81 / 109
2章
62話
しおりを挟む
翌日――今日の午後から、魔法披露会の準備が始まるようだ。
魔法の実技の授業になって、ラギルを上回る魔法を扱うことには成功した。
見学していた皆は感激していたし、魔法披露会でも問題ないはず。
「リリアンの魔法は見事だった。これなら来月の披露会も問題ないだろう」
「……そうでしょうか?」
成績優秀者から始まるから、私の傍には終わったレックス殿下、ロイ、ルート、カレン、ラギルの姿がある。
レックス殿下の発言に賛同できなかったのは、不安要素が多いからだ。
私が代表――ゲームと違うことよりも、どんな魔法を披露するべきか悩んでしまう。
大衆の前で魔法を披露して、場を盛り上げる。
来客も多いみたいだから、カルドレス公爵家の名誉の為にも失敗は許されない。
「今までと違い失敗は許されないので、少し不安になってしまいます」
「リリアンは緊張しているようだが、悩むのなら今日のようにやるだけでいい」
「レックス君の言う通りだね……むしろ魔法に関して、リリアンさんが失敗する未来が見えないかな」
「それもそうですね」
私はレックス殿下とロイの発言に頷くけど、まず魔法披露会に参加できるかだ。
ゲームだと前夜祭で悪事が全て発覚して、悪役令嬢リリアンは国外追放を言い渡される。
更に私が魔法を披露する最終日はロウデス教との決戦になるから……延期になるはずだ。
私は今までの集大成の魔法を披露するつもりで、魔法の素晴らしさを感じて欲しい。
ロウデス教がゲーム通り動くのなら延期になるけど、それなら万全の状態で魔法を披露できる。
とにかく今は、今日以降起こるトラブルを対処することが先だ。
◇◆◇
昼休みを終えて――午後の授業は魔法披露会の準備になり、私は先生から行動内容を聞く。
今日は準備に使う便利な魔法具の説明を聞き、応援の冒険者の人達との顔合わせが主らしい。
凄腕の冒険者から話を聞けると聞いて、私は楽しみにしていた。
学園にある広場に集まる移動中に、私は皆と話をする。
「これから、大規模に学園内を改装するみたいですね」
「それは主に先生や応援の人がするから、僕達はまず出し物を決めるために話し合うよ」
グリムラ魔法学園に通う生徒はほとんどが貴族だからか、放課後残る生徒は少ない。
街灯もないから、夜になるまでには帰る必要があり、午後の授業が準備になって少しずつ進めていく。
出し物は学園祭のように飲食店や展示とか様々だけど……魔法具があるのは大きな違いだ。
「俺達は一年生だから、魔法による加工品の展示になるようだ」
「そうみたいだね。二年生達の出し物を確認して、来年の参考にして欲しいようだ」
「リリアンは魔法披露に集中して欲しいから、丁度よかった」
レックス殿下はゲームでも似たような発言をしていたと、私は思い出す。
ゲーム通りの言動を見ると不安になってしまうけど、大丈夫のはずだ。
「魔道具の使用も多くなるので、アクシデントが発生しやすいとも聞いています」
「ルート様は調べてくれたのですね。魔道具は特に気をつけます」
カレンがルートの発言に賛同しているのは、ゲームのイベントを知っているからね。
魔道具が爆発したり暴走したりと、かなり大変なことになっていた気がする。
それでもグリムラ魔法学園の伝統だからか、何があっても中止になることはなかった。
「そうですね……冒険者の人達と会えるのが、楽しみです」
歩きながら頷くと広場に到着して、私は呟く。
確かに強そうな人達の姿が見えるけど……それより、気になる人がいる。
外部からの協力者の一人に――見覚えのある人がいた。
「――えっ!?」
どうしてこの場にいるのか理解できず、私は思わず叫ぶ。
活発そうな短い青髪、鋭いつり目をした美少年で、鉄の魔法具による手枷がつけられている。
レックス殿下も気付いた様子で、その少年を眺めて驚愕しながら叫ぶ。
「な、なぜ貴様がここにいる……ダドリック!」
この場にいるということは、魔法披露会の応援で間違いない。
一学期の時にロウデス教の協力者となったダドリックが、私達の前に立っていた。
