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2章
64話
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放課後になって――私達は集まって話をしている。
街灯がないこともあって、披露会の準備として活動できるのは僅かな時間のようだ。
その分午後の授業は全て披露会の準備になるから、放課後も準備をする人は少ない。
今日からはじまった披露会の準備だけど、私達は出し物について話し合っているだけだった。
一年生の出し物は各生徒自由に何かを展示と決まっているようで、披露会を楽しみ来年以降の参考にするらしい。
私としても当日は出し物を楽しみたかったし、展示は審査されるから最優秀の賞を狙いたくなってしまう。
集まってどんな作品を作るか話し合いたかったけど、皆ダドリックの方が気になるようだ。
「まさか、ダドリックが戻って来るとはな……」
「保護観察だよ。あの枷を解くのは不可能だと思うし、大丈夫だと思うけどね」
「ロイよ、お前は常識的だが楽観的だ。敵は邪神教なんだぞ」
「うっ……確かにそうだと思うけど、学園側も厳重に調べているだろうし警戒してるよ」
「それはそうだが……」
ロイの方が正しい気がするけど、レックス殿下は警戒心を強めている。
実際私を狙って行動をしたのだから、危険だと警戒するのは当然だ。
それでもロイの言う通り、グリムラ魔法学園は調べているだろうし監視の枷もあるから、何かできるとは思えない。
「……ダドリック様は、どんな方なのですか?」
「なんだ。エドガーから聞かなかったのか?」
そうラギルが尋ねてきて、レックス殿下が疑問を口にする。
ダドリックが現れて以降、ラギルは私達の傍で話をするようになっていた。
エドガーの危機だから、動くべきだと判断したのかもしれない。
「あまり話したくなさそうでしたので、詳しく聞くのを止めました」
エドガーは二組でトップの成績だけど、ダドリックの方が遥かに優秀のようだ。
嫌っていそうな辺り、きっと二組内で何かしら問題を起こしたのだと想像できる。
レックス殿下が話そうとしたけど、ロイが先に話す。
きっと怒りのまま話して説明にならない気がして、ロイは自分が話すべきと判断したに違いない。
「ダドリック君は性格に難があって、一学期だけでも二組の生徒は迷惑をかけられていたみたいだね」
「もし何か問題を起こせば報告し、学園から追い出します」
エドガーに迷惑をかけたダドリックは、ラギルにとって憎しみの対象となるようだ。
今までにない怒気の籠った表情で、レックス殿下と同じように敵意を剥き出しにしている。
「同意見だ。リリアンに危害を及ぼそうとしたから、警戒して当然だろう」
「ダドリック君には観察官がいるみたいだし、大丈夫だと思うけどね」
「そうですね……冒険者の人達は優秀な方が多く大体知っていますけど、一人だけ知らない人がいました。あの人が観察官なのでしょう」
ラギルがロイの発言に納得するけど、レックス殿下が興味を持つ。
「それは、どんな人だ?」
ラギルの知らない学園の応援……冒険者でないのなら、ダドリックの観察官かもしれない。
そう考えたレックス殿下が尋ねると、ラギルが容姿を話す。
「灰色の長い髪をして、眼鏡をかけた長身の男性です」
確かにそんな人が、ダドリックを眺めていたような気がする。
「保護観察だから傍で審査する観察官がいると聞いていたけど、披露会の手伝いをしながらなんだね」
少し距離があったから魔力を感じ取れなかったけど、ロイの言う通り監視者の可能性が高そうだ。
魔法披露会さえ終われば、遂にゲーム内容を終えることができると考えていた。
ルートの件以降ゲーム通りの出来事はないと安堵していたけど、ダドリックが現れている。
もう残すのは魔法披露会の準備、前夜祭、三日間行われる魔法披露会だけ。
ロウデス教は、来たるべき日に備えて準備をしているのかもしれない。
