32 / 85
32話
しおりを挟む
トールズ魔道具店が始まって、1カ月が経っていた。
店が開店する前……居間でソファーに座っている私はラッセルと対面している。
ラッセルは紙を取り出して、溜息を吐きながら。
「1ヶ月経って……後半は人が増えてきたけど赤字のままか。大赤字の予定が赤字で済んだだけ、ミレイユは凄いんだけど……」
そう言いながらラッセルが困っている原因は、私が活躍しすぎたことにある。
「店員に金を稼がせてるクズ店主……確かに今月の稼ぎの大半はミレイユだけど、流石に酷いだろ……」
「まあまあ、気にしない方がいいわよ」
「そこは気にしないようにするとしても、一番嫌なのはミレイユ目当てのお客さんが多いことだよ……いや、もうアレは客と呼んでいいのだろうか?」
「買物をしてくれるのだから、お客さんに決まってるじゃない」
「それは、そうだけどさ……」
結構な頻度で私の強さを尋ねてきたり、魔本の使い方を質問していた。
結構な頻度で冒険者にならないか勧誘されているけど、どうやらラッセルとしてはそれが一番不満の様子だ。
「明日は定休日にするらしいけど、どうするの?」
私は話を変えると、ラッセルが頷いて。
「それなんだけど……魔道具を宣伝しながら冒険者のようなことをするのなら、ダンジョンに行った方が効果が高いと思うんだよね」
確かにトールズ魔道具店には、ダンジョン用の魔道具もあるけど。
「……意外ね」
今までは私がモンスターを狩りに行くのを止めようとしていたけど、今回は一緒に行きたそうにしている。
私が驚いていると、ラッセルはグッと右手を握りしめて。
「なにより……俺が活躍している所を誰かが見れば、クズ店主がクズ店主でないと証明できるはず!」
多分、それが一番の目的のような気がする。
そんなに私に養われていると思われるのが、ラッセルにとっては嫌なのだろうか?
「男の矜持ってやつね」
「そ、そうかな……とにかく、明日はダンジョンへ行こう!」
そう言って魔道具店が開き、翌日――私とラッセルはダンジョンに向かおうとしていた。
店が開店する前……居間でソファーに座っている私はラッセルと対面している。
ラッセルは紙を取り出して、溜息を吐きながら。
「1ヶ月経って……後半は人が増えてきたけど赤字のままか。大赤字の予定が赤字で済んだだけ、ミレイユは凄いんだけど……」
そう言いながらラッセルが困っている原因は、私が活躍しすぎたことにある。
「店員に金を稼がせてるクズ店主……確かに今月の稼ぎの大半はミレイユだけど、流石に酷いだろ……」
「まあまあ、気にしない方がいいわよ」
「そこは気にしないようにするとしても、一番嫌なのはミレイユ目当てのお客さんが多いことだよ……いや、もうアレは客と呼んでいいのだろうか?」
「買物をしてくれるのだから、お客さんに決まってるじゃない」
「それは、そうだけどさ……」
結構な頻度で私の強さを尋ねてきたり、魔本の使い方を質問していた。
結構な頻度で冒険者にならないか勧誘されているけど、どうやらラッセルとしてはそれが一番不満の様子だ。
「明日は定休日にするらしいけど、どうするの?」
私は話を変えると、ラッセルが頷いて。
「それなんだけど……魔道具を宣伝しながら冒険者のようなことをするのなら、ダンジョンに行った方が効果が高いと思うんだよね」
確かにトールズ魔道具店には、ダンジョン用の魔道具もあるけど。
「……意外ね」
今までは私がモンスターを狩りに行くのを止めようとしていたけど、今回は一緒に行きたそうにしている。
私が驚いていると、ラッセルはグッと右手を握りしめて。
「なにより……俺が活躍している所を誰かが見れば、クズ店主がクズ店主でないと証明できるはず!」
多分、それが一番の目的のような気がする。
そんなに私に養われていると思われるのが、ラッセルにとっては嫌なのだろうか?
「男の矜持ってやつね」
「そ、そうかな……とにかく、明日はダンジョンへ行こう!」
そう言って魔道具店が開き、翌日――私とラッセルはダンジョンに向かおうとしていた。
12
お気に入りに追加
5,294
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました
榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。
私と旦那様は結婚して4年目になります。
可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。
でも旦那様は.........
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる