上 下
14 / 26

14話

しおりを挟む
 家族との話を終えて、アリオス様は数時間後には帰ってしまう。

 私の部屋に来てもらい、助けてくれたことを改めてアリオス様にお礼を言いたかった。

「今日はありがとうございました……アリオス様がいてくれなけば、ゴルドー様の言うとおりにしていたかもしれません」

「婚約者として当然のことをしたまでだ」

「今度は何か言われたとしても、私の意思で拒んでみせます」

「そこまで気負わなくていいのではないか? 何かあれば私に相談して欲しい」

 そうアリオス様が言ってくれる辺り、私はあまり自信のない表情をしているのでしょう。

 確かにこうして決意しても、実際に行動できるかはわからない。

 アリオス様の気遣いが嬉しくて、私は頷く。

「そうですね……魔法の授業でもそうでしたけど、私は自信が持てないみたいです」

「授業の時に考えたのだが、ケイトは自分の腕輪を作ってみるのはどうだろうか?」

 確かに……私が作った腕輪の力によりゴルドーやギーナが魔法の性能を向上させていたけど、それなら自分のを作れば問題ない気がする。

 提案に納得したけど、私としては自分の腕輪よりもアリオス様の腕輪を作りたい。

 困惑が顔に出てしまい、アリオス様は私を眺めて。

「ケイトが作る腕輪の力を知り提案したのだが、嫌だろうか?」

「嫌ではありませんけど、その……私よりも、アリオス様の腕輪を先に作りたいです」

 私の返答が予想外だったようで、アリオス様は驚いている。

 私を眺めて硬直していたアリオス様だけど、なにか閃いた様子だ。

「それなら、今回は最初から私とケイトでお揃いの腕輪を作るというのはどうだろうか? 最初からお揃いの腕輪を作った場合は、お互いの位置がわかる効果もあるらしい」

「そうなんですか?」

「ゴルドーとギーナの腕輪は見た目こそ同じだが、最初からお揃いで作ったわけではないから場所がわかる力はないようだ」

 ギーナに作ったのを見てゴルドーから命令されたから、お揃いの腕輪だけど私が1個ずつ作った形だ。

 最初からお揃いの腕輪を作ると、アリオス様の言った通りの効果が発揮されるかもしれない。

「お互いの位置を知ることができると、人の多い王都でデートした時に私が迷っていなくなったとしても大丈夫そうですね」

「王都だと、ケイトは迷子になるかもしれないのか……それなら、なおさらお揃いの腕輪を作って欲しい」

 アリオス様を困惑させてしまったけど、頼まれたことにより自信が持てる。

 私もアリオス様の位置をずっと知りたいから、全力でお揃いの腕輪を作ろうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら
恋愛
侯爵家令嬢のミゼス・ワグナーは、何かあるとすぐに妹のリズのせいにして八つ当たりをした。 ある日ミゼスは、リズの態度に腹を立て、婚約者を奪おうとする。 リズはこれまで黙って耐えていた分、全てやり返すことにした……。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?

かのん
恋愛
 ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!  婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。  婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。  婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!  4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。   作者 かのん

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で…… 10/1追記 ※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。 ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。 また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。 きんもくせい

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来ませんでした。平民女性と駆け落ちしたですって!?

田太 優
恋愛
待ち合わせの時間になっても婚約者は迎えに来なかった。 そして知らされた衝撃の事実。 婚約者は駆け落ちしたのだ。 最初から意中の相手がいたから私は大切にされなかったのだろう。 その理由が判明して納得できた。 駆け落ちされたのだから婚約破棄して慰謝料を請求しないと。

婚約破棄を望んでいたのでしょう?

稲瀬 薊
恋愛
伯爵令嬢リアナ・スティルマンには婚約者がいる。 名前はダグラス・パーシヴァル、侯爵家の息子である。 親が結んだ婚約でありそこに彼女達の意思はなかったが、リアナはパーシヴァル家に嫁ぐ為に必要な教養を魔法学園に入る前から学んでいた。 色々とリアナは我慢してきた。それを壊したのはルーシーという平民の女生徒と関係を育んでいたダグラスである。 「リアナを有責にした婚約破棄を計画する」 それを密かに聞いていたリアナは吹っ切れた。

処理中です...