何が起きたとしても対処してみせると――私は決意を強めていた。
街灯がないこともあって、披露会の準備として活動できるのは僅かな時間のようだ。
その分午後の授業は全て披露会の準備になるから、放課後も準備をする人は少ない。
今日からはじまった披露会の準備だけど、私達は出し物について話し合っているだけだった。
一年生の出し物は各生徒自由に何かを展示と決まっているようで、披露会を楽しみ来年以降の参考にするらしい。
私としても当日は出し物を楽しみたかったし、展示は審査されるから最優秀の賞を狙いたくなってしまう。
集まってどんな作品を作るか話し合いたかったけど、皆ダドリックの方が気になるようだ。
「まさか、ダドリックが戻って来るとはな……」
「保護観察だよ。あの枷を解くのは不可能だと思うし、大丈夫だと思うけどね」
「ロイよ、お前は常識的だが楽観的だ。敵は邪神教なんだぞ」
「うっ……確かにそうだと思うけど、学園側も厳重に調べているだろうし警戒してるよ」
「それはそうだが……」
ロイの方が正しい気がするけど、レックス殿下は警戒心を強めている。
実際私を狙って行動をしたのだから、危険だと警戒するのは当然だ。
それでもロイの言う通り、グリムラ魔法学園は調べているだろうし監視の枷もあるから、何かできるとは思えない。
「……ダドリック様は、どんな方なのですか?」
「なんだ。エドガーから聞かなかったのか?」
そうラギルが尋ねてきて、レックス殿下が疑問を口にする。
ダドリックが現れて以降、ラギルは私達の傍で話をするようになっていた。
エドガーの危機だから、動くべきだと判断したのかもしれない。
「あまり話したくなさそうでしたので、詳しく聞くのを止めました」
エドガーは二組でトップの成績だけど、ダドリックの方が遥かに優秀のようだ。
嫌っていそうな辺り、きっと二組内で何かしら問題を起こしたのだと想像できる。
レックス殿下が話そうとしたけど、ロイが先に話す。
きっと怒りのまま話して説明にならない気がして、ロイは自分が話すべきと判断したに違いない。
「ダドリック君は性格に難があって、一学期だけでも二組の生徒は迷惑をかけられていたみたいだね」
「もし何か問題を起こせば報告し、学園から追い出します」
エドガーに迷惑をかけたダドリックは、ラギルにとって憎しみの対象となるようだ。
今までにない怒気の籠った表情で、レックス殿下と同じように敵意を剥き出しにしている。
「同意見だ。リリアンに危害を及ぼそうとしたから、警戒して当然だろう」
「ダドリック君には観察官がいるみたいだし、大丈夫だと思うけどね」
「そうですね……冒険者の人達は優秀な方が多く大体知っていますけど、一人だけ知らない人がいました。あの人が観察官なのでしょう」
ラギルがロイの発言に納得するけど、レックス殿下が興味を持つ。
「それは、どんな人だ?」
ラギルの知らない学園の応援……冒険者でないのなら、ダドリックの観察官かもしれない。
そう考えたレックス殿下が尋ねると、ラギルが容姿を話す。
「灰色の長い髪をして、眼鏡をかけた長身の男性です」
確かにそんな人が、ダドリックを眺めていたような気がする。
「保護観察だから傍で審査する観察官がいると聞いていたけど、披露会の手伝いをしながらなんだね」
少し距離があったから魔力を感じ取れなかったけど、ロイの言う通り監視者の可能性が高そうだ。
魔法披露会さえ終われば、遂にゲーム内容を終えることができると考えていた。
ルートの件以降ゲーム通りの出来事はないと安堵していたけど、ダドリックが現れている。
もう残すのは魔法披露会の準備、前夜祭、三日間行われる魔法披露会だけ。
ロウデス教は、来たるべき日に備えて準備をしているのかもしれない。
何が起きたとしても対処してみせると――私は決意を強めていた。
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