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12話 ギーナ視点

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 伯爵令嬢のギーナ・ミアラナは12歳の時、姉のケイトを内心では見下していた。

 風と炎の属性魔法を扱える自分と比べて、ケイトは金属魔法しか属性魔法を扱えない。

 普通の魔法は防御魔法に長けているようだけど、魔法学園では成績に影響しない魔法だ。

 誰がどう考えても、ミアラナ伯爵家の次期領主となるのはギーナで間違いない。

 間違いないのに……姉ケイトは魔法学園の2年生の時に、侯爵令息ゴルドーと婚約が決まる。

 その時のギーナは12歳でも魔法の実力が高く、姉に作らせた金属魔法の腕輪を着けていた。

 侯爵令息と婚約したのなら、次期領主には姉のケイトがなるかもしれない。

 ゴルドーがケイトとの婚約に不満があるとわかってすぐ、ギーナは誘惑することにした。

 なんでも言うことを聞きそうなゴルドーを虜にすれば、姉を従えているようなものだ。

 そして――魔法学園に入学してから、ギーナは先生から注意される日々を送ることとなる。

 魔法学園に入学した1学期の間は、学年トップの成績で婚約の申し出も多かった。

 立場が上の人とは婚約してあげたのに、数週間もすれば婚約を破棄されてしまう。

 その男子生徒と学園で会った時は絡みにいき、精神的に追い詰めることにした。

 他にも自分より劣っているクラスメイトを脅すことで従えようとしたけど、抵抗してきたから魔法で攻撃しただけだ。

 その近くにいたケイトの友人ロザリーが止めに入り、許可のない魔法による戦闘をしてしまう。

 ギーナは魔法学園での成績はいいのに家族や先生から失望されて、話を聞いてくれるのはゴルドーだけ。

 それでも姉ケイトの婚約者なのが嫌で、1年間は婚約者を変えることはなかった。

 婚約者を変えることにしたのは、公爵令息アリオスからギーナに婚約して欲しいと申し込まれたから。

 アリオスは婚約した令嬢を危険な場所に連れて行き、数日で婚約が破棄される危険な令息。

 その噂はギーナの耳にも入り、関わりたくなかったからゴルドーに頼み込む。

 婚約者を変えることはできたけど、家族からは「次にギーナが問題を起こせば勘当し、全てゴルドーのロルアド侯爵家が責任を負う」という契約を結ぶことにしたようだ。

 何度も問題を起こして謝罪してきたからこそ、勘当したくなったというのはギーナ自身もわかっている。

 そんな契約を結ぶ家からは出て行きたくなっていて、これからのギーナはロアルド侯爵家で暮らすつもりだった。

   ◇◆◇

 婚約者を変えて休日が終わり、ギーナは魔法学園に登校していた。

 休み時間に婚約者となったゴルドーがやって来て、アリオスとケイトの仲のよさを聞かされる。

 愚痴を聞かされることに苛立ち、昼休みではロザリーと言い合いになってしまった。

 午後の魔法を扱う授業はそのせいで冷静になれず、ギーナは魔法が崩れグループの生徒が嘲笑する。

 魔法が崩れたとしても自分の方が上と証明したくなり、その生徒を魔法で攻撃した。

 1年生が魔法を扱っていた場所は大騒ぎとなり、ギーナは職員室に連行される。

 そして被害者の生徒とと向かい合い、責任者として姉のケイトではなくゴルドーがやって来た。

「……お姉様は、謝りに来てくれないのね」

 別室で被害者の生徒に渋々と頭を下げたゴルドーは、何故か私を睨んでいる。

 私は悪くないのに――ゴルドーの怒りが、ギーナには理解できない。

 部屋で嫌な気分になったから、ゴルドーに理由を話しておこう。

「私より劣っている生徒が見下してきたから、力の差を理解させただけよ」

「ふざけたことを言うな! 問題を起こすなと言ったのにどうして言うことが聞けないんだ!!」

 今までは慰めてくれたゴルドーだけど、婚約者となった途端に賛同しなくなっている。

 ここ最近は第三王子の騎士団に入れて、それは「ギーナと出会い愛を知って成長したから」と話していた。

 ――それなら婚約者を変えて喜び、私に尽くすべきではないのだろうか?

 この場では先生達がいるからギーナは我慢しているが、屋敷に戻った際はゴルドーに反省させる必要がある。

 ギーナは自分が悪いとは一切考えず、怒鳴ったゴルドーが許せなくなっていた。
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