上 下
21 / 26

21話 ゴルドー視点

しおりを挟む
 魔法学園は休日で、婚約者のギーナは昨日、騎士団の入団試験を受けていた。

 昨日と今日が休日となり、本来なら2日かけて試験は行われる。

 それなのに……ギーナは昨日の時点で不合格を言い渡され、ショックを受け自室から出なくなっていた。

 今日は城に呼び出されたゴルドーは、訓練と称しながら他の騎士団員から暴行を受けている。

 1対1の試合形式で反撃しても構わないが、ゴルドーはいつも通りの実力を発揮できていない。

 今まで圧倒できた他の騎士達に普通に負け続け、暴言を吐かれてしまう。

「ゴルドーは急に弱くなったな」

「どうしてガノザ殿下は解雇しないのか……まだ元に戻ると機会を与えているようだが、俺達の評判が悪くなるだけだ」

 木刀による攻撃を防げず、倒れながらゴルドーは現状に憤るしかない。

 他の騎士団員から嫌われているのは、今まで態度が悪かったから。

 更に婚約者のギーナを騎士団に入れようとして、実力の低さから足手纏いを入れようとしたと思われている。

 入団試験を受けさせて欲しいと推薦したのはゴルドーで、すぐに不合格を言い渡されてしまう。

 このままだと解雇されるのは時間の問題で、その後はどうなってしまうのか。

 今まで暴言を吐き続けてきた魔法学園の教師や生徒から、どんな目に遭うかわからない。

 最悪の事態を想像して、ゴルドーは騎士を辞めるわけにはいかなくなっていた。

   ◇◆◇

 ボロボロの状態で城内を歩き、部屋に入りゴルドーの前には第三王子ガノザがいる。

 短い金髪と長身の青年で、いつでもゴルドーを騎士から解雇できる人だ。

「ガノザ殿下。どうか俺を騎士でいさせてください!」

「むしろ辞めたいのではないかと思っていたよ。騎士団内であそこまで嫌われているのに、まだ騎士でいたいのか」

 嘲笑するガノザだが、確かにその通りだ。

 今まで王子の騎士だからと横暴な態度をとっていなければ、辞めていたに違いない。

 それも見通しているように眺めるガノザ王子は、ゴルドーの腕輪を指差す。

「お前が実力を発揮できなくなったのは、その腕輪が力を発揮しなくなったからだ」

「……ガノザ殿下は、何を仰っているのですか?」

「いいから聞け。お前が見下し婚約者を変えたケイトだが、彼女は優秀な魔法士だった……金属魔法について調べたが、現状から間違いない」

 相手が王子だから、否定することなくゴルドーは話を聞く。

 認めたくないが……全てケイトの力によるもので、腕輪に魔力を流せるのもケイトだけらしい。

 それほどまでの力を持つ腕輪を作れる人は珍しいようで、ガノザ王子はケイトの力が欲しくなったようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら
恋愛
侯爵家令嬢のミゼス・ワグナーは、何かあるとすぐに妹のリズのせいにして八つ当たりをした。 ある日ミゼスは、リズの態度に腹を立て、婚約者を奪おうとする。 リズはこれまで黙って耐えていた分、全てやり返すことにした……。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

【完結・全7話】妹などおりません。理由はご説明が必要ですか?お分かりいただけますでしょうか?

BBやっこ
恋愛
ナラライア・グスファースには、妹がいた。その存在を全否定したくなり、血の繋がりがある事が残念至極と思うくらいには嫌いになった。あの子が小さい頃は良かった。お腹が空けば泣き、おむつを変えて欲しければむずがる。あれが赤ん坊だ。その時まで可愛い子だった。 成長してからというもの。いつからあんな意味不明な人間、いやもう同じ令嬢というジャンルに入れたくない。男を誘い、お金をぶんどり。貢がせて人に罪を着せる。それがバレてもあの笑顔。もう妹というものじゃない。私の婚約者にも毒牙が…!

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で…… 10/1追記 ※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。 ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。 また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。 きんもくせい

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?

田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。 そして知らされた衝撃の事実。 婚約者は駆け落ちしたのだ。 最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。 その理由が判明して納得できた。 駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

処理中です...