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4話
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カムル王子との婚約が決まって1週間が経ち、私は城へ向かうこととなっていた。
家族に紹介したいようだけど、王家の人達は伯爵令嬢の私を婚約者にすると言われて納得しているのだろうか?
激務は嫌だという意思を尊重してくれる話も気になり、移動中の馬車内で私はカムルに尋ねる。
「婚約の際に言った通りなら、私の力を陛下に知ってもらって大丈夫そうですね」
「ああ。王子の婚約者という立場だから無理はさせないし、必要な時にリリカの水魔法を頼ることとなりそうだ」
「過労で倒れるほどの激務でなければ、水魔法を使うことは問題ありません」
「そうなのか? まあ、どれだけ活躍しても兄上達があまり目立たせないようにするらしい」
カムルは私達の住むレゾニス国の第三王子で、次期国王になるのは第一王子で間違いないとされている。
それでも私がその気になって大々的に活躍すると、その婚約者カムルが次期国王になる流れができるかもしれない。
これは推測になるけど、予想外の勢力が出ないよう私が行動しても秘匿されるようだ。
「カムル殿下は、次期国王になりたくないのですね」
「俺は国内の問題を対処する方が合っている。リリカと一緒にレゾニス国を繁栄させたい」
「はい。私としても、自分の魔法がどれほど凄いのか試したいと思っていました」
これからは前世の知識による水魔法を、レゾニス国のために使っていきたい。
この世界で15年間も生きていると、前世の世界より遥かに危険と知ってしまったからだ。
他国の襲撃からヤバそうな化物を復活させる勢力に自然災害と、魔力があるからか事故のスケールも大きい。
住んでいるレゾニス国を繁栄させることは安全度を上げることに繋がり、そのために私は前世の知識と水魔法を使っていきたかった。
そんなことを話していると、馬車が城に到着しようとしている。
今までは伯爵令嬢で力を知られたら酷使されると思っていたけど、王子の婚約者なら力を発揮できそうだ。
◇◆◇
「こちらの水は右から順に強化する聖水、怪我を治す聖水、魔力を回復させる聖水、飲む用の水です」
「並べられた4つの水は全てただの水にしか見えん! カムルが気に入っているから興味はあったが、会ってすぐここまで驚くことになるとは思わなかったぞ!」
私は玉座のある謁見の間で国王と対面して、周囲には護衛の兵士や他の王子もいたけど、私の行動に皆が驚いているようだ。
事前にテーブルとコップを準備して欲しいと、私はカムルに提案している。
私の水魔法をわかりやすく知ってもらうため、用意されたテーブルの上に4つのコップを並べてもらった。
そこに前世のファンタジー知識から作り出された水を入れて、効力を説明する。
どうやらこの世界では飲んですぐ効力のある水は「聖水」と呼ばれるみたいだから、私は聖水が作れることにしていた。
「父上。前の婚約者ラルフは今の父上のように誰も信じないと考え、リリカに特殊な水魔法を使うなと命じていました」
「な、なるほどな……よし、私が飲んで試すとしよう」
反応的に気付いていたけど、やっぱり国王は私の説明が信じられなかったようだ。
それでも飲もうとしてくれるのだから、飲まずに否定してきたラルフがおかしい。
普通の水にしか見えないから怪訝にしていた国王が体を強化する水を飲むと、すぐに変化が起きたようで動揺している。
周囲の兵士や他の王子達が驚いているけど、陛下は全身を動かして飛び跳ねながら。
「おおおっ! 本当に身体能力が向上しておる! 若返った気分だ!!」
「父上。嬉しい気持ちはわかりますけど、子供のような行動は止めて欲しいです」
ハイテンションで飛び跳ねて軽やかなステップから何もない場所にジャンプやキックを繰り出す姿は、国王の姿とは思えない。
冷静になって欲しいから、私は国王が飲んだ強化水について説明しよう。
「飲んだ最初が一番強くて、時間が経つと性能が落ちていきます」
「見た目は透明で奇麗な水なのに、とてつもない効力だ……怪我を治す水と魔力を回復させる水は、必要な者に飲ませてみたいのぅ!」
「そうですね。効果がすぐわかる人が飲んだ方がいいと思います」
私が頷くと、陛下が兵士達に命令して飲んで効果がすぐにわかる人を選出してくれる。
1人は先日に魔物と戦い重傷を受けた人で、意識は戻ったけどボロボロのようで支えられながら私達の元まで来ていた。
その人が怪我を治す回復聖水を飲むと傷が一気に消えたから、周囲がざわめいている。
魔力回復水は魔法の指導をする先生が飲むと、魔力が回復したようだ。
そして魔法の先生は、水の入っていたコップを眺めて。
「コップ一杯程度の水を飲んだだけで、私の魔力を全快させるとは……世界中を探しても、ここまでの力を持つ水はありませんよ!」
「そうですか。魔力回復水は、他の水よりも作れないので貴重です」
「これほどとはな……ラルフは愚かなことをしたものだ。残っている最後の水は飲む用の水と言ったが、何かあるのだろう?」
「はい。これはリリカも効果を知らなかったので、ラルフも禁止できていない水になります。普通に美味しい水ですが、徐々に強くなっていく水です」
強化する聖水は飲むと一気に効果が出るけど、飲む用に使っていた普通の水にも近い効果があったらしい。
これに関しては飲み続けると徐々に効果が発揮されて、飲まなくなれば徐々に弱まっていくようだ。
そうカムルは推測しているけど、私は今まで何も知らなかった力でもある。
これが本当なら、元婚約者ラルフはこれから徐々に力が弱まっていきそうだ。
家族に紹介したいようだけど、王家の人達は伯爵令嬢の私を婚約者にすると言われて納得しているのだろうか?
