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14話
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ジェイクの頼みを聞くことにして、1週間が経っていた。
準備ができたようで、王都にある料理店に私とカムルが向かっている。
立派な店だけど路地裏にあり、厨房に立っている短い青髪で細身の美青年の隣にジェイクがいた。
「紹介します。私の友人ギエンです」
「ギエンと申します。カムル殿下とリリカ様に会えるとは……本日はよろしくお願いします」
料理人のギエンは頭を下げて感激している様子だけど、王子のカムルはともかく、どうして私を眺めて驚くのだろうか?
伯爵家の令嬢だけど、そこまで活躍していないことになっているはずだ。
「イリス様とか何度か一緒に戦ったことがありますが、とんでもない人でした。リリカ様が特殊な料理を思いついたと聞き、イリス様の娘なら納得できます」
「……お母様って、そこまで得体のしれない存在と思われているのですか」
いきなり普通とは違う料理を教えると言われて、怪しまず嬉しそうにしていたのには理由があったらしい。
ジェイクに伝えていたから必要な物は全て用意できるようで、調味料も豊富だ。
前世は学生の頃に楽しく料理をしていたから、揚げ物のコロッケやドーナツを作っていく。
他にもこの世界にない料理で私が作れそうな料理を作っていき、数日も経つとギエンは私より遥かに美味しく作れるようになっていた。
今日は料理の手際を確認しながら私との差に呆然としてしまい、隣にいたカムルに尋ねたくなってしまう。
「私の料理が下手なのではなく、教えた方々が上手すぎるだけでしょう。そうですよね!」
「そ、そうだな……」
「本心は?」
「ハッキリ言わせてもらうと、感情をぶつけているせいかリリカの調理は雑だ。俺の方が上手くできるだろう」
そう言ってカムルが証明するためかギエンと一緒に料理をはじめて、王子がエプロンを着けるとは想定外だ。
城の時は料理長がいたから止めていたのかもしれないけど、カムルは料理したかったのだろうか?
楽しそうで、手際も私より綺麗……婚約してから基本的に一緒にいたからか、普段と違うカムルの姿を見てしまう。
同じ気持ちだったからこそ、私が荒々しく料理していたことが気になったのでしょう。
カムル王子が料理する姿を眺めていると、隣にジェイクがやって来る。
「リリカ様。私の頼みを聞いてくださり、ありがとうございます」
「構いません。明日からもう新メニューを出すみたいなので、これからジェイク様には噂を広めて欲しいです」
「わかりました。一度食べてもらえれば、料理の美味しさから更に噂が広まるでしょう」
私が提案した意図がわかっているようで、ジェイクは賛同してくれる。
料理店の場所が悪い気がするから、最初はとにかくお客様に来てもらう必要があった。
噂が広まれば探してでも来てくれるはずで、一度来たらまた来たくなるはず。
そう確信していると、ジェイクは気になることがあるようだ。
「もしかしたら、レシピの出所を調べる者が現れるかもしれません……何かあれば、私の方で対処してみせます」
「わかりました。王子の婚約者である私を狙う人はいないと思いますけど、警戒はしておきましょう」
報酬も受け取るけど、ギルドマスターのジェイクが今後も力になってくれることも大事だ。
子供の頃に前世の知識を使わなかったのは、狙われた場合に対処できないと想定できたから。
今ならどんな問題が起きても対処できそうで、これからも私は前世の知識を使っていこう。
準備ができたようで、王都にある料理店に私とカムルが向かっている。
立派な店だけど路地裏にあり、厨房に立っている短い青髪で細身の美青年の隣にジェイクがいた。
「紹介します。私の友人ギエンです」
「ギエンと申します。カムル殿下とリリカ様に会えるとは……本日はよろしくお願いします」
料理人のギエンは頭を下げて感激している様子だけど、王子のカムルはともかく、どうして私を眺めて驚くのだろうか?
伯爵家の令嬢だけど、そこまで活躍していないことになっているはずだ。
「イリス様とか何度か一緒に戦ったことがありますが、とんでもない人でした。リリカ様が特殊な料理を思いついたと聞き、イリス様の娘なら納得できます」
「……お母様って、そこまで得体のしれない存在と思われているのですか」
いきなり普通とは違う料理を教えると言われて、怪しまず嬉しそうにしていたのには理由があったらしい。
ジェイクに伝えていたから必要な物は全て用意できるようで、調味料も豊富だ。
前世は学生の頃に楽しく料理をしていたから、揚げ物のコロッケやドーナツを作っていく。
他にもこの世界にない料理で私が作れそうな料理を作っていき、数日も経つとギエンは私より遥かに美味しく作れるようになっていた。
今日は料理の手際を確認しながら私との差に呆然としてしまい、隣にいたカムルに尋ねたくなってしまう。
「私の料理が下手なのではなく、教えた方々が上手すぎるだけでしょう。そうですよね!」
「そ、そうだな……」
「本心は?」
「ハッキリ言わせてもらうと、感情をぶつけているせいかリリカの調理は雑だ。俺の方が上手くできるだろう」
そう言ってカムルが証明するためかギエンと一緒に料理をはじめて、王子がエプロンを着けるとは想定外だ。
城の時は料理長がいたから止めていたのかもしれないけど、カムルは料理したかったのだろうか?
楽しそうで、手際も私より綺麗……婚約してから基本的に一緒にいたからか、普段と違うカムルの姿を見てしまう。
同じ気持ちだったからこそ、私が荒々しく料理していたことが気になったのでしょう。
カムル王子が料理する姿を眺めていると、隣にジェイクがやって来る。
「リリカ様。私の頼みを聞いてくださり、ありがとうございます」
「構いません。明日からもう新メニューを出すみたいなので、これからジェイク様には噂を広めて欲しいです」
「わかりました。一度食べてもらえれば、料理の美味しさから更に噂が広まるでしょう」
私が提案した意図がわかっているようで、ジェイクは賛同してくれる。
料理店の場所が悪い気がするから、最初はとにかくお客様に来てもらう必要があった。
噂が広まれば探してでも来てくれるはずで、一度来たらまた来たくなるはず。
そう確信していると、ジェイクは気になることがあるようだ。
「もしかしたら、レシピの出所を調べる者が現れるかもしれません……何かあれば、私の方で対処してみせます」
「わかりました。王子の婚約者である私を狙う人はいないと思いますけど、警戒はしておきましょう」
報酬も受け取るけど、ギルドマスターのジェイクが今後も力になってくれることも大事だ。
子供の頃に前世の知識を使わなかったのは、狙われた場合に対処できないと想定できたから。
今ならどんな問題が起きても対処できそうで、これからも私は前世の知識を使っていこう。
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