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二章 栞恩視点
(10)幸せだと、感じてしまった
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「これからも、なんて容易く言わないで……残された方の気持ち考えたことある?」
「僕は……栞恩が本気で拒絶しない限り、急に消えたりしないよ」
「そんなの分からないでしょう? どれだけ善人でも突然死ぬことだってあるの」
「じゃあ賭けてみよう」
「賭け?」
「君の言う『これからも』が何らかの形で果たされなかった時だ。どんな姿になっても会いに行くと約束する。もし破ったら……」
「破ったら?」
「僕を嫌いになっていい」
「……なによ、それ。そんな賭け成立するはずないでしょ」
「それがするんだなぁ。少しは未来に希望、生まれた?」
「バカね……燐灯はいいの? そんな約束を簡単に取り付けて」
「簡単なもんか。一世一代の男気だよ」
私は動揺してしまった。
今まで感じないようにしていたものを、目の前に突きつけられたから。
もうそれを簡単に拒むことは、出来なくなっていた。
それほど彼に情が移ってしまった。
――異変はすぐに訪れた。
足元が急にグラグラと大きく揺れ始め、ハッとしたのだ。
そこで察した。ついに呼び寄せてしまったのか、と。
彼の言葉がそれほどまでに嬉しかったのだと、悲しくも証明されてしまった。
もうこれで死んでも悔いはない、そう心から思った。
だからこの先に何が待ち受けているかなんて、あの瞬間は知る由もなかった。
ただ最後に聞こえたのは、私の名前を必死で呼ぶ大好きな男の声だった。
次に瞳を開けると、見知らぬ天井に視界が支配される。
――そこは音が消えた世界だった。
以降は筆談によって知らされた経緯だ。
まず尋常じゃない音がしたらしい。
硝子が割れる音。誰かの叫び声。ぐしゃりと何かがつぶれる音。
そして静寂が訪れた。
不自然に思ったお隣さんが我が家の様子を見に来た。
そこはまるで地震の被害にでも遭った様な散乱具合で、室内は滅茶苦茶になっていた。
無論その日、あの地域で地震なんて起きてない。
ほとんどの人にとっては、いたって平穏な昼下がりだった。
「僕は……栞恩が本気で拒絶しない限り、急に消えたりしないよ」
「そんなの分からないでしょう? どれだけ善人でも突然死ぬことだってあるの」
「じゃあ賭けてみよう」
「賭け?」
「君の言う『これからも』が何らかの形で果たされなかった時だ。どんな姿になっても会いに行くと約束する。もし破ったら……」
「破ったら?」
「僕を嫌いになっていい」
「……なによ、それ。そんな賭け成立するはずないでしょ」
「それがするんだなぁ。少しは未来に希望、生まれた?」
「バカね……燐灯はいいの? そんな約束を簡単に取り付けて」
「簡単なもんか。一世一代の男気だよ」
私は動揺してしまった。
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もうそれを簡単に拒むことは、出来なくなっていた。
それほど彼に情が移ってしまった。
――異変はすぐに訪れた。
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そこで察した。ついに呼び寄せてしまったのか、と。
彼の言葉がそれほどまでに嬉しかったのだと、悲しくも証明されてしまった。
もうこれで死んでも悔いはない、そう心から思った。
だからこの先に何が待ち受けているかなんて、あの瞬間は知る由もなかった。
ただ最後に聞こえたのは、私の名前を必死で呼ぶ大好きな男の声だった。
次に瞳を開けると、見知らぬ天井に視界が支配される。
――そこは音が消えた世界だった。
以降は筆談によって知らされた経緯だ。
まず尋常じゃない音がしたらしい。
硝子が割れる音。誰かの叫び声。ぐしゃりと何かがつぶれる音。
そして静寂が訪れた。
不自然に思ったお隣さんが我が家の様子を見に来た。
そこはまるで地震の被害にでも遭った様な散乱具合で、室内は滅茶苦茶になっていた。
無論その日、あの地域で地震なんて起きてない。
ほとんどの人にとっては、いたって平穏な昼下がりだった。
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