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2章

65話

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 翌日の午後の授業は披露会の準備で、一年生は周囲の見学をするようだ。
 来年以降の準備の参考の為のようで、学園内を巡っていく。
 広場や通路には……屋台や建造物の準備をしている人達の姿が見える。
 学外の人達が活動しているようで、かなり大規模になりそうだ。

「凄いですね……来年が楽しみです」

「俺も、リリアンの力になるためにも見て学ばなければなるまい」

 邪魔にならない範囲で自由行動だから、私とレックス殿下は二人で見学している。
 集団だと邪魔になりそうで、見て回る範囲が広いからだ。

「来年以降は、私達も魔法道具を使って様々な催し物を作れます」

 これは転生前では考えられない出来事で、どんな出し物をするべきか考えるだけでも楽しい。
 ゲームを終えた後のことが楽しめるようになったのは、婚約破棄イベントが起きなかったからだ。
 私は気分が高揚しているけど……傍にいてくれるレックス殿下は、あまり嬉しそうにみえない。
 その理由を察しながら通路を歩いていると、私達の前にダドリックが現れる。

「ダドリックよ。俺とリリアンに何か用か?」

「自意識過剰だな、オレは指示のある場所を担当しているだけだ」

「ぐぅっ……それなら、貴様の担当している場所を教えろ」

「その日に応じて変わるから無理だ。残念だったな」

 やっぱり二人の仲は最悪で、いつ戦いが始まってもおかしくない。
 不安になってしまうと……私達の元に、一人の美青年がやって来る。
 灰色の長い髪をしている、眼鏡をかけた長身の美青年だ。
 その人は眼鏡をあげながら、微笑みを浮かべて話してくれる。

「レックス殿下……この私が枷の魔道具で言動をチェックしていますから、何も心配する必要はありません」

「発言を聞くに、ダドリックの観察官か?」

 レックス殿下が尋ねると、長身の美青年は優美な一礼をみせる。

「その通りでございます。私はシーマ……賢者の地位を持つ、グリムラ魔法学園の元生徒です」

「シーマ……様、なんの用ですか?」

 ダドリックがバツの悪そうな顔で呟くと、シーマが眼鏡を指で上げる。
 その瞬間にダドリックが強張ったけど、どうしたのだろう?

「ダドリック。君の立場は最底辺です。様付けが遅い、学園の生徒と問題を起こさないようにしなさい」

「……はい」

「返事も遅いです」

「ぐっっ……かしこまりました」

 シーマが現れるとダドリックがしおらしいけど、レックス殿下の会話からそこまで更生することはなさそうだ。
 それでもシーマは満足しているのか、私とレックス殿下を眺めて微笑みつつ話す。

「ダドリックが問題を起こすことはありません。枷の力を使えば最悪廃人になりますし、魔法の使用はこの私が制限しています」

「廃人……そこまでなのか」

 処罰の物騒さにレックス殿下が唖然として、私も恐怖していた。
 廃人って……あの手枷の魔道具に、そこまでの力があるなんて考えていない。

「あの腕輪は、そんなに危険なのですか?」

「体の一部と化していますからね……腕輪の力で体内を巡る魔力を逆流させると、最悪ショック死もあり得ます」

「そ、そうですか……」

「余程のことをしない限り、この私はそんなことをしません……邪神を崇める組織に入っていましたし、これぐらいは当然です」

「ダドリックは優秀な魔法士だから、枷をつけてでも失いたくなかったということか」

「その通りです。彼は英雄になりえた器ですからね……まあ、同学年には同等の力を持つ人が何人もいますか」

 そう言って私を眺めているけど、私やラギル、カレンがいなければダドリックは余裕で学年どころか学園主席だ。
 枷の力で位置、言動、魔法の使用も完全に把握できているみたいだから、ダドリックは何もできないはず。
 そう考えていたのに一週間後――問題が発生することとなっていた。
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