供の、ほんのささやかな祈りから、ワタシは生まれた。
実体を持ち初めて目にした光景は、ワタシの小さなご主人が、あの方の傍で安眠に身を委ねていたところ。
あれほど温かく哀しい一時を、ワタシは知らない。
もう一生、戻ることは叶わない時間だが、どうか……キミが一番大切にしたかったモノと。
「憶えていたら、また逢おう」
――こうしてキミがここに居た証は、跡形もなく消失した。
ワタシは腕の中で崩れていく主人を、ただ見送ることしか出来ない。
きっと何も残らない。
__存在が、無へ還ろうとしている。
(当然、ワタシも例外ではないだろう)
本来宿るはずのないモノに宿ったこの命。
ワタシが消えることは、死とは違う。
だけど
キミにとっては死ぬことより残酷な、
キミが最も恐れたことで、
ワタシが生まれた理由でもある。
白状すると、たった一つだけ約束をしてしまったんだよ。
でも、それすら放棄しようとしてる。
約束も時が経ち過ぎれば「呪い」と一緒だ。
おかげで情は湧くし、優先順位も入れ替わった。
嗚呼、ワタシのご主人……
この『露命』は
いつかの約束も破り、キミの願いも見捨てて、ワタシのエゴを通す。
遠い、遠い、ある昼下がり。
無垢な幼い人間の子供の、ほんのささやかな祈りから、ワタシは生まれた。
実体を持ち初めて目にした光景は、ワタシの小さなご主人が、あの方の傍で安眠に身を委ねていたところ。
あれほど温かく哀しい一時を、ワタシは知らない。
もう一生、戻ることは叶わない時間だが、どうか……キミが一番大切にしたかったモノと。
「憶えていたら、また逢おう」
――こうしてキミがここに居た証は、跡形もなく消失した。
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