悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

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2章

62話

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 翌日――今日の午後から、魔法披露会の準備が始まるようだ。
 魔法の実技の授業になって、ラギルを上回る魔法を扱うことには成功した。
 見学していた皆は感激していたし、魔法披露会でも問題ないはず。

「リリアンの魔法は見事だった。これなら来月の披露会も問題ないだろう」

「……そうでしょうか?」

 成績優秀者から始まるから、私の傍には終わったレックス殿下、ロイ、ルート、カレン、ラギルの姿がある。
 レックス殿下の発言に賛同できなかったのは、不安要素が多いからだ。

 私が代表――ゲームと違うことよりも、どんな魔法を披露するべきか悩んでしまう。
 大衆の前で魔法を披露して、場を盛り上げる。
 来客も多いみたいだから、カルドレス公爵家の名誉の為にも失敗は許されない。

「今までと違い失敗は許されないので、少し不安になってしまいます」

「リリアンは緊張しているようだが、悩むのなら今日のようにやるだけでいい」

「レックス君の言う通りだね……むしろ魔法に関して、リリアンさんが失敗する未来が見えないかな」

「それもそうですね」

 私はレックス殿下とロイの発言に頷くけど、まず魔法披露会に参加できるかだ。
 ゲームだと前夜祭で悪事が全て発覚して、悪役令嬢リリアンは国外追放を言い渡される。
 更に私が魔法を披露する最終日はロウデス教との決戦になるから……延期になるはずだ。

 私は今までの集大成の魔法を披露するつもりで、魔法の素晴らしさを感じて欲しい。
 ロウデス教がゲーム通り動くのなら延期になるけど、それなら万全の状態で魔法を披露できる。
 とにかく今は、今日以降起こるトラブルを対処することが先だ。
 
   ◇◆◇

 昼休みを終えて――午後の授業は魔法披露会の準備になり、私は先生から行動内容を聞く。
 今日は準備に使う便利な魔法具の説明を聞き、応援の冒険者の人達との顔合わせが主らしい。 
 凄腕の冒険者から話を聞けると聞いて、私は楽しみにしていた。
 学園にある広場に集まる移動中に、私は皆と話をする。

「これから、大規模に学園内を改装するみたいですね」

「それは主に先生や応援の人がするから、僕達はまず出し物を決めるために話し合うよ」

 グリムラ魔法学園に通う生徒はほとんどが貴族だからか、放課後残る生徒は少ない。
 街灯もないから、夜になるまでには帰る必要があり、午後の授業が準備になって少しずつ進めていく。
 出し物は学園祭のように飲食店や展示とか様々だけど……魔法具があるのは大きな違いだ。

「俺達は一年生だから、魔法による加工品の展示になるようだ」

「そうみたいだね。二年生達の出し物を確認して、来年の参考にして欲しいようだ」

「リリアンは魔法披露に集中して欲しいから、丁度よかった」

 レックス殿下はゲームでも似たような発言をしていたと、私は思い出す。
 ゲーム通りの言動を見ると不安になってしまうけど、大丈夫のはずだ。
 
「魔道具の使用も多くなるので、アクシデントが発生しやすいとも聞いています」

「ルート様は調べてくれたのですね。魔道具は特に気をつけます」

 カレンがルートの発言に賛同しているのは、ゲームのイベントを知っているからね。
 魔道具が爆発したり暴走したりと、かなり大変なことになっていた気がする。
 それでもグリムラ魔法学園の伝統だからか、何があっても中止になることはなかった。

「そうですね……冒険者の人達と会えるのが、楽しみです」

 歩きながら頷くと広場に到着して、私は呟く。
 確かに強そうな人達の姿が見えるけど……それより、気になる人がいる。
 外部からの協力者の一人に――見覚えのある人がいた。

「――えっ!?」

 どうしてこの場にいるのか理解できず、私は思わず叫ぶ。
 活発そうな短い青髪、鋭いつり目をした美少年で、鉄の魔法具による手枷がつけられている。
 レックス殿下も気付いた様子で、その少年を眺めて驚愕しながら叫ぶ。

「な、なぜ貴様がここにいる……ダドリック!」
 
 この場にいるということは、魔法披露会の応援で間違いない。
 一学期の時にロウデス教の協力者となったダドリックが、私達の前に立っていた。
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