上 下
101 / 109
2章

82話

しおりを挟む
 体内に侵入した邪神の魂が私に干渉してくるけど、私の魔力なら抵抗できる。
 どうやらロウデスの目的は私自身ではなく、私の闇魔法に対する適性のようだ。

『これは――私のこの力だけが、目当てだったの!?』

 思わず声に出してしまうけど、喋ることができていないと自覚する。
 夢の世界にいるような、奇妙な感覚だった。
 頭の中で思わず叫ぶけど、私の体内に宿った邪神は返答してこない。
 それでも――私も邪神に干渉したことで、この行動の意味を知った。

 邪神は私が持つ闇魔法の適性を利用することで復活の準備をしたようで、邪心は意志で追い出すと消えていく。
 その後は邪神教が用意した依代の女性の元へ向かい、その女性を生贄にして復活する。
 グリムラ魔法学園の魔力領域を経由して――魂だけとなっている邪神ロウデスだけど、復活できるこの時だけは肉体なしで魔力領域内を移動できるようだ。
 復活した後に魔法で倒せば邪神の魂を消せるようだけど、それがわかるのは邪神に干渉したからだと推測できる。
 そこまで考えた私は意識が戻ろうとしているけど――その一瞬の間に、さっきの出来事を思い返す。

 私はシーマの自爆に意識が向いてしまい、不意打ちに気付けなかった。
 一瞬で迫ったラギルが触れ、私に魔力……邪神の魂を流し込む。
 どうやら私を洗脳するとかではなく、私の力の一部が欲しくて干渉したようだ。
 邪神を経由してラギル経由で邪神の魂と魔力が同調したことで――ロウデス教の計画を全て理解していた。

   ◇◆◇

 ――目が覚めると、皆の姿があった。
 レックス殿下が私を抱きしめ、カレンとロイが杖を呻いているラギルに向けている。
 私は現状を理解できていない皆に話したいけど……時間がない。
 とにかく私は、ラギルに尋ねる。

「ラギル。貴方は知らない間に、邪神を体内に宿していたのですね」

 ロイは邪神を体内に封印していたと言ったけど、実際は少し違う。
 封印を解くことはできたけど魂だけで、ロウデス教はそれをラギルの体内に入れることに成功した。
 復活していない状態だけど意思に干渉することはできて、復活する絶好のタイミングの今日は、完全に操ることを可能としていたようだ。

「そのようです。私もいつ体内に宿したのか、まったく記憶にありません……」

 邪神に魔力を全て吸収されたラギルは戦力にならないけど、話は聞いておきたい。
 意識を朦朧としながら、ラギルが頷いて応えてくれる。

「……偶然にしては、魔法学園に入れて運がよすぎるとは思っていました」

 ラギルの体内に入った邪神は、時々ラギルの意識を乗っ取っていたようだ。
 私達に悟られないよう誘導する程度だったみたいで、ほどんとラギルの意思による行動と知ることはできている。
 冒険者の頃に……偶然魔法学園のエドガーを助けて仲良くなり、グリムラ魔法学園に推薦された。
 恐らくロウデス教が根回しをしていて、体内に宿した邪神ロウデスが学園に潜入するためだ。

 ルートの時に協力しなかったのは、全てこの時の為の準備だった。
 ラギルの記憶と邪神の目的を理解するけど……ラギルは、私の記憶に干渉しようとはしない。

「申し訳ありません……ぼくが、世界を滅ぼすかもしれない……」

 命を絶ちたいと本心から考えているけど、ラギルはただ利用されていただけ。
 邪神について何も知らないからこそ、ロウデス教と関わっていないか調べても無意味だった。 

「悪いのは邪神です。私が、必ず止めてみせます!」

「リリアン様。ありがとうございます」

 ラギルのエドガーに対する忠誠心は本物で、ただの魔法学園に憧れていた冒険者の平民だった。
 魔力と魔法が優れていたから、私と関わらせるために利用されただけで……ラギルは何も悪くない。

「何が起きたのか話す前に――今から飛行魔法を使い、邪神の元へ向かいます」

 そう言って、私はレックス殿下、ロイ、カレンを飛行魔法で宙に浮かし、魔法披露会の会場へ向かう。

「ルート様、この場はお願いします」

 グリムラ魔法学園の先生が来るまで、無力になっているダドリックとラギルが危険だ。
 誰か守る人が必要で、ルートが一番だと考えていた。

「ルートよ。頼んだぞ」

「かしこまりました。この場はお任せください」

 そして――私達四人は、飛行魔法で邪神が復活した魔法を披露する会場のコロシアムへ向かう。
 復活した邪神ロウデスは、今この時に倒さなければならない。

 私と同調したことで――ロウデスは、私やカレンの正体を知ってしまった。
 もし逃がせば私やカレンの知識を使い、とんでもないことを仕出かしてもおかしくはない。
 逃がしても終わりだと理解しているから、今日ここで決着をつける必要があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

乙女ゲーム攻略対象者の母になりました。

緋田鞠
恋愛
【完結】「お前を抱く気はない」。夫となった王子ルーカスに、そう初夜に宣言されたリリエンヌ。だが、子供は必要だと言われ、医療の力で妊娠する。出産の痛みの中、自分に前世がある事を思い出したリリエンヌは、生まれた息子クローディアスの顔を見て、彼が乙女ゲームの攻略対象者である事に気づく。クローディアスは、ヤンデレの気配が漂う攻略対象者。可愛い息子がヤンデレ化するなんて、耐えられない!リリエンヌは、クローディアスのヤンデレ化フラグを折る為に、奮闘を開始する。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。