激務は嫌だという意思を尊重してくれる話も気になり、移動中の馬車内で私はカムルに尋ねる。
「婚約の際に言った通りなら、私の力を陛下に知ってもらって大丈夫そうですね」
「ああ。王子の婚約者という立場だから無理はさせないし、必要な時にリリカの水魔法を頼ることとなりそうだ」
「過労で倒れるほどの激務でなければ、水魔法を使うことは問題ありません」
「そうなのか? まあ、どれだけ活躍しても兄上達があまり目立たせないようにするらしい」
カムルは私達の住むレゾニス国の第三王子で、次期国王になるのは第一王子で間違いないとされている。
それでも私がその気になって大々的に活躍すると、その婚約者カムルが次期国王になる流れができるかもしれない。
これは推測になるけど、予想外の勢力が出ないよう私が行動しても秘匿されるようだ。
「カムル殿下は、次期国王になりたくないのですね」
「俺は国内の問題を対処する方が合っている。リリカと一緒にレゾニス国を繁栄させたい」
「はい。私としても、自分の魔法がどれほど凄いのか試したいと思っていました」
これからは前世の知識による水魔法を、レゾニス国のために使っていきたい。
この世界で15年間も生きていると、前世の世界より遥かに危険と知ってしまったからだ。
他国の襲撃からヤバそうな化物を復活させる勢力に自然災害と、魔力があるからか事故のスケールも大きい。
住んでいるレゾニス国を繁栄させることは安全度を上げることに繋がり、そのために私は前世の知識と水魔法を使っていきたかった。
そんなことを話していると、馬車が城に到着しようとしている。
今までは伯爵令嬢で力を知られたら酷使されると思っていたけど、王子の婚約者なら力を発揮できそうだ。
◇◆◇
「こちらの水は右から順に強化する聖水、怪我を治す聖水、魔力を回復させる聖水、飲む用の水です」
「並べられた4つの水は全てただの水にしか見えん! カムルが気に入っているから興味はあったが、会ってすぐここまで驚くことになるとは思わなかったぞ!」
私は玉座のある謁見の間で国王と対面して、周囲には護衛の兵士や他の王子もいたけど、私の行動に皆が驚いているようだ。
事前にテーブルとコップを準備して欲しいと、私はカムルに提案している。
私の水魔法をわかりやすく知ってもらうため、用意されたテーブルの上に4つのコップを並べてもらった。
そこに前世のファンタジー知識から作り出された水を入れて、効力を説明する。
どうやらこの世界では飲んですぐ効力のある水は「聖水」と呼ばれるみたいだから、私は聖水が作れることにしていた。
「父上。前の婚約者ラルフは今の父上のように誰も信じないと考え、リリカに特殊な水魔法を使うなと命じていました」
「な、なるほどな……よし、私が飲んで試すとしよう」
反応的に気付いていたけど、やっぱり国王は私の説明が信じられなかったようだ。
それでも飲もうとしてくれるのだから、飲まずに否定してきたラルフがおかしい。
普通の水にしか見えないから怪訝にしていた国王が体を強化する水を飲むと、すぐに変化が起きたようで動揺している。
周囲の兵士や他の王子達が驚いているけど、陛下は全身を動かして飛び跳ねながら。
「おおおっ! 本当に身体能力が向上しておる! 若返った気分だ!!」
「父上。嬉しい気持ちはわかりますけど、子供のような行動は止めて欲しいです」
ハイテンションで飛び跳ねて軽やかなステップから何もない場所にジャンプやキックを繰り出す姿は、国王の姿とは思えない。
冷静になって欲しいから、私は国王が飲んだ強化水について説明しよう。
「飲んだ最初が一番強くて、時間が経つと性能が落ちていきます」
「見た目は透明で奇麗な水なのに、とてつもない効力だ……怪我を治す水と魔力を回復させる水は、必要な者に飲ませてみたいのぅ!」
「そうですね。効果がすぐわかる人が飲んだ方がいいと思います」
私が頷くと、陛下が兵士達に命令して飲んで効果がすぐにわかる人を選出してくれる。
1人は先日に魔物と戦い重傷を受けた人で、意識は戻ったけどボロボロのようで支えられながら私達の元まで来ていた。
その人が怪我を治す回復聖水を飲むと傷が一気に消えたから、周囲がざわめいている。
魔力回復水は魔法の指導をする先生が飲むと、魔力が回復したようだ。
そして魔法の先生は、水の入っていたコップを眺めて。
「コップ一杯程度の水を飲んだだけで、私の魔力を全快させるとは……世界中を探しても、ここまでの力を持つ水はありませんよ!」
「そうですか。魔力回復水は、他の水よりも作れないので貴重です」
「これほどとはな……ラルフは愚かなことをしたものだ。残っている最後の水は飲む用の水と言ったが、何かあるのだろう?」
「はい。これはリリカも効果を知らなかったので、ラルフも禁止できていない水になります。普通に美味しい水ですが、徐々に強くなっていく水です」
強化する聖水は飲むと一気に効果が出るけど、飲む用に使っていた普通の水にも近い効果があったらしい。
これに関しては飲み続けると徐々に効果が発揮されて、飲まなくなれば徐々に弱まっていくようだ。
そうカムルは推測しているけど、私は今まで何も知らなかった力でもある。
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