妹に婚約者を奪われましたが今は幸せです

22話 ゴルドー視点

　第三王子のガノザは、ケイトが作った腕輪の効力をゴルドーに話す。

　魔法が上手く扱えず身体能力が衰えたのも、全て婚約者をギーナに変えてから起きたことだ。

「今まで信じられませんでしたが、こうなると信じるしかないようです」

「魅了魔法が使える者が知り合いにいるから、ケイトの婚約者アリオスを従えて腕輪に魔力を与えるとしよう」

　どうやらケイトを魅了した場合は、意志が本心と違う場合は腕輪に魔力を流すことができなくなるらしい。

　婚約者アリオスを従え、命令することでケイトから腕輪に魔力を流させたいようだ。

　それよりもゴルドーとしては、魅了魔法を遣う魔法士がガノザ王子の知り合いにいることに驚くしかない。

「あの……魅了魔法は禁止されている魔法ですが、それを公爵家の令息であるアリオスに使うのですか？」

「知られなければ問題ない。これは騎士団どころか、俺の家族すら知らないことだから、絶対に誰にも話すな」

「わ、わかりました！」

　強く睨まれたことで、ゴルドーは従うしかない。

　ガノザ王子が今まで騎士を解雇しなかったのは、ケイトが作った腕輪を欲しくなったからのようだ。

「お前の実力はそのままで、ギーナの腕輪は俺が貰う。それでいいな」

「それは構いませんが、アリオスに魅了魔法をかけることができるのでしょうか？」

　魅了魔法について知っているのはゴルドーだけなら、他に味方がいない。

　今の状態でアリオスに勝てる自信がないから尋ねると、ガノザが両手に液体の入った瓶を持つ。

「お前とギーナには魔力を一時的に強化する薬を飲んでもらう。副作用があり魔法学園で禁止されているが、これを飲まないとお前達ではアリオスに勝てないからな」

　魔力を強化する薬は飲んでから数時間は膨大な魔力を得ることができ、その後は数日間も苦しむこととなる。

　それでも腕輪の力を取り戻すためにも、ガノザの命令を聞くしかない。

「魅了魔法士は明後日の午後までに到着するから、アリオスの登校時を狙うとしよう」

　魅了魔法については秘匿する必要があり、ガノザ王子は魔法士として強くない。

　これからギーナを説得して、魔力を強化する薬を飲ませてアリオスを倒す。

　腕輪の力を知ったゴルドーは、ケイトを従えるためどんな手段でも使おうとしていた。