水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓

文字の大きさ
上 下
20 / 32

20話

しおりを挟む
 イリスお母様が繰り出した魔法を全て吹き飛ばし、私は新しい水魔法の使い方を知ることができた。

 これも強い魔力を振り回しているだけな気がしたけど、水魔法を大量に発生させ操作したことに周囲の人達が驚いている。

「ワイバーンに使った水魔法の攻撃よりも、遥かに性能のいい水魔法が使えるようになったわね。今日の目的だったけど、すぐに使えるようになるとは思わなかったわ」

「お母様が全力で魔法攻撃をしてきたからこそです……魔法攻撃を私が防げず直撃していたら、どうなっていたのでしょうか?」

 褒めてくれたけど、本気の魔法攻撃に対して私はお母様に言いたいことがあった。

「急所は外していたし、怪我を治す水があったから大丈夫よ。それにリリカなら水の盾で防御できたから使ったけど、全て吹き飛ばして反撃もできそうな魔法を使ってきたことに驚くしかなかったわ」

「俺もイリス様と同意見だ。目的を果たしたのでしたら、俺の魔法も見てもらえないでしょうか?」

 どうやら私の水魔法を見て満足したお母様はもう戦う気がないから、カムルが戦いたくなったらしい。

「カムル殿下。危険なのでやめた方がいいですよ」

「流石にカムル殿下を、私が魔法で攻撃することはできません。8属性を全て完璧に扱えていますし、何も気にしなくて大丈夫でしょう」

「そうですか……そう言ってもらえると、自信になります」

 今日の予定が早く終わったから、その後は広場で私は新しい水魔法を試していく。

 カムル王子は大量の魔法を複数同時に使えるし、どれも完璧に扱えている。
 
 私は水魔法しか扱えないからこそ、ここまで使いこなせるのかもしれない。

 8属性も使いこなすのはとんでもなく大変そうで、私はカムルを尊敬していた。

   ◇◆◇

 その後は数日が経過し、私は城の部屋でカムルと一緒にジェイクの報告を聞いていた。

 最近は魚の魔物サハギンが王都に向かう個体もいるようで、戦力的に厳しいから私達に協力し欲しいようだ。

 危険だからジェイクは湖周辺の依頼を受ける冒険者を厳選しているけど、人を狙うサハギンは数が多く強いらしい。

 依頼が達成できず犠牲者も出て数も増えているから、これ以上増えて人の元へ向かわないようしたいようだ。

「話を聞くにサハギンの群れは相当強そうだ。国のために俺は行くが、リリカは危険かもしれない」

「私の魔法で無理なら、どうしようもないのではありませんか?」

 自分の力を過信しているとかではなくて、ワイバーン討伐による事実を話す。

 私の次に強いのがジェイク、イリスお母様、カムル王子で、他の人は精鋭だけどワイバーンを倒した人はいなかった。

 それでもワイバーンとの戦いで負傷しなかったから、元婚約者ラルフより間違いなく強いけど、私とはかなり魔法の実力に差がある。

 心配されたことで尋ねると、サハギンとの戦いに連れて行きたくない理由があるらしい。

「サハギンには水魔法の耐性があり、リリカの水魔法が効かないかもしれない」

「そういうことですか。それならむしろ、効かないのか試したいです」

 この世界は2つ以上の属性魔法を扱えるのが基本で、3つ扱えれば優秀、4つ以上から例外的存在となる。

 水魔法しか扱えない私は悪い意味での例外的存在で、普通の魔法士は2つの属性魔法の1つを極めたりしない。

 属性魔法は全て鍛えた方が1つを集中するよりいいとされていることもあるけど、一番の問題は属性魔法には耐性がある魔物がいるということだ。

「ワイバーンは火魔法が効かないようですが、カムル殿下の火魔法は僅かに効いていました」

「あの時は耐性がどれほどのものか、試したくなった……確かにダメージはあったが、あまり効いてなかっただろ」

 だからこそ、水魔法しか使えない私は行くべきではないと考えているらしい。
 
 普通なら無属性魔法で魔力を閃光にして飛ばす攻撃方法があるけど、属性魔法に比べたら威力は格段に落ちてしまう。

 そもそも私は無属性魔法が何も使えないから、もし水魔法が全く効かないのなら攻撃が通じない。

 それでも回復する水や強化する水は作れるから、攻撃がまったく効かなくても役立たずにはならないはずだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

純白の檻からの解放~侯爵令嬢アマンダの白い結婚ざまあ

ゆる
恋愛
王太子エドワードの正妃として迎えられながらも、“白い結婚”として冷遇され続けたアマンダ・ルヴェリエ侯爵令嬢。 名ばかりの王太子妃として扱われた彼女だったが、財務管理の才能を活かし、陰ながら王宮の会計を支えてきた。 しかしある日、エドワードは愛人のセレスティーヌを正妃にするため、アマンダに一方的な離縁を言い渡す。 「君とは何もなかったのだから、問題ないだろう?」 さらに、婚儀の前に彼女を完全に葬るべく、王宮は“横領の罪”をでっち上げ、アマンダを逮捕しようと画策する。 ――ふざけないで。 実家に戻ったアマンダは、密かに経営サロンを立ち上げ、貴族令嬢や官吏たちに財務・経営の知識を伝授し始める。 「王太子妃は捨てられた」? いいえ、捨てられたのは無能な王太子の方でした。 そんな中、隣国ダルディエ公国の公爵代理アレクシス・ヴァンシュタインが現れ、彼女に興味を示す。 「あなたの実力は、王宮よりももっと広い世界で評価されるべきだ――」 彼の支援を受けつつ、アマンダは王宮が隠していた財務不正の証拠を公表し、逆転の一手を打つ! 「ざまあみろ、私を舐めないでちょうだい!」

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」 完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。 私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。 この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。 あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。 できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。 婚約破棄?大歓迎ですわ。 その真実の愛とやらを貫いてくださいね? でも、ガスパル様。 そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ? 果たして本当に幸せになれるのかしら…?? 伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。 学園物を書いた事があまり無いので、 設定が甘い事があるかもしれません…。 ご都合主義とやらでお願いします!!

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

処理中です...