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16話 サリナ視点

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 王の間には、モルドーラ国王と、婚約者の第二王子グレイしか居ない。

 サリナが呆然としていると、グレイが説明を始める。

「今回のバトルドラゴンは、父上が封印を解いた神龍の部下みたいなものだ」

「……えっ?」

 神龍――伝説の龍で、認めた者には世界を支配できる力を与えるとされているも、危険すぎるから封印された伝説の生物。

 その単語が出てきたことに驚くけど……それ以上に、神龍の封印を解いた?

「ど、どうして解いたのですか?」

「研究の結果さ。俺達が解くまでは、封印を解いた者に力を与えると思っていた。それが神龍に認められるものだと思っていたけど……」

「……俺は神獣との会話で怯んだ。「その程度の者に我が力を貸すものか」と言われたのが、3年前のことだ」

 3年前――確かに、その頃からバトルドラゴンの被害が出ていたはず。

「そして神龍に言われた「2年猶予をやろう。この国にはとてつもない力を持つ聖女が居るから、その者の秘めた力を目覚めさせてみよ」と言われた」

 2年間は助けた猶予だったのかもしれないと考えていると、グレイの話は続く。

「俺と父上は、聖女のサリナが力を目覚めさせていないと思い、手を打った」

 そこまで説明したと思えば、モルドーラ国王がサリナを睨んで。

「追い込むため回復魔法が優秀な者、シーファを競争相手として、貴様の秘めた力を目覚めさせようとした! 現に神龍は1年もの間、俺達を避けていたからな!」

 去年からシーファが居るまでの間、モルドーラ国へ平和そのものだった。

 聖女としての活動を行い、報告の時、シーファの活躍も大体サリナの手柄だと報告している。

 シーファが地味な聖女だと悪評を流したこともあって、皆優秀な聖女サリナと、無能な聖女シーファだと思い込んでいる。

 そして陛下はサリナの言う通りシーファを追放し、その結果――今までなかったバトルドラゴンの襲撃を受けていた。

 そしてサリナが大したことがないと発覚すれば……当事者のモルドーラ国王とグレイだけは、シーファが必要だと確信している。

「シーファがどこに居るのかも不明で、隣国に助けを出さなかったから誰も助けてはくれない……万一に神龍が襲撃してくることを恐れたからだ!」

「新しい聖女も用意できない……こうなったら、多少無茶をしても、サリナにはこの国を守ってもらうしかないな」

 グレイがそう宣言して、サリナは逃げようとするも……連日の疲労のせいで逃げることができない。

 婚約者によって魔道具の首輪をつけられたシーファは、これからに絶望するしかなかった。
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