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5話

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 その後は屋敷に帰宅して、アリオス様が用意してくれたお菓子を家族で食べながら今日の出来事を話していた。

 妹ギーナはゴルドーの屋敷に泊まるようで、魔法学園に登校する準備もしているらしい。

 もし問題を起こせば一生ゴルドーのロルアド侯爵家の屋敷に暮らすこととなるし、慣れて方がいいとお父様は話していた。

 アリオス様の悪評についての理由も納得してもらい、危険な目に合うのは間違いない。

 それでも私は一緒にいたくて、お父様とお母様は納得してくれる。

 ギーナがいないから今の内に私が作った腕輪について聞いてみると、お父様が驚いた様子で話す。

「なるほど。アリオス様はケイトの魔法を知り、そこから腕輪の力も把握できたということか」

「驚かない辺り、お父様は知っていたのですか?」

「私も知らなかったけど、どうして話さなかったのでしょうか?」

 私が尋ねると、お母様も気になっている。

 アリオス様の仰った通りなら、私は今までギーナとゴルドーの腕輪に無意識で魔力を籠めていた。

 止めてくれてもよかったのにと考えてしまうと、お父様が理由を教えてくれる。

「そろそろ話すつもりだったが……アリオス様の仰った通りだ」

「腕輪に魔力を無意識に込めたせいで、私は毎日疲れてしまいました」

「そうなのか? それはすまなかった……無意識に魔力を籠める場合は、疲れない範囲で魔力を籠めると聞いていたのだが違うようだ」

「それなら私が毎日疲れていたのは、普通にギーナが問題ばかり起こして不安になっていたせいかもしれません」

 両方のような気がするし、だからこそ妹ギーナから解放されそうで嬉しい。

 そしてお父様は、私が作った腕輪の力を教えなかった理由を話してくれる。

「ケイトは頼まれたら作ってしまいそうだから、今まで教えなかったんだ」

「そうでしたか。あの、頼まれたら作るといけないのでしょうか?」

「ケイトが近くにいて魔力を込め続けなければ効果は消える。今までは知らなかったからこそ、腕輪が近いと無意識に魔力を与えていたのだろう」

 魔法を強化する腕輪を知られた状態で作ってしまうと、効果が出なければ私は糾弾されるかもしれない。

 頼まれたら拒まず作りそうだとお父様は考えたからこそ、腕輪の力を話さなかったようだ。

「それでもお父様がそろそろ話すつもりだったのは、ギーナとゴルドーに魔力を流さないようにしたかったからですね」

「ああ。これから問題を起こせばギーナは勘当するしゴルドー様とも無関係になる。腕輪に魔力を与えるかはケイトの判断に任せるが、必要ないだろう」

「はい。私もあの2人に魔力を渡さず、その分アリオス様に使いたいです」

「話を聞くにアリオス様と一緒だとアクシデントが起きる可能性もあるが、ギーナよりは怖くないな」

 今日の出来事を聞いてお母様は不安のようだけど、お父様はギーナと比べたらしい。

 問題を解決するアリオス様と、問題を起こすギーナを比べればそうなるのは当然だ。

「同意見です。アリオス様は私のことを心配してくれましたし、自分のことしか考えないギーナとは比べるべきではありません」

「まったくもってその通りだな。なによりケイトが嬉しそうだから、アリオス様と婚約できてよかった」

 嬉しそう……自覚はなかったけど、お父様はそう感じ取ったらしい。

 明日からは学園でアリオス様に会えるし、婚約者だから話しかけてもいいはず。

 今まではギーナのせいでハラハラしていた日常だけど、明日は学園に行くのが楽しみになっていた。
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