妹に婚約者を奪われましたが今は幸せです

黒木 楓

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9話

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 魔法学園は午前の授業が終わり、今は昼休みだ。

 食堂で私はロザリーとアリオス様の3人で注文した昼食をテーブルに置き席につくと、妹のギーナがやって来る。

 まだ入学して数ヶ月しか経っていないけど、ギーナは様々な問題を起こした有名人だ。

 どれほど有名なのかというと、食堂の椅子に座れば周囲の生徒達が離れていく。

 ギーナは無関係な人でも会話が気になれば絡んできたり、自分より劣っている生徒と知っていれば見下した言動をとるからだ。

 そんなギーナのせいで私の友人はロザリーだけになったけど、それに関しては構わない。

 どうやら今日のギーナは私に話があるようだけど、右側の席にアリオス様がいる。

 そして正面にはロザリーがいたから、ギーナは私から見て左の席に座った。

 私達と違い、ギーナはまだ注文をしていない。

 先に話したいことがありそうで、私を蔑むように眺めてくる。

「お姉様は昨日アリオス様と楽しい時間を過ごせたみたいだけど、痩せ我慢なのではないかと見に来てあげました」

「ケイト様とアリオス様の仲は、一緒に昼食をとっている姿を見たら普通わかりませんか?」

「ロザリー様、次に今みたいな私を見下す発言をすれば、どんな目に合うかわかりませんよ?」

 そう言ってギーナは食堂に備えられている食器を取ってロザリーに見せながらへし折るけど、血の気が多すぎないだろうか?

 呆れている様子のロザリーは気にしていないようで、だからこそ私の友人でいてくれるのでしょう。

「ギーナ、ロザリー様に何かすれば私が許しませんし、問題が起きた場合は婚約者となったゴルドー様の責任となりますよ」

「私が手に取った食器が偶然脆く、折れちゃっただけじゃない。発言も冗談よ」

「ケイトの発言に言い返せるなんて……ちょっと賢くなっている辺り、昨日はゴルドー様が頑張って入れ知恵したみたいですね」

「話を戻しますけど、お姉様は婚約者が公爵令息のアリオス様だから、我慢しているのではないのですか?」

 ロザリーの発言をギーナが無視したけど、2人はかなり仲が悪い。

 原因はギーナが問題を起こし、私と一緒にロザリーが迷惑を被ることになったからで、悪いのは間違いなくギーナだ。

 会話を無視してきた時点でロザリーも話す気がなくなったようだから、私は隣の席にいるアリオス様に抱き着いて。

「ええ。私はアリオス様と婚約できたことが嬉しいです」

 登校した時はアリオス様の方から動いてくれたから、今度は私から動きたくなっている。

 行動するとアリオス様にロザリーも驚いていたけど、もっと驚いているギーナは席から立ち上がり。

「お姉様がここまでおかしくなるなんて、アリオス様と婚約しなくて正解でした!」

 食堂でまだ昼食を注文していなかったから、ギーナは私の元から離れたくなったようだ。

 アリオス様に抱きついていた私は離れると、驚きながらも行動に納得したのか笑顔を浮かべている。

「今朝の発言は、ケイトの方から行動するということだったのか……はははっ!」

「2人とも楽しそうですね。私としても食事中に不機嫌そうなギーナと関わらなくて済んだことが嬉しいです」

 ロザリーの言うとおり、今の私は幸せな時間を過ごせている。

 そしてギーナが不機嫌と言ったけど、その理由は推測できた。

「ギーナは不機嫌だったのは、私が辛い目に遭っていると推測したのに遭っていなかったからでしょうね」

「確か今日は午後から、ギーナは俺達と同じ魔法を扱う授業だったな……あれだけ精神が不安定なら魔法を上手く扱えなさそうだが、ケイトは何も気にしなくていい」

「そうですね。これからはギーナを気にしなくていいから、私は精神を安定させて魔法を扱うことができそうです」

 アリオス様の発言に頷きながら、ギーナの発言を私は思い返す。

 もし何か問題を起こすと家族の縁を切られるけど、ギーナはいつまで私をお姉様と呼べるのだろうか?

 3人で昼食をとりながら、私は午後からの授業が気になってしまう。

 ゴルドーが婚約者を変えたばかりだけど、ギーナはすぐに問題を起こしてもおかしくないからだ。
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