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2章
90話
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魔法を披露した翌日――この日は片付けの作業を行うようで、展示だけの一年生は休日になっていた。
私の作品は最優秀をとって魔法披露も大成功に終わり、目立っても構わないと思っている。
全てが終わった後の休日は、レックス殿下と一緒に過ごしたかった。
◇◆◇
レックス殿下に案内されて、私は森にやって来る。
グリムラ魔法学園に入学してからは来ていないから、数ヶ月以来だ。
「ここに最後に来たのは、グリムラ魔法学園に入学する前でしたか」
ゲームがはじまる前のことで、入学してからは様々な出来事があった。
よく考えてみると、この森の出来事がはじめてゲームと違う行動だったのかもしれない。
転生して――ここでレックス殿下を魔法で助けてから、全てがはじまった。
「俺も、リリアンと来て以来だ……俺は今日、ここに来たかった」
「どうしてですか?」
最後に森へ来た時、レックス殿下はクロータイガーを撃退していた。
あの時のレックス殿下の行動によって――この世界は紛れもなく現実なのだと、私は本当の意味で受け入れることができそうな気がしていた。
「それは……リリアンよ。まだ冒険者になりたいと思っているのか?」
レックス殿下が尋ねていたけど、もしかしてお父様に何か言われたのだろうか。
私が決めたことはなんでも賛同してくれるレックス殿下が、こうして尋ねるのは珍しい気がする。
嘘をつく気がない私は、本心を伝える。
「はい……私は、冒険者になりたいと考えています」
国外追放を言い渡された時だけだと思っていたけど、調べていると冒険者になりたいと考えてしまう。
こうなると不可能かもしれないと考えてしまうと、レックス殿下が頷いた。
「そうか。学園の制度を調べたのだが、学生の就職活動の一環として冒険者の仮登録ができるらしい」
「そうなのですか!」
私は国外追放を言い渡されたら、自然に冒険者になるしかないと考えていた。
学園の制度を調べなかったこともあって、調べてくれたレックス殿下に感謝するしかない。
「俺も一緒に冒険者になるし、リリアンなら在学中だけで冒険者を極めることができるだろう」
「はい! レックス殿下。ありがとうございます!」
もう諦めるしかないと考えていたけど、レックス殿下の言うとおりだ。
在学中に冒険者生活を送ろうと決意していると、嬉しそうな私を眺めて呟く。
「……いや、これは後に話すべきで、先に言うべきことがあったんだ」
「レックス殿下、どうしましたか?」
少し反省している様子のレックス殿下が、私は気になる。
この森に呼んだのは冒険者の話がしたかったからだと推測したけど、どうやら違うようだ。
そして――レックス殿下は、私を見つめて告げる。
「俺はリリアンを心から愛している――今は婚約者だが、卒業したら結婚式を挙げたい」
どうやらレックス殿下は、結婚式について話がしたかったようだ。
私達は……今までいつの間にか婚約が決まっていたから、告白されていなかった。
はじめて出会ったこの場所で、レックス殿下は私を愛していると伝えたかったようだ。
「告白の言葉、そして場所も……ゲームとは全然違う」
「……リリアン?」
思わず小声で呟いてしまったけど、レックス殿下には聞こえていなかったようだ。
私はまだ、ゲームの出来事を考えてしまったのかもしれない。
それが今、目の前のレックス殿下の行動によって、この世界がゲームとは違うと確信する。
――ようやく私は、ゲームから吹っ切れることができそうだ。
「レックス殿下。私も同じ気持ちです」
「そ、それはつまり――」
今の時点でも婚約者なのに、レックス殿下は嬉しそうにしている。
そんなレックス殿下に対して、私は想いを伝えた。
「私も――レックス殿下のことを、愛しています」
想いを伝え合い、私とレックス殿下は同じ行動をとっていた。
