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36話 ザロク視点
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エリオス国の城で魔法を使い、俺は城から出て行く。
馬車に乗り、リラの説得を諦めてルアリサ国に戻るしかなかった。
待っているとマーシュ王子がやって来て、馬車の中で俺に対し叫びだす。
「聖女レミルの呪いで龍の杖が手放せないと、何故ザロクは話さなかった!?」
「あの場で俺の発言を信じてくれる者は、誰もいなかったでしょう」
「それはそうだが、兵士を魔法で攻撃するとは……貴様と一緒に帰ることはできん!」
「はぁっ!?」
理由を話せば、マーシュ王子は納得してくれると思っていた。
それなのに一緒に帰ることはできないと言われて、俺は動揺するしかない。
「貴様は用済みだ……兵士を攻撃した後は行方不明ということにする。リラを連れ戻すまで戻ることは許さん!」
「そんな!? あの場で俺が何を言っても無意味だったではありませんか!!」
「これは父上と決めていたことだ。聖女の代わりは用意しているし、レミルが貴様を探したとしても問題ない」
どうやら俺を切り捨てて、その際にレミルが聖女を辞めることを想定しているようだ。
それほどまでに俺の評判は悪く、リラを連れ戻す程の功績がなければルアリサ国に戻れない。
エリオス国で暮らしても、目撃されてしまえば城で魔法を使ったことを処罰されてしまう。
それでも……リラを連れ戻すためには、エリオス国で暮らすしかなさそうだ。
◇◆◇
数日が経ち、俺は隠れながらエリオス国で生活している。
魔法を使えば龍の杖で強くなっていることもあり、それを報告されると捕まるかもしれない。
魔法を使うことができず、周囲の視線に怯える日々を送っていると――街外れにいた俺の前に、レミルがやってきた。
「やはりザロクは、周囲を警戒しながら生活していましたか」
「レミル……どうして、ここにいる?」
「呪いによりザロクの位置がわかります。こんな使い方をするとは思いませんでした」
俺の位置を特定した理由を聞き、安堵することができている。
レミルと会えなくなることは嫌で、俺にかけた呪いを解いて欲しい。
ルアリサ国に帰ることができないのなら、全てを諦めてよさそうだ。
「こうなったらもう……リラのことを諦めて、他国で暮らすしかないだろう」
「他国で暮らし、ずっとリラのことばかり考えるザロクなんて私は嫌です。リラはこの手で必ず排除してみせます!」
「はぁっ!? どうやってリラを消す!? 俺達はエリオス国で機を待つこともできないだろう!!」
レミルも消えたとなれば、警戒しているリラはエリオス国にいないか調べるだろう。
変装してもバレる可能性はあるし、他国へ行くのが一番いい。
それが普通なのに、レミルは常軌を逸していた。
「いいえ。エリオス国に潜みましょう――人々が捜索できない場所は、一つだけあります」
「そんな場所がどこにある?」
「私達はこれからダンジョンで生活します。食糧は他の冒険者から奪いましょう!」
やる気に満ちたレミルの発言に、俺は唖然としている。
ダンジョンで暮らし食料は奪うなど、聖女だった者の発言とは思えない。
「正気か……?」
「これは私とザロクに与えられた試練。リラのせいで犠牲者が出るのは仕方ないことです!」
俺とレミルはこれから盗賊と同じ行動をとるのに、それは全てリラのせいらしい。
それでも俺はレミルを愛しているから、リラを排除するためダンジョンで暮らそうとしていた。
馬車に乗り、リラの説得を諦めてルアリサ国に戻るしかなかった。
待っているとマーシュ王子がやって来て、馬車の中で俺に対し叫びだす。
「聖女レミルの呪いで龍の杖が手放せないと、何故ザロクは話さなかった!?」
「あの場で俺の発言を信じてくれる者は、誰もいなかったでしょう」
「それはそうだが、兵士を魔法で攻撃するとは……貴様と一緒に帰ることはできん!」
「はぁっ!?」
理由を話せば、マーシュ王子は納得してくれると思っていた。
それなのに一緒に帰ることはできないと言われて、俺は動揺するしかない。
「貴様は用済みだ……兵士を攻撃した後は行方不明ということにする。リラを連れ戻すまで戻ることは許さん!」
「そんな!? あの場で俺が何を言っても無意味だったではありませんか!!」
「これは父上と決めていたことだ。聖女の代わりは用意しているし、レミルが貴様を探したとしても問題ない」
どうやら俺を切り捨てて、その際にレミルが聖女を辞めることを想定しているようだ。
それほどまでに俺の評判は悪く、リラを連れ戻す程の功績がなければルアリサ国に戻れない。
エリオス国で暮らしても、目撃されてしまえば城で魔法を使ったことを処罰されてしまう。
それでも……リラを連れ戻すためには、エリオス国で暮らすしかなさそうだ。
◇◆◇
数日が経ち、俺は隠れながらエリオス国で生活している。
魔法を使えば龍の杖で強くなっていることもあり、それを報告されると捕まるかもしれない。
魔法を使うことができず、周囲の視線に怯える日々を送っていると――街外れにいた俺の前に、レミルがやってきた。
「やはりザロクは、周囲を警戒しながら生活していましたか」
「レミル……どうして、ここにいる?」
「呪いによりザロクの位置がわかります。こんな使い方をするとは思いませんでした」
俺の位置を特定した理由を聞き、安堵することができている。
レミルと会えなくなることは嫌で、俺にかけた呪いを解いて欲しい。
ルアリサ国に帰ることができないのなら、全てを諦めてよさそうだ。
「こうなったらもう……リラのことを諦めて、他国で暮らすしかないだろう」
「他国で暮らし、ずっとリラのことばかり考えるザロクなんて私は嫌です。リラはこの手で必ず排除してみせます!」
「はぁっ!? どうやってリラを消す!? 俺達はエリオス国で機を待つこともできないだろう!!」
レミルも消えたとなれば、警戒しているリラはエリオス国にいないか調べるだろう。
変装してもバレる可能性はあるし、他国へ行くのが一番いい。
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「いいえ。エリオス国に潜みましょう――人々が捜索できない場所は、一つだけあります」
「そんな場所がどこにある?」
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「正気か……?」
「これは私とザロクに与えられた試練。リラのせいで犠牲者が出るのは仕方ないことです!」
俺とレミルはこれから盗賊と同じ行動をとるのに、それは全てリラのせいらしい。
それでも俺はレミルを愛しているから、リラを排除するためダンジョンで暮らそうとしていた。
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