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53話

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 アイレス商会……リバイスとラッセルが言うには、かなり大規模な魔道具の商会らしい。

 黒い噂が絶えないみたいで、そのアイレス商会が私達トールズ魔道具店を潰そうと動いている。

「どうにかすることは、できないかしら?」

「アイレス商会は巨大な組織だ……俺達が記憶操作の魔道具を作れたのだから、似たような魔道具は作っているはず」

 いきなりそんなことを言い出すラッセルに、私が驚くと。

「トールズ魔道具店は私とラッセルは2人だけだから問題なさそうだけど、それはリスクが高くないかしら?」

 知っている人が多いほど、禁忌がバレる可能性は高くなる。

 それは私に言われるまでもないのか、すぐにラッセルは頷いて。

「そうだけど、俺が作れたのだから作れるのは間違いない……規模が大きくなれば煩わしいのが増えていくし、対処する魔道具は用意しているはず」

 ラッセルは確信している様子だけど、その洗脳の魔道具を知っているのはきっと上層部だけのはず。

「それさえ発見できれば、アイレス商会をどうにかすることはできそうね」

「……それは厳しそうだ。最悪アイレス商会の魔道具なのに、トールズ商会の魔道具だと言われかねない」

 アイレス商会は黒い噂も絶えないけど、それ以上の評価があるらしい。

 明確な証拠が必要だけど、その証拠を発見したとしても同じ商会だから、貶めようとしていると思われる可能性がある。

 そうなると動けない……どうすればいいのか、私は悩んでいると、ラッセルが口を開いて。

「とにかく今は、普通に経営しよう」

「えっ?」

「何年かかるか解らないけど……アイレス商会以上の評価を得る。もしくは……攻めてきたアイレス商会を返り討ちにすればいい」

 確かに、アイレス商会の刺客を捕えてしまえば、魔道具が証拠になるかもしれない。

 クイムが購入したアイレス商会の魔道具は、ただ購入しただけで通る。

 アイレス商会に努めている刺客を捕えて、証拠を押収してギルドか魔法協会に提出する。

 最初は信じてくれないかもしれないけど……何度もやっていれば、流石に動くしかないはず。

「長期戦になりそうだけど……ミレイユはついてきてくれるか?」

 ラッセルが不安げに聞いてくるけど、私は力強く頷いて。

「当然よ。トールズ魔道具の日常が好きだし、誰にもこの生活を脅かされたくないもの!」

 そう決意を口にすると、ラッセルは楽しそうに微笑んでいた。
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