44 / 58
44話
しおりを挟む
今回の白龍は、私を狙うだけで殺意はなかった。
伝承だと……神龍は人類最悪の存在で、人の恐怖心と魔力を取り込む存在だったはず。
殺さないのは恐怖心を取り込むためと考えられるけど、今回の件を思い返すと人類最悪の敵とは思えない。
私がエグニースに尋ねると、返答の前にゼスタが私の発言に頷いて。
「そのことだが、エグニースよ……お前は何か、神龍について知っているのではないのか?」
「……どうして、そう思ったのですか?」
ゼスタの質問に対して、エグニースが驚いている辺り、推測は当たっているのかもしれない。
「発言と行動からだな……もし本当に白龍が俺を殺す気なら、騎士として試すことはしなかったのではないか?」
確かに、エグニースはどこか余裕があったけど……それは、殺意がないと最初から知っていたから。
伝承通り人類最悪の存在だと知っていれば、王子の安全のために同行すら許さなかったかもしれない。
ゼスタは恐らく推測で尋ねただけだと思うけど、エグニースは微笑みながら。
「鋭いですね……確かに私は、冒険者ギルドの上層部は神龍について詳しく知っています。陛下の前では言い辛かったので黙っていました」
「父上の前では言い辛いだと? どうしてだ?」
ゼスタが困惑していると、エグニースは私に目をやって。
「神龍の目的には聖女の力が必要になり――聖女は犠牲となり、命を落すとされています」
私が……命を落すことになる?
サリナが私を連れてくるように言ったのは、犠牲になりたくなかったからなのかもしれない。
いきなりエグニースにそんなことを言われて、私は呆然とするしかなかった。
伝承だと……神龍は人類最悪の存在で、人の恐怖心と魔力を取り込む存在だったはず。
殺さないのは恐怖心を取り込むためと考えられるけど、今回の件を思い返すと人類最悪の敵とは思えない。
私がエグニースに尋ねると、返答の前にゼスタが私の発言に頷いて。
「そのことだが、エグニースよ……お前は何か、神龍について知っているのではないのか?」
「……どうして、そう思ったのですか?」
ゼスタの質問に対して、エグニースが驚いている辺り、推測は当たっているのかもしれない。
「発言と行動からだな……もし本当に白龍が俺を殺す気なら、騎士として試すことはしなかったのではないか?」
確かに、エグニースはどこか余裕があったけど……それは、殺意がないと最初から知っていたから。
伝承通り人類最悪の存在だと知っていれば、王子の安全のために同行すら許さなかったかもしれない。
ゼスタは恐らく推測で尋ねただけだと思うけど、エグニースは微笑みながら。
「鋭いですね……確かに私は、冒険者ギルドの上層部は神龍について詳しく知っています。陛下の前では言い辛かったので黙っていました」
「父上の前では言い辛いだと? どうしてだ?」
ゼスタが困惑していると、エグニースは私に目をやって。
「神龍の目的には聖女の力が必要になり――聖女は犠牲となり、命を落すとされています」
私が……命を落すことになる?
サリナが私を連れてくるように言ったのは、犠牲になりたくなかったからなのかもしれない。
いきなりエグニースにそんなことを言われて、私は呆然とするしかなかった。
40
お気に入りに追加
6,599
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
平凡なピピルと氷雪の王子の四年間
碧りいな
恋愛
ピピルは15歳だった一年前、自分が転生した事に気が付いた。しかも前世の記憶では母親よりも歳上の良いお年。今生は長めの人生経験を活用し地道に堅実に安定した人生を送ろうと計画するが、訳もわからぬまま王子の側室候補になってしまう。
見た目よりも多めの経験値と割り切りと要領の良さで順調にやり過ごして行くけれど、肝心の王子に放置され続けて早一年。社交界デビューを卒無くこなしたピピルは怒りを含んだ冷たい視線を感じる。その視線の主こそが……
小説家になろう様でも投稿させて頂いています。
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
厚かましい妹の言掛りがウザ……酷いので、家族総出でお仕置きしてみた。
百谷シカ
恋愛
「はあ!? 自分が愛されてるとでも思ってるの? ディーン様は私を愛しているのよ!!」
私はオーベリソン伯爵令嬢カルロッテ・バーン。
婚約者のディーンことシーヴ伯爵とは、超絶うまくいっている。
「お姉様みたいに血筋しか取り柄のない女どもは所詮ちんけな政治の道具! 図に乗らないで!」
このムカムカする女は年子の妹エヴェリーナ。
2ヶ月前、ライル侯爵令息アルヴィン・クーパー卿と婚約してからというもの図に乗っている。
「ディーンと私はラブラブよ」
「はあ!? 頭がおかしいんじゃない? 結婚なんて諦めて修道院にでも入ったらぁ?」
「はあ?」
「〝はあ!?〟 それしか言えないわけ? 本当に救いようのない馬鹿ね!」
たしかに超絶美少女のエヴェリーナはその美貌でアルヴィン卿を射止めたけど……
「あの方の前では猫被ってるから」
私たち家族は頭を抱えた。
そして、私の婚約者ディーンはブチギレた。
「俺の愛しているのはカルロッテただひとりだ。むかつく!」
そこで私たちは計画を立てた。
エヴェリーナの本性をアルヴィン卿に晒してやるのだ……!
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる