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22話

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 魚人ビナガは魔力に関係なく水魔法を無効化できるようで、水魔法しか使えない私とは相性が最悪だ。

 今はジェイクが前に出て剣を振るいビナガと戦って、実力は互角ぐらい。

 冒険者ギルドで一番強い人と互角なら十分強いけど、その実力では私の水魔法を打ち消すのは不可能だ。

 気になることがあり、隣で隙を窺い魔法を使おうとしているカムルに言う。

「魚人は手を向けたら私の水魔法でも消すようですが、当たったらどうなるか気になります」

「ジェイクは俺が魔法を使うと同時に距離をとることになっているから、そのタイミングで繰り出した方がいい」

「そうですね……どうやら魚人は、湖の近くだとダメージを受けても回復するようです」

 攻撃の機会を待ちながら戦闘を眺めていたけど、地形によりビナガの方が有利だ。

 ダメージを受けても徐々に回復していき、威力の高そうな水魔法の攻撃をしている。

 ジェイクは対応できているけど、このままだとやられそうだ。

「湖が近いと力が増すからジェイクと互角で、魔力と体力が回復していくからビナガの方が有利だな」

「準備ができましたから、カムル様はジェイクを離してください」

「わかった。俺が風魔法を使い攻撃すれば、距離をとってくれるだろう」

 そう言いカムルが風魔法を繰り出し、ジェイクは巻き込まれないようビナガから離れる。

 私は水魔法の槍を大量に飛ばし、操作することでビナガを囲むようにして全方位に迫らせる。

 手を向けて消滅させていくけど数が多く、更に追尾性能を持たせた水の槍も混ぜている。

 性能が落ちることで速度も落ちるから複雑な攻撃となって、ビナガは驚いていた。

「水神の巫女でもおかしいでしょう!? どうしてここまで大量の水の槍を複雑に操作できるのですか!?」

 前世の知識から全方位の攻撃魔法をイメージできたからだけど、言う必要はないでしょう。

 手を向けるより早く水の槍が迫りビナガが取り乱し、直撃したことで体勢を崩す。

 サハギンと同じように水魔法の耐性はあるみたいだけどダメージがあったから、その後は大量の水魔法による攻撃を受けていた。

 倒れて動かなくなったビナガの元に向かうと、私を眺めて話す。 

「ここまでとは……私の負けですが、この程度では私達の長メバト様には敵いません」

「かなり力の差があったと思いますけど、貴方達の長は本当にそこまで強いのですか?」

「リリカ様はただの人間ですが、呪いを受ければ魚人となれます。メバト様に従うと契約を結べば、命までは奪わないでしょう」

 質問に返答せず提案してきたから、別のことを尋ねるとしよう。

「嫌に決まっています。水神の巫女について教えてください」

「仲間になる気がない人に教えるわけがないでしょう」

 ビナガは言いたいことだけ言って消滅したけど、水神の巫女について何もわからなかった。

 いきなり消えたことに驚き、ジェイクが理由を説明してくれる。

「魚人は地上で生きられなくなると消滅するようです。私達が水中で亡くなると消滅しますから、それの魚人版ということでしょう」

 仕組みはダンジョンと同じと話してくれるけど、ダンジョンに行ったことがないからよくわからない。

 適応できない場所だから起こるようで、魚人を倒し湖の問題は解決したはず。

 魚人は消えるけど倒したサハギンは残っているし、見た目は普通の魚とそこまで変わらないから、私は調理したくなっていた。
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