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2章

87話

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 復活したロウデスを相手に、私達は劣勢だった。
 邪神の膨大な魔力を相手に私が折れないのは、ゲームのエンディングで勝つことを知っているから。
 そして――それ以上に、私達が負けるわけがないと確信しているからだ。

「理解できないな……勝てないと理解できているのに、なぜ抗う」

 魔法は精神力が重要で、勝てないと判断した時点で決着がつくとロウデスは考えていたようだ。
 私はレックス殿下を回復魔法で治しながら、魔力に意志を籠めて策を伝えている。
 今まで私達に近づけないため、レックス殿下は接近戦を任せていた。
 主にロウデスの動きを止める為で、負傷してもすぐ治せるロウデスは魔法を使い続けている。
 そして――私が暴風と稲妻の、私が使える最大魔法に、カレンとロイが魔力を上乗せした。

「勝負に出たようだが――無駄だ!!」

 時間をかければロウデスは周囲の人達の魂を取り込むから、全力の攻撃で時間をかけずに倒す必要がある。
 私達は全力の攻撃をロウデスが対処して、その時間が欲しかった。
 今までロウデスの動きに合わせていたレックス殿下が、私達の前までロウデスと距離をとる。
 そして――私達は魔法を解除して、レックス殿下の剣に魔力を籠めていた。

「それこそ無駄だ! リリアン以外の魔力も籠めるのだろう! それでも限度があるぞ!!」

「――貴様の常識で人を、俺達を測るな」

 カレンとロイは私に魔力を流し、それを私は最大限に自らの魔法に籠めることができている。
 ゲームでの最終決戦は――カレンがレックス殿下を信じていたからこそ、邪神に勝利した。
 今の私は同じ気持ちで、いいえ――それ以上だと確信することができている。
 邪神を撃退するとその想いが強くなっていくのは、ゲームでの問題を全て解決した後が楽しみだから。
 そして――同じ気持ちで協力してくれる人達が、この場にはいてくれる。

 同じ転生者で、いつも力になってくれるカレン。
 病が治り、夢を追うようになったロイ。
 そして――ゲームではありえない行動を魅せて、常に私の力になってくれるレックス殿下。

 レックス殿下は私がいるから、負けることはないと確信してくれている。
 レックス殿下はいつも、私のことを信じてくれている。
 その想いに応えるための魔法を、私は編み出すことができていた。

「なんだ、この魔力……魔法剣技に特化した魔法だと!?」

「さっきの魔力による攻撃を参考に――貴方に対抗する為だけの、聖魔力による魔法を編み出しました」

 今まで魔法に夢中になってきたからこそ、私は魔法の極地――敵の魔法を理解し、対処する領域に到達することができていた。
 この魔法は――対魔法士との戦闘で最強といっても過言ではない魔法だ。

「魔法剣技に特化した魔法――これは、邪神を穿つ為だけの魔法です」
 
 相手の魔力を理解して、それを上回る力を魔法剣技に与える魔法。
 そんな無茶苦茶な魔法だけど――私は、そんな魔法を編み出すことに成功した。

「そんな魔法は知らない……どういうことだ!?」

「これは私が編み出した魔法です。夢中になり、魔法のことばかり考えた私が編み出した――魔法の極致」

 更にレックス殿下が扱う剣技の極致――魔力を駆使する魔法剣技を上乗せする。
 それによる破壊力は甚大で、邪神の魔力だとしても、再生できずロウデスは滅ぶ。

「――不可能だ!!」

「私とレックス殿下なら、不可能なことはありません」

「ならば不可能だと証明してやろう! 私の、邪神教の全てで穿つまでだ!」

 どうやらロウデスは口撃で私の精神を揺らがせようとしたけど、無理だと悟ったようだ。
 レックス殿下の剣に膨大な魔力が集まった時点で、ロウデスは右手に魔力を集中させている。
 お互い全力の攻撃で――ロウデスとしては、威力を弱めて耐えれば勝ちだと確信していそう。

「魔力で再生できないほどの致命傷を、レックス殿下の一撃で与えます!」

 揺るがない意志と、互いを信じる想いで――邪神を打ち払う。
 ゲームと違い完全な姿になっていたとしても、倒し方は同じだ。

 私は魔法に夢中となって、レックス殿下はそんな私を溺愛してくれた。
 それによる力が――ゲームを凌駕する邪神ロウデスを、討ち倒す力となる。

「リリアンを苦しめた貴様は――俺達が倒す!!」

 レックス殿下が叫び、剣を振るう。
 それによって発生した魔法剣技による閃光を、邪神が漆黒の魔力の閃光で防ごうとする。
 魔法で防ごうとしても、ロウデスの魔力を私は理解していた。
 ロウデスが全力の魔力で防ごうとしても、私達とレックス殿下の方が上だ。

 闇魔法の閃光は一瞬で掻き消えて、ロウデスに魔法剣技の閃光が直撃する。
 邪神は完全に消滅して――私達とロウデス教との戦いが、終わりを迎えた。
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