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24話

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 私を狙った魚人を倒したのは昨日だから、何もわかっていないはずだ。

 それでもジェイクは伝えておきたいことがあるようで、私達は話を聞く。

「昨日の魚人ビナガの発言ですが、契約魔法に関してはわかっています」

 魚人ビナガは消える前に「魚人の長と契約を結べば助かる」みたいなことを言った気がする。

 そしてジェイクは、契約魔法について話しておきたいようだ。

 お互いが同意の上で契約を結び、基本的に破ることができなくなる魔法らしい。

 契約の際の約束を叶える必要がなくなったり、どちらかが亡くなっていたら破棄される。

 それ以外では絶対の契約となるようだけど、私は聞いたことのない魔法だ。

「扱える人はあまりいないのですが、発言的に魚人の誰かは契約魔法を扱えそうです」

「確かにそうだが、何か問題があるのか?」

「現状の把握をしておきたくなりました……魔物のサハギンが魚人の指示を聞いていたのは、契約を結び人々を襲うようにしたのでしょう」

 人間が魔物を従えることは契約しないと無理みたいで、それは魚人も同じとジェイクは推測している。

 契約魔法を使える人がいたから、サハギンを操り私達を湖に来るよう誘導することができたようだ。

「魔物を従えている理由は納得できたが、問題は魚人のことが何もわからないということだな」

「そうですね……現状は、魚人側の行動を待つしかなさそうです」

 現状について話していると、定休日の料理店の扉を開けて1人の青年が現れる。

 ビガナと同じで四肢にヒレがあり、それ以外は普通の人間にしかみえないけど男の魚人だ。

 私達が警戒していると、魚人は気にせずに話し出す。

「私の名前はルアノだ。今日はここにリリカ様がいる可能性が高くやって来たが、本当だったことに驚いている」

「魚人が何の用だ?」

 そうカムル王子は言うけど、私は動揺してしまう。

 もしかしたら……サハギンを料理したのが、まずかったのかもしれない。

 そんなことを考えてしまうと、魚人ルアノは私達を眺めていた。

「戦意はない。今日の私は連絡役のようなものだ」

「俺達は魚人を消している。仲間を消されて敵意もないというのか?」

「だから長は私を連絡役に選んだのだろう。他の魚人では戦闘になるかもしれないからな」

「その言い方だと、ルアノは他の魚人と違うようですね」

 魚人と会うのは2人目だけど、1人目のビナガとは全然雰囲気が違う。

 やる気に満ちていたビナガと違い、ルアノは気怠そうで敵意がないというのも本当のようだ。

 発言から気になって尋ねたけど、ルアノはゆっくりと手をあげて。

「私は呪いで魚人になった元人間で、自分で言うのもなんだが優秀な冒険者だった」

「カムル殿下、リリカ様。彼の発言は間違いなさそうです」

 今まで無言で話を聞いていたジェイクは、発言から納得できたらしい。

「どうして間違いないと断言できる?」

「行方不明になった冒険者ルアノと見た目、言動が同じです。実力はあるのにやる気があまりなく、普通に報告せず引退したと思っていました」

「仕方ないじゃないか。高ランクの依頼は報酬がよくて、しばらく怠惰に生活できたのだ」

 偶にしか依頼を受けないから、魚人になる呪いを受けて行方不明になっても報告せず引退したと思われていたようだ。

 そして今では魚人を倒した私達に敵意を向けない人材だから、連絡役として使われているらしい。

 呪いで魚人になっていると言ったけど……私の水魔法なら、呪いを解く聖水が作れそうだ。
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