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2章

56話

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 学園にあるコロシアムの裏で、私、レックス殿下、ロイ、カレンがルートの前に立つ。
 今のルートは正気ではなく、ロウデス教に操られていた。

 カレンがルートを警戒していた理由については、後で聞けばいい。
 とにかく今は、ルートを正気に戻すことが先決だ。

「レックス殿下……リリアン様を少しお借りしたい」

「俺の許可は不要だが、リリアンは貴様を拒んでいた。諦めろ」

 ルートがレックス殿下に剣を振るい、それを対処していく。
 魔道具の力かルートの動きは格段に向上しているけど、レックス殿下の方が強かった。
 それでも……レックス殿下は相手が友人のルートということもあり、本気で戦えていない。
 ルートは全力で斬りかかってくることもあり、力で勝っていても押されていた。

 とにかく今――私は知っていることを、皆に伝える。

「レックス殿下。ルート様は魔道具で操られていて、聖魔力で元に戻すことができません」

 聖魔力の力でも元に戻らなかったのは、強い命令を出す魔道具を持っているからだ。
 闇の魔力の出所を探ることで、私はルートを操っている魔道具を把握することができている。

「ルート様が握っている剣が、洗脳している魔道具です!」

 あの剣の魔道具さえ破壊すれば、ルートは元に戻る。
 ルートの腕を斬り落として、私が回復魔法で治す。
 一番単純な方法を閃くけど――その場合、ルートは治す前に激痛でショック死するかもしれない。
 魔道具で体内の魔力を闇魔力に変換して負荷が大きいから、命を落す可能性がある。

 そうなると……ルートが力強く握っている魔道具、剣に聖魔力を流して破壊するしかない。
 触れることで直接流さなければ、破壊することは不可能だ。
 どうするべきか考えていると……レックス殿下と剣を交えているルートが、話し出す。

「新入生のラギルをグループに入れさせたのは、私がロウデス教として行動しやすくするためです」

「罪を自白させることで、取り返しのつかないことをしたと自責させているようです」

 ゲームの設定にあるのか、カレンがルートの言動を説明する。
 それによって、洗脳の魔道具は効力を更に強めるようだ。
 魔道具による呪いの力が膨大過ぎて……この状態が続けばルートは命を落とし、意識を失っても魔力と体力を削り続けて息絶える。

「今まで尽くしてきたこの私を、レックス殿下は斬ることができますか?」

「なっ……」

 鍔迫り合い状態でルートが話し、レックス殿下が動揺する。

「私自身は楽に倒せる雑兵に過ぎないでしょう。それでもリリアン様とレックス殿下を精神的に追い詰められるのなら、捨て駒として十分です!」

 どうやら私を捕えることは最善で……次善として、ルートの死により私とレックス殿下を追い詰めたいようだ。
 あそこまで洗脳が強いとなると、魔法具を破壊すればルートは間違いなく命を落す。
 魔法で無力化して取り外すしか方法はないけど、その為には私が剣に触れなければならない。
 友人のルートを犠牲にさせることで、私達を精神的に追い詰めようとしていた。

「……ここまで、するなんて」

 呪いを払う必要があるけど、ルートの意志も必要になる。
 ルートを助ける方法は閃いているけど、その場合はレックス殿下が危険になる。
 それでも……私はレックス殿下を信じて杖を背中に向け、意思を込めた魔力を飛ばした。

『レックス殿下……かなり危険になりますけど、ルート様を元に戻す方法が一つあります』

「よし! その方法で助けるとしよう!!」

 無茶かもしれないけど、レックス殿下は即答してくれた。
 私は再びレックス殿下に魔力を飛ばして、方法を伝えようとする。

『危険なのはレックス殿下ですけど……私はレックス殿下なら、ルート様を元に戻せると信じています』

「ああ。リリアンの期待に応え、ルートを必ず助けてみせよう!」

 レックス殿下なら、そう言ってくれると信じていた。
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