上 下
23 / 85

23話

しおりを挟む
 その後、リバイスは楽しそうにしながら、私達に複数の書類を見せて。

「さて――これからは、商売の話をするとしよう」

 書類の目を通すけど、大体船でラッセルから聞いていた通りだ。

 この家の家賃は毎月支払いみたいで、ラッセルと私が持ってきた通貨があれば何も売れなかったとしても、生活しながら半年は持つ。

 どうやらこの金額は相場通りで、リバイスは友人だから安くしているとかではなくて、友人だから色々と手続きをしてくれたらしい。 

 むしろ魔道具の取引は安くするよう言われて、ラッセルも納得している……これがリバイスの目的なのでしょう。

「ラッセルの魔道具作成能力は知っているが……店の経営は腕があったとしても、うまくいかないことが多い」

「もしラッセルの魔道具が売れなくても、私が周辺のモンスターを倒してくるわ」

 リバイスには敬語はいらないと言われたから、私は普通に話している。

 その発言を聞いて、リバイスはラッセルの肩を何度も叩き。

「聞いたか。なんて健気なんだ……お前「俺がミレイユを養う」とか自信ありげに言っていたのに、実際はこうか」

 ラッセル、私が居ないところでそんなことを言っていたようね。

 まさか言われるとは思っていなかったのか、ラッセルは顔を赤くしながらリバイスの手を弾き。

「い、いや! お前がうまくいかないとか言ったせいだよ……」

 ラッセルが呆れていると、リバイスが私の前に立って手を伸ばし。

「都市フーラスは初めてだろ? 君がよければだが、これから私が色々と案内しようではないか」

「え、えっと……」

 これからって、もう夕暮れなんだけど……

「リバイス!」

 そう考えていると、ラッセルがリバイスに叫ぶ。

 伸ばした手を横からラッセルが払って、リバイスは楽し気な表情で。

「冗談……いや、最初はお前をからかいたかっただけだが、冗談だと口にした時は否定したくなった」

「おい」

「これも冗談にしておいてくれ……ミレイユ。もしラッセルが嫌になったら、私の元にいつでも来て欲しい」

「そ、それも冗談だよな……」

「冗談さ」

 ラッセルが唖然としながらも、手をあげてリバイスが爽やかに店から出て行く。

「あれがラッセルの個人的な友人……遠くの私達の国の事情を知っていたり、凄い人のようね」

「公爵家の次男だけど、認めた人には対等で接して欲しいらしい……色んな国を巡っていて、態々俺に会いに来て、話している内に仲良くなっていた」

 話を聞く限りリバイスはフットワークが軽すぎる気がするけど、1人でも問題なく生きていけるだけの魔力を宿していた。

 恐らくリバイスも私の魔力に気付いていたけど、だからこそ認められたのかもしれない。

「もし家賃が払えなくなったら……怖いわね」

「そうだな。その時は俺も一緒にモンスターを狩るよ」

 冒険者にならなくても、モンスターを狩って素材を買取ってもらうことはできる。

 リバイスの発言で成功するか不安になってしまうけど……私とラッセルなら、大丈夫のはずだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結済み】だって私は妻ではなく、母親なのだから

鈴蘭
恋愛
結婚式の翌日、愛する夫からナターシャに告げられたのは、愛人がいて彼女は既に懐妊していると言う事実だった。 子はナターシャが産んだ事にする為、夫の許可が下りるまで、離れから出るなと言われ閉じ込められてしまう。 その離れに、夫は見向きもしないが、愛人は毎日嫌味を言いに来た。 幸せな結婚生活を夢見て嫁いで来た新妻には、あまりにも酷い仕打ちだった。 完結しました。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

処理中です...