婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓

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32話 カルス視点

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 家族との会話を終えて数時間後――応接室に居るカルスは、婚約者とその兄に驚くしかない。

 ミュリナは満面の笑顔で、兄であるグラン・ドーマスを眺めていた。

 グランは銀色の長い髪をした美青年で、切れ長の眼を眺めると畏縮しそうになってしまう。

 怯んだら交渉できなくなると考えたカルスは、気を強く持ちながら呟く。

「まさか、ドーマス家の領主グラン様がやって来るとは……」

 唖然としているカルスに対して、グランは笑顔を浮かべながら呟く。

「妹の婚約者を1度見ておきたくてね……そうだな、俺の期待通りと言ったところか」

 期待通りと言われたことで安堵するも、すぐ失望に変わったとしてもおかしくはない。

 ミュリナを説得するために様々な理由を考えるも、グランの前で嘘をつけばバレる可能性が高い。

「カルス様。まず聞きたいことがあるのですが、カルス様の元婚約者パトリシアは、どうなりましたか?」

「それは……」

 カルスに質問をしたミュリナの圧が凄く、本来考えていた理由を話そうとするも。

「俺の妹の前で嘘をつくことは許されない……どんな理由だとしても、正直に話したまえ」

 グランの発言を聞くと、この場でどんな言い訳をしても、グランには無意味なのかもしれない。

 嘘を見抜く魔道具を隠し持っている可能性が高く、カルスは正直に話すしかない。

「……パトリシアは婚約破棄を受けて家に帰り――」

 ――最後まで言うことができず、カルスはミュリナに殴り飛ばされていた。

 少し浮いて、応接間の床に叩きつけられたカルスは激痛を受け、倒れて動けなくなっている。

 呆然としながら、カルスは激痛に悶えながら状況を理解する。

 ――どうやらミュリナは、ドーマス家はパトリシアが狙いだったらしい。

 肉体の激痛と精神的なショックの両方を、一瞬でカルスは受けることとなっていた。
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