上 下
21 / 74

21話

しおりを挟む
 あれから10日が経って――私は、3人の男性と話をした。

 一度家族で話し合うことになって、広い応接間でお父様とお母様がテーブル越しに私を眺めている。

 ルジャス領は大変だとお父様が言っていたけど、もう私には関係がない。

 お父様も同じ気持ちのようで、私の反応を見てすぐにルジャス領の話を止め、本題に入ろうとしていた。

「パトリシアとしては、この10日間で会った貴族達をどう思った?」

「そう、ですね……」

 お父様が不安げになり、隣でお母様は満足げにしている。

 それもそうでしょう。
 明らかに、私と出会った3人の男性は、婚約者になりたそうにしていた。

 私が考案したポーション、魔法や魔力について……私に婚約する価値があると判断したのは、言動で解る。

 言い回しは違ったけど「君ほど有能な人は居ない。婚約を破棄されたのなら婚約して欲しい」と、全員が私に告げていた。

 どうも全員が私に即断して欲しそうにしていたけど、全て「これからジャック様と会います」と言って断ることができている。

 ジャック様――というよりも、公爵家のローウォン家は格が違うようで、名前を出すだけで皆納得していたわね。

 それでも今回出会った貴族達は、求婚しているのがジャック様だからチャンスがあると考えているようだ。

「皆、私の力を求めていそうでした……話をしてカルスより遙かに優秀な方達だと解りましたけど、不安になってしまいます」

 話を聞く限り、皆カルスよりも優秀だというのがよく解り、私の話も聞いてくれた。

 それでも「子爵令嬢だから言いなりになるだろう」と考えているのは発言の節々からよくわかり、警戒してしまう。

「会いたい理由は魔法機関にパトリシアが送った新たなポーションの考案だからな……そこは、仕方がないと思う」

「その通りです。それでもパトリシアが不安になっているのなら、やっぱりジャック様が一番ね!」

 お母様が意気込むと、お父様が溜息を吐いて。

「いや……ジャック様と明日会うのが、僕としては一番不安だよ」

 一度家族で今までのことと、これからのことを話し合おうとなったのも、明日ジャック様と会うからだ。

 ジャック・ローウォン様――公爵家の貴族だとしか私か知らないけど、子爵令嬢の私と関わろうとしている時点でどこかおかしい。

「あのローウォン家と関わる機会だなんて、もう無いかもしれません……話ができるだけでも光栄だわ!」

「いや……僕としては、関わりたくないな」

 お母様が歓喜しているけど、お父様としては関わりたくなくて不安そうにしていた。

 今日まで問題なく貴族の人達と関われたから、今までの3人と同じで問題は起きないはずだ。

 そして翌日――私は、公爵貴族のジャック様と出会うことになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

浮気相手の面倒見ろとか寝惚けてるんですか? 撃ちますよ? 雷魔法。

隣のカキ
恋愛
私の婚約者は足りていないと貴族界隈で噂される程の人物。そんな彼が真実の愛を見つけたのだそうです。貴族にそんな言い訳は通用しません。第二夫人? 寝惚けているようなので目を覚まして差し上げます。雷魔法で。

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果

バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。 そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。 そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。 彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか! 「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。 やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ! 「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」 「なぁッ!! なんですってぇー!!!」 あまりの出来事に昏倒するオリビア! この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。 学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。 そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。 そして、ふと思いついてしまうのである。 「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」 ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。 彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。  

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

婚約破棄? 別にかまいませんよ

舘野寧依
恋愛
このたびめでたく大嫌いな王子から婚約破棄されました。 それはともかく、浮気したあげく冤罪押しつけるってなめてますよね? 誠意のかけらもありません。 それならば、あなた方の立場をきっちりと分からせてあげましょう。

婚約破棄を受け入れたはずなのに

おこめ
恋愛
王子から告げられた婚約破棄。 私に落ち度はないと言われ、他に好きな方が出来たのかと受け入れると…… ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

処理中です...