水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います

黒木 楓

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19話

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 数日が経って、まだジェイクから連絡はない。

 屋敷で朝食をとっていると、イリスお母様が私に話す。

「リリカ、今日は城へ行き私と戦いなさい」

「いきなり過ぎませんか? 理由を話してください」

 提案に困惑してしまうと、お母様は説明してくれる。

 ワイバーン討伐の際に私の魔法を見て、今の実力が知りたくなったらしい。

 カムル王子とジェイクが協力した水魔法ということにしたけど、お母様は私の魔法と把握している。

 それでもワイバーンを圧倒したことに驚き、一度戦ってみたくなったようだ。

「城の訓練場を使うし今日は貸し切りにしているわ。私が全力で魔法を繰り出すから、リリカも全力できなさい」

「全力って、防ぎきれなかったら大変ですよ」

「城にはリリカが作った怪我を治す水があるから大丈夫よ。今のリリカがどれだけ強いのか楽しみだわ!」
 
 そう言ってお母様の綺麗な高笑いが部屋に響くけど、お父様は止める気がないらしい。

 拒否権はなさそうで、今までの功績があるから城の訓練場を貸し切ることができたのでしょう。

 それよりカムル王子はお母様が訓練場を貸し切ったことは知っているはずなのに、止めようとしなかったのだろうか?

 イリスお母様と私が戦うつもりと知っていれば止めてくれる気がしたから、カムルは何も知らないのかもしれない。

   ◇◆◇

「リリカとイリス様が戦う? 知っていたら間違いなく止めていたな。というか、今からイリス様を説得しよう」

 城に到着して訓練場に向かい、貸し切りにしているから、城内で私の魔法について知っている人しかこの場にいない。

 広場だけどお母様が土魔法で周辺に土の壁を作り、外から見られないようにしていた。

 これから何が起こるのか説明を聞き止めようとしたカムルに対して、お母様が話す。

「娘がどれだけ成長したのか、私は知りたいだけです」

「それでもイリス様とリリカの力は強すぎます。怪我を治す水があったとしても、危険すぎるでしょう」

「これはリリカのためでもあります。ワイバーンとの戦いでは、ただ強い魔力を振り回しているだけでした」

「それは……そうですね」

 説得していたカムルだけど、お母様の発言を聞き納得している。

 今まで元婚約者ラルフに命じられていたから、前世の知識による水魔法の攻撃を使うことがなかった。

 婚約破棄の後も水魔法で攻撃したのはゴブリンとワイバーンの戦闘ぐらいで、戦い続けてきたお母様としては未熟と判断して心配になったようだ。

 お母様と戦うことで何か変化があるというのなら、私もやる気が出てくる。

「お母様がそう言うのなら、せっかく貸し切りにしたのですから戦うとしましょう」

 そう言ってお互い距離をとり、最初は私が自由に攻撃していいようだ。

 試しに全力で水魔法の槍を飛ばすけど、お母様は魔法による高速移動で地面を滑るように楽々と回避する。

 次に繰り出した追尾する水の攻撃を、お母様は魔法で杖の先端から勢いよく水を飛ばすことで打ち消す。

「ワイバーンとの戦いを見た時に思ったけど、リリカは魔法を発生させる技術は高いのに動かすことがあまり上手くできないようね」

 実際は追尾する水をイメージしていただけだから、魔法で発生させた水を私の意思で動かしていたわけではない。

 そういえば……魔法で水を発生させたり飛ばしたことはあるけど、自由に動かすことはしていなかった。

 ラルフから普通の水魔法だけ使えと言われて、魔法を動かすのは高度と知っていたから目立たないよう今まで使っていない。

 そんなことを考えていると、お母様が水と土と木の魔法による攻撃を繰り出す。

 魔力による土の弾丸に、尖った木の槍、杖の先端がホースであるかのような放水が勢いよく私に迫る。

 放水は杖の先端から発射されているけど、土の弾丸は背後の壁から、木の槍は私の左右から迫っている。

 私を囲むように大量の魔法が飛び、このままだと重傷を負うでしょう。

 お母様の魔法攻撃に対して、私は大量に水の鞭を周囲に発生させる。

 これは触手による攻撃をイメージしたけど、前世で私が知っているファンタジーの水魔法とは関係がない。

 それでも咄嗟に水魔法でイメージすると周囲に発生できた大量の水による鞭が、お母様の魔法攻撃を全て弾き飛ばす。

 危機的状況だったこともありそうだけど、明確なイメージがある物なら、水となるけど私は魔法で作れそうだ。
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