90 / 109
2章
71話
しおりを挟む
その後もアクシデントが発生して、私達は対処していた。
今回は近くにいたのが私、レックス殿下、ロイで……魔法道具の暴走を止めていく。
そして魔法道具の傍にダドリックの姿があって、レックス殿下が尋ねる。
「もうすぐ魔法披露会がはじまる……ダドリックよ、躍起になっているのではないか?」
ほぼ毎日アクシデントが発生して、二、三日に一度はダドリックの姿が見える。
レックス殿下は明らかにイライラしているけど、ダドリックは平然と返答した。
「オレは何もしていませんよ。偶然、近くにいただけさ」
「それにしては遭遇する回数が多すぎる……発言は記録されるようだが、それ以外は記録されないからな」
どうやらレックス殿下は、口が使えなくても合図を送れると考えているようだ。
流石に今のダドリックが何かできるとは思えないけど、ここまで遭遇していると怪しまない方がおかしい。
それでもダドリックは、レックス殿下を嘲笑いながら話す。
「ハッ、それならシーマ様に聞いてみたらどうだ? あの方はオレの位置を把握できるからな」
「貴様に言われると誘導されているみたいで癪だが、そうするしかあるまい」
確かに、ダドリックが先に言っているということは、手を打っているに違いない。
それでもレックス殿下は確認のため、ダドリックに場所を聞いてシーマの元に向かっていた。
◇◆◇
シーマはダドリックの近くで作業をしていて、すぐに発見する。
私とレックス殿下とロイの姿を見て、魔法道具に使っていた手を止め、一礼して尋ねる。
「レックス殿下、リリアン様、ロイ様……私が動く前にアクシデントを対処したと聞いています。ありがとうございました」
「礼はいい……それより、ダドリックのことだ」
「ダドリックが、何かしましたか?」
「アクシデントの発生している場所にいる頻度が多すぎる。言動や位置を把握できているのなら、シーマは奴を怪しまないのか?」
疑心の目を向けるレックス殿下に対して、シーマが少し思案してから話す。
「そうですね……まず、ダドリックは場所を知っているので、一年生の校舎を担当することが多くなるのはわかりますか」
「……そうだな。グリムラ魔法学園は広い、構造を知っている者を置くのは適材適所だ」
「そしてアクシデントは一年、二年生が主な校舎で頻繁に起きています」
レックス殿下とロイの発言に対して、シーマが断言する。
「疑われても仕方ありませんが……枷で私の許可無しに魔法が使えないのですから、ダドリックが悪事を働くのは不可能です」
犯人の邪神教は何人か捉えているけど、記憶を失って証拠が出ていない。
そして魔法や魔道具を扱う時の許可を出しているシーマが、違うと断言している。
「……奴は、本当に何も問題を起こしていないのか?」
「発言にも幾つか問題があり、暴走した魔道具の近くにいるのは確認できています。それでも、私の許可なく魔法や魔力を使った形跡はありません」
「枷の魔道具を信用しているみたいだが、無効化する方法があるのではないか?」
レックス殿下が問い詰めるのは、ダドリックが怪しすぎるからだ。
それでも、シーマは首を左右に振って応える。
「今まで枷が壊されたことは一度もありませんし、確認もしています……ダドリックが万一にもロウデス教側としても、警戒されいている者を使うとは思えません」
「……確かにそうだな。だが、偶然とも思えない」
レックス殿下が呟き、ロイが推測を口にする。
「ダドリック君は応援で魔道具について調査しているし、暴走する可能性のある魔道具を推測して、アクシデントが起きないよう動いているとか……かな」
「なるほど。トラブルに乗じて、魔法を使いたいのかもしれませんね」
魔法を使えないなんて苦痛でしかないから、ロイの発言が正しい気がする。
シーマは更に警戒を強めてくれるようだけど、ダドリックの目的が解らない。
その後もアクシデントが発生するけど解決して――魔法披露会、そして前夜祭の時が迫っていた。
