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19話

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 休日が終わり、私は魔法学園に登校していた。

 教室の席に到着するとロザリーが来てくれて、私の腕輪を眺めている。

「ゴルドー様が着けている腕輪とはデザインが違うけど、ケイト様も腕輪を着けるようになったのね。似合っているわ」

「ありがとうございます。アリオス様とお揃いの腕輪で、魔力を籠めるとしばらくの間お互いの位置がわかります」

 ロザリーから腕輪を褒められたことが嬉しくて、腕輪の効力を話すと驚いている。

「そんなことができるの? 本当に?」

「はい。先ほどアリオス様が登校したようで、今は教室に向かっています……後2分ぐらいで到着するでしょう」

「そうなんだ……便利だと思うけど、お互い知られたくない場所に行くこともあるんじゃないかしら? 内緒でプレゼントを買いに行く時とか、店に行ったことを知られそうじゃない?」

「魔力を籠めないと位置がわかりませんから、常に知ることはありませんけど……内緒で行動する時は、部屋に腕輪を置くことになりそうですね」

 そんな予定はないし、まず内緒でプレゼントを買いに行くという発想が私にはなかった。

 腕輪について話していると、ロザリーは微笑む。

「お揃いの腕輪を作るよう提案したのがアリオス様な辺り、お互い好き同士だからこそ何も気にすることがなさそうね」

 その後は予想した時間通りアリオス様が教室にやって来て、私の方を見てくれる。

 アリオス様も私の位置を知っていたからこその行動を見ると、お揃いの腕輪を作って本当によかった。

   ◇◆◇

 昼休みを終えて、午後の魔法を扱う授業は腕輪の力もあり今まで以上の成果を出せている。

 少し離れた場所でゴルドーと先生が会話をしているようで、声が聞こえてきた。

「ギーナが王子の騎士になれなかったのは関係ないだろ! 俺が王子の騎士なのは変わらない!」

「私が言いたいのは、ゴルドー様の現状がギーナ様と同じということです。王子の騎士は関係ありません」

 ゴルドーが叫んだことで周囲が会話を止めて、先生の声もよく聞こえる。

 王子の騎士団にギーナが入れなかったようだけど、それは予想できたことだ。

 それを気にしているゴルドーは、先生に注意されて話さずにはいられないらしい。

「俺がお前より偉い王子の騎士だから、注意されたくないということだ!」

「それなら魔法が上手く扱えないままですし、この程度の実力なら騎士を解雇されるのは時間の問題でしょう」

「ぐっっ……俺を見下すな!」

「最近は騎士団の方から見下されているからですか? 魔法士としてゴルドー様より私の方が優れていると断言できますが、助言を聞かないのならどうすることもできません」

 先生の発言に言い返せなくなり、ゴルドーは魔法を使うことを止めていた。

 その時に……もう効力を発揮しない腕輪を眺めていたことが、私は気になってしまう。

 もしかしたらゴルドーが今まで魔法士として優れていたのは、私が作った腕輪の力によるものと推測しているのかもしれない。
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