魔法の実技の授業になって、ラギルを上回る魔法を扱うことには成功した。
見学していた皆は感激していたし、魔法披露会でも問題ないはず。
「リリアンの魔法は見事だった。これなら来月の披露会も問題ないだろう」
「……そうでしょうか?」
成績優秀者から始まるから、私の傍には終わったレックス殿下、ロイ、ルート、カレン、ラギルの姿がある。
レックス殿下の発言に賛同できなかったのは、不安要素が多いからだ。
私が代表――ゲームと違うことよりも、どんな魔法を披露するべきか悩んでしまう。
大衆の前で魔法を披露して、場を盛り上げる。
来客も多いみたいだから、カルドレス公爵家の名誉の為にも失敗は許されない。
「今までと違い失敗は許されないので、少し不安になってしまいます」
「リリアンは緊張しているようだが、悩むのなら今日のようにやるだけでいい」
「レックス君の言う通りだね……むしろ魔法に関して、リリアンさんが失敗する未来が見えないかな」
「それもそうですね」
私はレックス殿下とロイの発言に頷くけど、まず魔法披露会に参加できるかだ。
ゲームだと前夜祭で悪事が全て発覚して、悪役令嬢リリアンは国外追放を言い渡される。
更に私が魔法を披露する最終日はロウデス教との決戦になるから……延期になるはずだ。
私は今までの集大成の魔法を披露するつもりで、魔法の素晴らしさを感じて欲しい。
ロウデス教がゲーム通り動くのなら延期になるけど、それなら万全の状態で魔法を披露できる。
とにかく今は、今日以降起こるトラブルを対処することが先だ。
◇◆◇
昼休みを終えて――午後の授業は魔法披露会の準備になり、私は先生から行動内容を聞く。
今日は準備に使う便利な魔法具の説明を聞き、応援の冒険者の人達との顔合わせが主らしい。
凄腕の冒険者から話を聞けると聞いて、私は楽しみにしていた。
学園にある広場に集まる移動中に、私は皆と話をする。
「これから、大規模に学園内を改装するみたいですね」
「それは主に先生や応援の人がするから、僕達はまず出し物を決めるために話し合うよ」
グリムラ魔法学園に通う生徒はほとんどが貴族だからか、放課後残る生徒は少ない。
街灯もないから、夜になるまでには帰る必要があり、午後の授業が準備になって少しずつ進めていく。
出し物は学園祭のように飲食店や展示とか様々だけど……魔法具があるのは大きな違いだ。
「俺達は一年生だから、魔法による加工品の展示になるようだ」
「そうみたいだね。二年生達の出し物を確認して、来年の参考にして欲しいようだ」
「リリアンは魔法披露に集中して欲しいから、丁度よかった」
レックス殿下はゲームでも似たような発言をしていたと、私は思い出す。
ゲーム通りの言動を見ると不安になってしまうけど、大丈夫のはずだ。
「魔道具の使用も多くなるので、アクシデントが発生しやすいとも聞いています」
「ルート様は調べてくれたのですね。魔道具は特に気をつけます」
カレンがルートの発言に賛同しているのは、ゲームのイベントを知っているからね。
魔道具が爆発したり暴走したりと、かなり大変なことになっていた気がする。
それでもグリムラ魔法学園の伝統だからか、何があっても中止になることはなかった。
「そうですね……冒険者の人達と会えるのが、楽しみです」
歩きながら頷くと広場に到着して、私は呟く。
確かに強そうな人達の姿が見えるけど……それより、気になる人がいる。
外部からの協力者の一人に――見覚えのある人がいた。
「――えっ!?」
どうしてこの場にいるのか理解できず、私は思わず叫ぶ。
活発そうな短い青髪、鋭いつり目をした美少年で、鉄の魔法具による手枷がつけられている。
レックス殿下も気付いた様子で、その少年を眺めて驚愕しながら叫ぶ。
「な、なぜ貴様がここにいる……ダドリック!」
この場にいるということは、魔法披露会の応援で間違いない。
一学期の時にロウデス教の協力者となったダドリックが、私達の前に立っていた。
0
お気に入りに追加
7,356
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。