今回は近くにいたのが私、レックス殿下、ロイで……魔法道具の暴走を止めていく。
そして魔法道具の傍にダドリックの姿があって、レックス殿下が尋ねる。
「もうすぐ魔法披露会がはじまる……ダドリックよ、躍起になっているのではないか?」
ほぼ毎日アクシデントが発生して、二、三日に一度はダドリックの姿が見える。
レックス殿下は明らかにイライラしているけど、ダドリックは平然と返答した。
「オレは何もしていませんよ。偶然、近くにいただけさ」
「それにしては遭遇する回数が多すぎる……発言は記録されるようだが、それ以外は記録されないからな」
どうやらレックス殿下は、口が使えなくても合図を送れると考えているようだ。
流石に今のダドリックが何かできるとは思えないけど、ここまで遭遇していると怪しまない方がおかしい。
それでもダドリックは、レックス殿下を嘲笑いながら話す。
「ハッ、それならシーマ様に聞いてみたらどうだ? あの方はオレの位置を把握できるからな」
「貴様に言われると誘導されているみたいで癪だが、そうするしかあるまい」
確かに、ダドリックが先に言っているということは、手を打っているに違いない。
それでもレックス殿下は確認のため、ダドリックに場所を聞いてシーマの元に向かっていた。
◇◆◇
シーマはダドリックの近くで作業をしていて、すぐに発見する。
私とレックス殿下とロイの姿を見て、魔法道具に使っていた手を止め、一礼して尋ねる。
「レックス殿下、リリアン様、ロイ様……私が動く前にアクシデントを対処したと聞いています。ありがとうございました」
「礼はいい……それより、ダドリックのことだ」
「ダドリックが、何かしましたか?」
「アクシデントの発生している場所にいる頻度が多すぎる。言動や位置を把握できているのなら、シーマは奴を怪しまないのか?」
疑心の目を向けるレックス殿下に対して、シーマが少し思案してから話す。
「そうですね……まず、ダドリックは場所を知っているので、一年生の校舎を担当することが多くなるのはわかりますか」
「……そうだな。グリムラ魔法学園は広い、構造を知っている者を置くのは適材適所だ」
「そしてアクシデントは一年、二年生が主な校舎で頻繁に起きています」
レックス殿下とロイの発言に対して、シーマが断言する。
「疑われても仕方ありませんが……枷で私の許可無しに魔法が使えないのですから、ダドリックが悪事を働くのは不可能です」
犯人の邪神教は何人か捉えているけど、記憶を失って証拠が出ていない。
そして魔法や魔道具を扱う時の許可を出しているシーマが、違うと断言している。
「……奴は、本当に何も問題を起こしていないのか?」
「発言にも幾つか問題があり、暴走した魔道具の近くにいるのは確認できています。それでも、私の許可なく魔法や魔力を使った形跡はありません」
「枷の魔道具を信用しているみたいだが、無効化する方法があるのではないか?」
レックス殿下が問い詰めるのは、ダドリックが怪しすぎるからだ。
それでも、シーマは首を左右に振って応える。
「今まで枷が壊されたことは一度もありませんし、確認もしています……ダドリックが万一にもロウデス教側としても、警戒されいている者を使うとは思えません」
「……確かにそうだな。だが、偶然とも思えない」
レックス殿下が呟き、ロイが推測を口にする。
「ダドリック君は応援で魔道具について調査しているし、暴走する可能性のある魔道具を推測して、アクシデントが起きないよう動いているとか……かな」
「なるほど。トラブルに乗じて、魔法を使いたいのかもしれませんね」
魔法を使えないなんて苦痛でしかないから、ロイの発言が正しい気がする。
シーマは更に警戒を強めてくれるようだけど、ダドリックの目的が解らない。
その後もアクシデントが発生するけど解決して――魔法披露会、そして前夜祭の時が迫っていた。
0
お気に入りに追加
7,356
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。