お互いを抱きしめ、今が幸せだと実感して――私は、レックス殿下の温もりを感じる。
魔法に夢中となった私は――大好きな王子に溺愛されていた。
私の作品は最優秀をとって魔法披露も大成功に終わり、目立っても構わないと思っている。
全てが終わった後の休日は、レックス殿下と一緒に過ごしたかった。
◇◆◇
レックス殿下に案内されて、私は森にやって来る。
グリムラ魔法学園に入学してからは来ていないから、数ヶ月以来だ。
「ここに最後に来たのは、グリムラ魔法学園に入学する前でしたか」
ゲームがはじまる前のことで、入学してからは様々な出来事があった。
よく考えてみると、この森の出来事がはじめてゲームと違う行動だったのかもしれない。
転生して――ここでレックス殿下を魔法で助けてから、全てがはじまった。
「俺も、リリアンと来て以来だ……俺は今日、ここに来たかった」
「どうしてですか?」
最後に森へ来た時、レックス殿下はクロータイガーを撃退していた。
あの時のレックス殿下の行動によって――この世界は紛れもなく現実なのだと、私は本当の意味で受け入れることができそうな気がしていた。
「それは……リリアンよ。まだ冒険者になりたいと思っているのか?」
レックス殿下が尋ねていたけど、もしかしてお父様に何か言われたのだろうか。
私が決めたことはなんでも賛同してくれるレックス殿下が、こうして尋ねるのは珍しい気がする。
嘘をつく気がない私は、本心を伝える。
「はい……私は、冒険者になりたいと考えています」
国外追放を言い渡された時だけだと思っていたけど、調べていると冒険者になりたいと考えてしまう。
こうなると不可能かもしれないと考えてしまうと、レックス殿下が頷いた。
「そうか。学園の制度を調べたのだが、学生の就職活動の一環として冒険者の仮登録ができるらしい」
「そうなのですか!」
私は国外追放を言い渡されたら、自然に冒険者になるしかないと考えていた。
学園の制度を調べなかったこともあって、調べてくれたレックス殿下に感謝するしかない。
「俺も一緒に冒険者になるし、リリアンなら在学中だけで冒険者を極めることができるだろう」
「はい! レックス殿下。ありがとうございます!」
もう諦めるしかないと考えていたけど、レックス殿下の言うとおりだ。
在学中に冒険者生活を送ろうと決意していると、嬉しそうな私を眺めて呟く。
「……いや、これは後に話すべきで、先に言うべきことがあったんだ」
「レックス殿下、どうしましたか?」
少し反省している様子のレックス殿下が、私は気になる。
この森に呼んだのは冒険者の話がしたかったからだと推測したけど、どうやら違うようだ。
そして――レックス殿下は、私を見つめて告げる。
「俺はリリアンを心から愛している――今は婚約者だが、卒業したら結婚式を挙げたい」
どうやらレックス殿下は、結婚式について話がしたかったようだ。
私達は……今までいつの間にか婚約が決まっていたから、告白されていなかった。
はじめて出会ったこの場所で、レックス殿下は私を愛していると伝えたかったようだ。
「告白の言葉、そして場所も……ゲームとは全然違う」
「……リリアン?」
思わず小声で呟いてしまったけど、レックス殿下には聞こえていなかったようだ。
私はまだ、ゲームの出来事を考えてしまったのかもしれない。
それが今、目の前のレックス殿下の行動によって、この世界がゲームとは違うと確信する。
――ようやく私は、ゲームから吹っ切れることができそうだ。
「レックス殿下。私も同じ気持ちです」
「そ、それはつまり――」
今の時点でも婚約者なのに、レックス殿下は嬉しそうにしている。
そんなレックス殿下に対して、私は想いを伝えた。
「私も――レックス殿下のことを、愛しています」
想いを伝え合い、私とレックス殿下は同じ行動をとっていた。
お互いを抱きしめ、今が幸せだと実感して――私は、レックス殿下の温もりを感じる。
魔法に夢中となった私は――大好きな王子に溺愛されていた。
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